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第17回 運用経験を生かし、本当に使いやすいシステムを

長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2007/9/25

トラブル対応、英語でのやりとりを経験

 吉田氏はこの顧客先でサーバ運用業務を2年担当した。入社後に覚えたインフラ系のスキル全般を生かして、より大きなシステムを扱うことになり、「自分の持っていたスキルを伸ばすことができたと思っています」とのことだ。

 加えて、いくつかの新しいスキルを身に付けることができた。1つはトラブル対応だ。「本番稼働しているシステムなので、トラブルが起きるとお客さんの業務が止まってしまい、大騒ぎになります」。そういう状況でいかに冷静に対処するかを学べたという。

 システムの中には、ほかのシステムと連携し、トラブルが起きるとそちらにも影響を及ぼすものもあった。「影響範囲をどのように、どこまで特定して各システムの担当者に伝えるかが重要でした。当然1人ではできないので、作業する人、作業の記録を取る人、連絡を取る人と、何人かで役割分担をして対応します。かなり大きなトラブルも経験したので、それはいい経験になりました」

 もう1つが英語だ。吉田氏が「楽しかったし大変だった」と表現するのが、インドのITエンジニアとの英語でのやりとり。「開発チームにウィプロやインフォシスの人たちが参加していたので、やりとりは英語です。大変でしたがいい勉強になりました。インフラ側も夜間はウィプロの人たちがトラブル対応をしていたので、夜中に何か問題があって電話がかかってくると、眠いのに英語。しんどかったですね」と笑う。

 もともと英語は得意だったのだろうか。尋ねてみると「全然です。仕事で英語で会話するのは、そのときが初めてでしたね」との答えが返ってきた。「でも、こちらの文法が正しくなくても、彼らは理解しようとしてくれますし、聞き取ってくれます。同じIT系のインフラの、同じような仕事をしている同士なので、だいたい用語は通じます。それにしても彼らのコミュニケーションスキルの高さに助けてもらったという気はしますね」

運用の経験を生かし、設計・構築をしたい

 2年にわたる顧客先でのサーバ運用業務を終え、吉田氏はいったん自社に戻ることになった。そこで2、3カ月間提案の仕事をした後、新人時代に携わった顧客のシステム運用チームに参加した。当時構築、運用を担当した会計システムも含め、社内システムの運用を担当することになったのだ。

 この業務の途中で、吉田氏は転職を考え始めることになる。理由は、「もっと上流の仕事もしたい」と思い始めたことだった。

 「ずっと運用だったので、設計や構築など自分で作る方の仕事をしたいと思ったのがきっかけです」。運用経験の長い吉田氏は、「人が作ったシステムの面倒を見ていて、どうしてこんなふうに作ってしまったんだろう、もっとうまくできるはずなのにという思いをすることが」多かった。「今度は自分が経験を生かして、システムの設計や構築をしていきたいという思いで転職を考えました」という。

たまたま見つけた募集広告

 社内システム運用チームに入って約半年後、吉田氏は転職活動を開始した。2006年5月のことだ。人材紹介会社に地元・名古屋の案件の紹介を受けた。

 そのとき偶然に目にした募集が、吉田氏の進路を決めることになった。「HPの募集広告があるのを、たまたま見つけたんです。HPの人たちと仕事をしたときのいい印象が残っていて、また一緒に働ければと思い、記念受験ではないですが試しに受けてみようかなと考えたんです。そのとき募集を目にしていなかったら、HPには入っていませんでしたね」と語る。

 唯一の問題は、勤務地が東京であることだった。結婚して名古屋に住み、お子さんも小さかった吉田氏にとって、引っ越しは大きな問題だった。「受かるか受からないか分からないし、決まったら考えればいいかなと軽い気持ちだったのですが」、見事受かってしまった。

 吉田氏はHPに行くか、もう1つ内定を出してくれた名古屋の会社に行くか悩んだという。「楽しそうだ、やりたいと思ったのはHPの方でした。ネックは東京に引っ越さなくてはいけないことだけだったんですよ。最後は家族で相談して、『年齢も30歳前だし、思い切って動くならいましかないんじゃない』と妻に背中を押してもらって」東京勤務を決意したという。

運用しやすいシステムの設計や構築をしたい

 こうして吉田氏はインフラ系エンジニアとして、2006年8月にHPに入社した。現在は転職前の希望どおり、HP-UXを使ったオープン系システムの設計、構築に携わっている。 「いまかかわっているのは、相当規模の大きなシステムです。楽しいですね」という。

