第3回 ユーザー企業が「価値あるSE」と評価する人材像
エンジニアtype
2011/12/13
近年、ユーザー企業の「自社サービスの内製化」や「システムのクラウド化」などに伴い、SIerへの要求レベルが高まってきている。ここ2年で4000億円の減益といわれるSI業界の中で生き残っていくためには、どんなエンジニアスキルを磨いていけばいいのか。 |
※本記事は、「エンジニアtype」のコンテンツを一部@IT表記に統一した上で、許可を受けて転載するものです。
株式会社クロスオーシャンメディア 代表取締役社長 市原義文氏 大学卒業後、大手自動車メーカー、外資コンサル企業を経てローソンに入社。業種・業態を問わず、一貫してIT関連事業に携わる。2010年、クロスオーシャンメディアを立ち上げ代表取締役社長に就任 |
2010年、ローソンと NTTドコモ、 アサツーディ・ケイの3社の出資により設立された、デジタルサイネージ配信会社のクロスオーシャンメディア。代表を務める市原義文氏は、約20年にわたってその立場を変えながら、ITの世界を見続けてきた。
ある時は、自動車メーカーでERPパッケージの導入を図るユーザー側IS部門の担当者として。またある時は、外資系コンサルでITを活用した事業再生の先導役として。そしてまたある時は、コンビニ業界に籍を置き、ITを駆使した集客力向上に取り組む実践者として活躍してきた市原氏。現在は、コンビニ大手であるローソンの店舗ガラス面をメディア化するデジタルサイネージ配信会社の経営者として、IT業界とのかかわりを持っている。
「今に至るまで、一貫してITを活用した仕事に取り組んできましたが、その中で実感するのはユーザー企業にもITリテラシーは必要だということ。それもIT部門だけが分かっていれば済む話ではなく、経営層もシステムを使う社員自身もリテラシーを高めないといけないということでした」
■ ITを“分かる”人間は、ユーザー企業側に不可欠
SIerに限らず、どの業界でも「顧客志向」は最優先すべき課題の1つとして挙げられるテーマだが、状況によってその志が歪曲されることもある。例えば自社のプロダクトよりも他社のプロダクトの方が客観的に優れていると知っていても、他社製品を使った提案ができない場合も少なくない。
また、受注後に投資コストを大幅に圧縮する新たなアイデアが出たとしても、あえて受注額を落とすような再提案をすることは通常行われないだろう。
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「適正価格が果たしていくらなのかを見極めるのは難しいものですが、費用対効果をしっかり見ないと、高いコストを長期間払い続けなければならなくなります。ITリテラシーはシステム投資を評価する上で欠かせないもの。ユーザー企業にとって非常に重要な判断基準なのです」
ただコストを圧縮するにしても、シーリングを設けて全体の予算を抑制するだけでは、競争力を発揮することは難しくなる。既製品を使う割り切りや外注化すべき部分と内製化すべき部分の切り分けを適切に行うことが大事なのだ。さらにのちのち、投資コストに見合うリターンが得られているか検証することも欠かせない。そのためには、内部にも“分かる”人間が必要だ。
■ 価値あるSEは、パートナーシップを重んじられる
「仮に外注がコスト高を生むことが分かったとしても、利用価値の低いシステムを内製するのであれば意味はありません。情報システム部門が内製化を主導するにしても、SIerに外注するにしても、それぞれに所属するSEが本当に価値ある成果を社内ユーザーやエンドユーザーに与えられないのであれば、生き残りは難しくなるでしょうね」
市原氏が言う「価値ある成果」を出せるSEとは、IT知識を駆使して顧客や社内ユーザーの課題を解決できるSE。パートナーシップを結べるSEを指す。それは社内SEであっても、外部に籍をおくSEであっても変わらない。
「理想はユーザーやプロダクトのベンダ、SIerの三者が対等な存在として向き合うこと。どれか1つでも特定のプロダクトにべったりだと難しいかもしれませんが、それぞれITに関するリテラシーが今より相対的に高まれば、状況は好転すると思います。私たちの場合だと、現在、広告配信システムの提供を請け負っている某大手SIerは、弊社側にシステムに関するノウハウがあるため、開発を請けるメリットは大きいと考えています。わたしたちが行う改善提案が、パートナーであるSIerにとっても開発ノウハウを洗練させるきっかけになっているはずです。このように、わたしたちと付き合うことでSIerにもメリットを感じてもらえるような関係性が作ることができるのも、ITリテラシーがあってのことです」
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