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ITエンジニアの働く環境を考える

第2回 「働きながら子育て」がITエンジニアの最適解

長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2007/7/30

在宅勤務、短時間勤務、休職して復帰……。多様化するITエンジニアのワークスタイル。これらを支えている企業の取り組みを紹介する。今後の働き方を考える際のヒントとしてほしい。

 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)では2007年から、「ダイバーシティ」に関する取り組みを強化している。これはCTCによると、それぞれの人材が国籍、性別、年齢、障害の有無、考え方の違いなどの多様性を生かし、個人の能力を最大限に発揮するための取り組みだ。

 2007年1月1日に新設されたダイバーシティ推進課では、まず第一歩として女性のキャリア推進、仕事と出産/育児の両立支援に注力する。

 同社 人事総務室 人事部 ダイバーシティ推進課 課長 小澤聡子氏は、「経営統合前の両社(CTCは、伊藤忠テクノサイエンスとCRCソリューションズが2006年10月に合併して誕生)にも、すでに多様な人材を活用しようという取り組みがありました。経営統合を機に、組織化してきちんと会社で取り組んでいこうという姿勢を表した形でダイバーシティ推進課が発足しました」とその背景を語る。ダイバーシティはIT業界ではまだ珍しい取り組みであり、社内外に同社の方針を広く知らせる意味合いもあるようだ。

 ダイバーシティ推進課の取り組みの詳細、また子どもを育てながら働くITエンジニアへのアドバイスを聞いた。

管理職層の意識を変える

 CTCは現在、ダイバーシティの重点施策として「1.意識・風土改革」「2.女性社員のキャリア推進」「3.環境づくり」を挙げている。順に見ていこう。

伊藤忠テクノソリューションズ 人事総務室 人事部 ダイバーシティ推進課 課長 小澤聡子氏

 「1.意識・風土改革」は、大きく一般社員への情報発信、管理職層の意識改革の2つに分けられる。一般社員への情報発信では、社内向けサイトや社内誌を活用。特に社内向けサイトではダイバーシティの専用ページを2006年11月に立ち上げ、取り組みの概要、関連の各種制度や研修の実施報告などさまざまな情報発信を行い、社員の理解を促している。

 管理職層の意識改革では、課長研修や部長研修など既存の階層別研修において、会社としてのダイバーシティ推進についての啓蒙(けいもう)活動を行う。小澤氏は「管理者が会社の取り組みを理解し、自分自身の部下への視点を見つめ直し、(性別にかかわらず)同じ能力なら同じ機会を意識して与えられるようになる内容にする予定」と説明する。

 以前の日本社会では、女性が働き続け、昇進していくことが難しい環境があった。現在ではその風潮はだいぶ薄れてきているとはいえ、まだまだ根強く残っていることもある。「社内にもいろいろな考え方の人がいます。女性に残業させるとかわいそうだという意識を持っている人もいるのではないかと思います。自覚していなくても、心の底にあることもある。その意識を変えて、『だから女性を登用しないのではなく、同じ機会を与えてください』ということが必要なのではと思います」。しかしITエンジニアについては、「社内の女性に聞いても、女性だからという理由で仕事を任せてもらえないということはまったくないという声があります」という。

キャリアデザイン研修で女性社員のネットワークをつくる

 「2.女性社員のキャリア推進」では、研修や「メンタリングプログラム」によって、「活躍できる女性社員」の数を増やす。

 CTCの全社員に占める女性の割合は、現在14%。「この比率は少ないと思っています」と小澤氏はいう。「もともとのIT業界の人材不足、これからの少子高齢化の時代における労働力の不足を視野に入れると、女性を積極的に登用することが会社の成長につながるのではと考えています。新卒採用における女性の比率を目標20%にするなど、女性社員の数を増やし、なおかつきちんと育成をして、活躍できる女性社員を増やすことを目指しています」

 現在実施している研修は、一般女性社員を対象とした「キャリアデザイン研修」だ。「いまの自分を見つめ直して、CTCでのキャリアを考え、リーダーへの意識を醸成」することを目的としている。CTCの管理職における女性の割合は2007年4月の段階で「約3%」であり、小澤氏はこの現状をこう語る。「全社員に占める女性の割合が14%なのに、管理職になると3%に落ちてしまっています。(男性社員と)同じ活躍をしていれば、管理職における割合も14%になるはずという仮定を基に、女性の意識を高め、かつ管理職にもアピールして両方の意識を高めるという位置付けで考えています」。まずは2010年までに、管理職における女性の割合を5%にすることを目標とする。

 この研修では受講者を会社が指定するのではなく、「積極的にキャリア形成をしていきたい」と希望する女性社員を募集するという形で行う。2〜3月に2日間の日程で実施した第1回研修では、50人ほどの希望者の中から24人が参加した。「全員に大変好評で、『もっと実施してほしい』という声が多く上がりました」

 研修には直接的なキャリア形成支援のほかに、もう1つ目的がある。「女性社員がお互いの存在をけっこう知らないんですよ。そこで、何かあったときに相談し合えるような女性社員のネットワークをつくることも目的にしています。こちらの意味でも好評でした」。また、実際には参加できなかった社員からの反響も大きく、特にITエンジニアからは「期末に近く、納期の関係で忙しいので今回は参加できないが、次回はぜひ参加したい」との声も多かったという。

女性社員にロールモデルを提示

 メンタリングプログラムは、女性管理職がメンターの役割を担い、一般の女性社員のキャリア形成を支援するという取り組み。5月からトライアルで実施し、10月から本格的に導入の予定だ。

 「一般の女性社員からすると、目標となるような女性が周囲になかなかいないという状態。ですので会社が仕組みをつくってロールモデルを提示することにしました。具体的にはロールモデルを女性管理職にお願いして、一般社員のキャリア形成のうえでの身近な相談相手をつくることを目指します」とのことだ。

 メンターは1人のメンティを担当する。「他社の事例で、1人が5人を見ていたことがあるらしいのですが、大変過ぎてつぶれてしまったと聞いています。いまのところは1対1が限界と考えています。しかし女性の管理職、つまりメンター側の人数が少ないので、そんなに多くの一般社員の支援はできない状態です。今後は女性に限らず、男性管理職がメンターになるなど、いろいろな方法が考えられると思います」

 5〜7月のトライアル期間では、初回のキャリアデザイン研修を受講した社員のうち希望した5人をメンティとして、5人のメンターが指導する。メンティの年齢層は、20代後半から40代と幅広い。まずは双方が心構えや必要なスキルについての研修を受講し、その後は設定目標などのテンプレートに従って、キャリアについて話し合う。1カ月に1回、2時間程度を目安に原則として面談を通して行う。今後、トライアルを実施しての声なども反映し、より良い制度にしていく予定だという。

小澤氏が語る、
育児をしながら働くITエンジニアへのアドバイスとは?
 
 


今回のインデックス
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