 入社から2007年3月までは、顧客先のインフラチームの一員として技術支援を行っていた。「ストレージの設計とか、SAPのBasisの設定を変更するとか、困ったことがあればお助けしますという形で、いろいろなことをしていました」

 4月からは現在の、システム設計・構築のプロジェクトに参加。担当は高可用性ソフトウェアであるServiceguardとOracle RACを組み合わせる部分の設計だそうだ。「クラスタファイルシステムという技術を使ったシステムをやっています。まだあまり使われておらず、社内でも新しい技術の設計です」

 以前から希望していたとおりの仕事にかかわっている吉田氏は、「本当に楽しい、転職してよかった」と繰り返す。忙しさも以前ほどではなくなったという。「運用の方が大変でした。トラブルは昼夜関係なしにやってきますし。また、人がかなり少ない中でやっていたので、1人当たりの負荷が高かったことも原因でした。いまはそういうことも考慮してアサインしてくれるので、残業時間も相当減りました」という。家にも早く帰れるようになったが、逆に飲みに行く回数が増えたそうだ。「よく怒られます」と吉田氏は笑う。

 社内の雰囲気もとてもいいそうだ。「みんな親しく接してくれるし、仕事が遅くなると『ご飯食べて帰ろうか』と飲みに行くこともよくあります。和気あいあいとしてすごく楽しいです」という。

 吉田氏のもともとの希望、「運用経験を生かし、運用しやすいシステムの設計や構築をしたい」というところはどうだろうか。「正直、取り組んでいるとついそのことを忘れ、目の前のことだけに集中してしまうこともあります。なので、時々その気持ちを思い出して、初心に帰るようにしています。自分が経験してきたことで『こうした方がいい』というところは、気が付けば随時アドバイスするようにしています。とはいえ、まだまだ工夫の余地はあります」という。

 そんな吉田氏が思い起こすのは、最初の会社で出会った先輩のことだ。「社会人になって最初に付いたOJTの先輩に、退社してからも会う機会がありました。その人がずっといっているのが、『システムは運用を意識して作っていかなくてはいけない』ということです。自分でもやはりそう思うんですよ、作って終わりではお客さんは喜びません。そのシステムの寿命が終わるまでを広い視野でとらえ、作っていければなと思います」。そういう意味で、今後目標としたいのはその先輩だという。「これからもずっとお手本になるだろうと思っています」

 さらに吉田氏は今後の目標として、「人前で成果を発表できるようなITエンジニアになりたい」ということを挙げた。社内の勉強会、論文発表会、所属部署の年次大会、ワールドワイドの技術コンファレンスなど、HPにはさまざまなスキルアップや技術共有の機会がある。

 「ゆくゆくは自分の成果をそういう場所で発表し、身に付けてきたことをみんなと共有できるようになりたいですね。そのことで社内の人との、部署をまたいだ交流ができると思うので。

 社内の勉強会に出ると、知り合いが増えていきます。今後も興味があるところにはどんどん首を突っ込んでいって、人脈を広げていきたい、そのことが仕事でも役に立つかもしれないし、そうでなくても楽しいですから。

 ITエンジニアとしては、基本的にはインフラ技術者としての道を歩みたいです。今後はアーキテクトのように、開発の方も見ていきたいですね。広い視野でシステム全体を見て、お客さんにとって最適なシステムの提案、設計ができるようになれればと思います」

 最後に吉田氏に、後輩エンジニアへのメッセージを聞いてみた。

 「もしいま仕事が楽しくないと思っているなら、社内外のさまざまな人に当たり、自分でも動いてみて、楽しい仕事を見つけ、つかみ取ることが必要だと思います。受け身になると仕事は楽しくない。仕事するなら楽しくやりたいなと思っています。例えばITエンジニアの社外のコミュニティなどに参加して、横のつながりをつくるのもいいと思います。そういうつながりはどこかで必ず役に立つときが来ます」

 「仕事するなら楽しくやりたい」をポリシーに、運用しやすいシステムの設計や構築に取り組む吉田氏。「この業界は興味を引かれることがいっぱい。興味を持ってやっていると楽しい」と笑う。

 

今回のインデックス
 運用経験を生かし、本当に使いやすいシステムを (修行時代)
 運用経験を生かし、本当に使いやすいシステムを (運用から構築へ)

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