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ITエンジニアの働く環境を考える

第2回 「働きながら子育て」がITエンジニアの最適解

長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2007/7/30

働きながら子どもを育てられる制度を

 「3.環境づくり」では、短時間勤務制度や時差出勤制度など、育児に関する各種制度の利用を促進することを主な目的としている。

 これらの制度に関して、合併前の2社では法律に基づいて整備していた。例えば短時間勤務制度なら「子どもが3歳になるまで」としていたという。合併に伴って就業規則を変更することになり、具体的に検討するに当たって、「ITエンジニアが活躍していける制度でなければならないと考えました」と小澤氏は振り返る。

 「IT業界は進歩が早いので、長いブランクがあると、おそらく戻ってきてもやっていけないのではないか。そこで、働きながら子どもを育てられる制度の方が現実的ではないかと思ったのです」

 実際にITエンジニアはキャッチアップの意識が高く、産後なるべく早い時期に復帰することを望む社員も多いそうだ。「そうした要望に応えるには、短時間勤務制度や在宅勤務制度の充実が必要だと考えました。まずは既存の短時間勤務制度の上限を引き上げ、子どもが小学校4年生の年度末まで認めるとしました。ITスキルを陳腐化させず、育児をしながら働き続けるのに適切であると思っています」。在宅勤務制度については、評価方法や勤怠に関する課題に取り組みつつ、導入に向けて引き続き検討していくという。

 CTCの短時間勤務制度では、業務時間を30分刻みで最大90分まで短縮可能。所定労働時間は7時間30分なので、最大で6時間勤務ができる(1時間の休憩をはさみ、拘束は7時間)。この短時間勤務制度に加え、育児休業制度、時差出勤制度とも、男女問わず取得可能だ。

 実際に短時間勤務制度を利用している社員は現在15人ほどで、ITエンジニアの利用例もあるという。男性社員の利用はまだないそうだが、「取得できないと思い込んでいる男性社員がかなりの数いるのではと推測しています。制度は整ってきたので、今後はどのように利用してもらうかについて、取得する社員の上司の意識も含めて、啓蒙活動を主眼にしていきたいと思っています」

 これら、働きながらの育児を可能にする制度への社員の声について、自らも「子育てを7年している」という小澤氏は、経験を交えてこのように語った。「保育園は割と手厚く、朝7時30分くらいから夜7時30分くらいまで子どもを見てくれます。しかし小学校に上がってしまってからが大変なんです。

 学童保育は保育園より時間が短く、3年生までしか実施していない自治体が多いので『困る』という社員の声がありました。私も実際そうでした。小学生といっても、低学年のうちは心配なので、小学校4年生の年度末までの育児短時間勤務は魅力的だと思います。

 長く休業するよりも短時間で働きながら育児をするという方が、ITエンジニアとしてのスキルが衰えないため、個人にとっても会社にとってもメリットがあるのではないかと思います」

子どもを育てるITエンジニアへのアドバイス

 さて、現実に育児をしながら業務を行うとなると、周囲のメンバーの協力が必要になることが予想される。アドバイスとして小澤氏は、「本人が自覚を持ち、協力を得ながらも働いていく態勢を自分でつくることが重要」と話した。「例えば大量の仕事を、短時間で何とかこなしながらやっているとします。でも子どもって、ある朝突然熱を出すんですよ。そういうときのために、きちんと優先順位を考えて仕事をする必要があります。

 明日に迫っていることを今日やっていないというのは、本人の自覚が欠けていると思うんです。優先順位の高い仕事から片付けていれば、ある日突然子どもが熱を出したとしても、周りの人に掛かる迷惑は100ではなく30くらいになります。また、周りの人の協力を得るばかりでなく、自分ができることは協力するということも大切です。

 『制度ばかりに寄り掛かっている』と思われないためにそういった自覚が必要だということも、きちんとアナウンスして、意識付けをしていかなくてはいけないと思っています。育児をしながら仕事をすることは負担が大きいのは確かです。でも自分で選んだ道ですから、協力を得ながら働いていく態勢を自分でつくっていかなくてはいけない。それは制度の利用以上に大切なことです」

 現在の社会では、子育ての負担の多くが当然のように女性に掛かってくる状況だ。しかし小澤氏は、子育てに対する男性の意識の変化や、世の中の変化を実感しているという。過去7年間の子育て期間中、保育園の送り迎えや懇談会などを経験していて「ここ数年、お父さんの姿がすごく増え始めた」からだ。

 「男性の意識も世の中も、この7年で変わってきていると感じます。このまま変わり続けていくのではないかと思いますが、男性社員や上司への意識付けという面では働き掛けを行っていきたいと、個人的には思っています」と語った。

社員の主体的な取り組みにつなげたい

 ダイバーシティ推進の今後として、小澤氏は「社員の主体的な取り組み」を目指している。

 「ダイバーシティは、性別、国籍、年齢、考え方の違い、価値観の違い、ライフスタイルに関係なく、能力と意欲があれば誰でも活躍できる会社にしましょうという取り組みです。課題は社員によって違うはずです。

 魅力的な会社をつくっていくために、どのようなことが必要か。それを検討する分科会のようなものをつくり、全社横断的に取り組むことを今年度の目標にしています。現場の各社員に、主体的に意識を持って取り組んでほしいと思います」

 会社側がキャリアに関する情報発信や研修の提供を行い、働きながらの子育てを支援する制度を充実させても、それをどのように利用するかはITエンジニアをはじめとした個人にかかっている。それぞれのより良い働き方に向かい、個人がどれだけ意識を向上させていけるかが、重要なポイントになるだろう。

 

今回のインデックス
 ITエンジニアの働く環境を考える(2) (1ページ)
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