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必要とされるキャリアとスキルを追う!

第15回 インターネットのライフラインを守リ抜け

長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2007/6/26

いま、現場で求められているキャリアやスキルは、どんなものだろうか。本連載では、さまざまなITエンジニアに自身の体験談を聞いていく。その体験談の中から、読者のヒントになるようなキャリアやスキルが見つかることを願っている。

楽天グループの生命線を守れ

 インターネットショッピングモール「楽天市場」をはじめ、さまざまなインターネット上のサービスを提供する楽天。インターネットに親しんでいる人で、楽天の名を聞いたことがないという人はいないのではないだろうか。

 「楽天市場」でショッピングをし、使わなくなったものは「楽天オークション」に出品。ついでに「楽天トラベル」で夏休みの旅行を予約。結婚した友人には「楽天グリーティング」でカードを送る……。これらのサービスはすべて、1つのIDとパスワードで使用することができる。楽天グループのサービスのほとんどが「楽天会員システム」と連動しているからだ。この会員システムの企画・開発・運用を指揮しているのが、楽天 プロデュース本部 共通プラットフォーム部門 会員情報プロデュース部の板垣剛氏だ。

楽天 プロデュース本部 共通プラットフォーム部門 会員情報プロデュース部 板垣剛氏

 「1つのID・パスワードで楽天のサービスをたくさん使えることが、会員の方にとって一番のメリットだと思います」と板垣氏は語る。新規開発のものや、M&Aによってグループに加わるものなど、楽天には次々に新サービスが登場する。「それらを1つ1つつなげていき、1つのID・パスワードでグループ内のいろいろなサービスを使えるようにすること。要はグループの土台、基礎をつくっていくことがわれわれのミッションです」。

 板垣氏によると、会員システムはもともと「楽天市場」の「買い物かご」に付随していたオプション機能から始まった。買い物のたびに住所や電話番号を入力するのは手間なので、その操作を簡単にするための機能があり、それを切り離して大きくしていったものだという。それがいまや楽天グループ全会員約3700万人中、約2600万人のデータを扱う、板垣氏いうところの「楽天グループの生命線」となっている。

 この「生命線」を守り切るため、セキュリティやアベイラビリティに関する最新のトレンドを追いかけ、常に学ぶことを怠らない板垣氏。併せて「事業のマネジメントをしたい、優れたものを生み出せる組織や体制をつくっていきたい」という希望も持っている。非常にバランスの取れたITエンジニアといえそうだ。彼はこれまでにどのようなスキルを身に付け、どのようなキャリアを積んできたのだろうか。

気が付いたらITエンジニアに役割が変化

 板垣氏がコンピュータに触れ始めたのは、Windows 95登場のころ。その後のインターネットブームを経験し、「ネットワークやコンピュータのことを勉強してみたいという気持ちが強くなった」。しかし大学で学んでいたのは経営学だった。「いずれITは、会社の経営などのマネジメント分野に密接にかかわってくるだろうという予想をしていました。文系できちんとマネジメントを学んで、マネジメントとIT、テクノロジを結び付けられるような存在になれるといいなと思って」理系ではなく、あえて文系に進学したという。

 就職時もその気持ちは変わらなかった。時は1998年、インターネットバブルが顕著だったころである。「ITという急速に伸びている産業の中に身を置いて、自分自身が急成長したい、中長期的には事業のマネジメントに携われるといいなという気持ちで」就職先を選定し、PC周辺機器メーカーでのマーケティング業務に就いた。

 しかし、1年もたたないうちに転機は訪れた。「大学時代から親交のあった方から『インターネット上でのビジネスを新たに手がけるが、人が足りないので来てほしい』という要望をもらい、それに賛同して」転職した。

 こうして入社したベンチャー企業で、板垣氏はだんだんとITエンジニアとしての業務をするようになっていった。大学を卒業して就職した当初は経営、ビジネスの観点からITを見ていたのが、徐々にサービスを具体化するためにITを使うようになっていったのだ。「自分の持っているものをどんどんアウトプットしていったら、気が付いたらエンジニアに変わっていたという感じです。周りから自分に求められるものが、いかに会社のやりたいこと、組織のやりたいことを具体化するか、サービスとして世の中に出していくかというところに変わっていったのです」

開発側とビジネス側、両方の言葉を話す

 ただ、初めからITエンジニアを本業にできたわけではない。マンションの一角で始めた従業員わずか数人の会社だったので、「まずは営業活動から始めました。PCを買ってきたり、自社のWebサイトを立ち上げたり、何でも自分たちでやらなきゃいけないという状況でした」。会社の規模がある程度大きくなり、落ち着いてきたころから、ITエンジニアとしての仕事に軸足を移していったという。サービスの企画、開発チームの取りまとめ役でもあり、自分でコーディングする場面もあった。「新しいサービスを立ち上げるためのエンジニア側の代表であり、ものを作る側とビジネス側との橋渡し役」と板垣氏は表現する。

 コーディングのスキルは、「正直あまり持っていなかった」という。そこで本を読む、周囲に質問するなどして、試行錯誤しながら自力で身に付けていった。

 加えて、このころ特に伸びたスキルとして、板垣氏は「エンジニア側とビジネス側の仲立ちをするために、両方の言葉を話すこと」を挙げた。「ビジネス側が求めるものを、いかにエンジニアの言葉に置き換えるか、またはその逆。バイリンガルではないですが、いかにお互いの言葉を変換し、スムーズなコミュニケーションを実現させるか、ここが一番伸びた」そうだ。「開発側とビジネス側がいがみ合ってしまう場合、お互いがお互いの言葉を分かっていないという状況が多いと思っています。そこで誰かが仲立ちをして、両方の言葉をきちんと翻訳することが、うまく開発が進むための鍵だと思いました」という。

 こうしてつくり上げたサービスを世に出していくことに、板垣氏は大きなやりがいを感じていた。「特にWebのサービスなら、ネットにつながっていれば基本的に誰でも使える。世の中のたくさんの人たちに、自分たちで考えてつくり上げたサービスを渡していくことには、手応えもダイレクト感もありました」と当時を振り返る。

 周囲のITエンジニア仲間からも、大いに刺激を受けることが多かった。「コーディングスキルの高いエンジニア、ビジネスの視点に立てるエンジニアが周りにたくさんいました。そういう人と話すことでお互いに切磋琢磨(せっさたくま)して成長していけることが大きかったですね。ビジネス側にも頭のいい人が大勢いて、『なるほど、こういう考え方もあるんだ』と、日々新しい発見を繰り返していました」という。

   

今回のインデックス
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