肩書き抜きで食っていける自信ある?
脱・リーマンエンジニアに必要な4つの習慣
エンジニアtype
2012/1/24
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■ 習慣2 寂しい時は我慢しない。仲間を探してコミュニティに参加する
「脱・リーマン」する上で最も重要なのは、組織におもねらないこと。実際に肩書きが会社員かどうかは関係ない。ではどうすれば「個人活動」を始めることができるのか。てっとり早いのが、勉強会など、自分が興味を持っているITコミュニティに出入りすることだ。
日本UNIXユーザ会幹事を務める小山哲志氏は「コミュニティに飛び込む」ことのメリットをこう語る。
1つの会社でしか働いたことがない人は一度、社外のコミュニティに飛び込んでみましょう。新しい価値観に触れることで、「オレはこの技術が好きだ』」などと発見できることもよくあります。業界の中心人物との距離も縮まりますしね。
この世界に入った当時、『UNIX MAGAZINE』という月刊誌にはUNIX界の大物たちが寄稿した記事が数多く掲載されていたのですが、日本UNIXユーザ会に参加してみると、それらの大物が勢ぞろい。そのうち、彼らと接することが当たり前になり、
『UNIX MAGAZINE』が同人誌に見えてきました。
(小山哲志氏) |
ほげ技研代表社員/アジャイルメディア・ネットワーク 基盤プログラマ/日本UNIXユーザ会幹事
1965年生まれ。3社を経た後、ビート・クラフトを設立。働き出した当時から、日本UNIXユーザ会(jus)をはじめとするコミュニティに積極的に参加。ビート・クラフトを退社後、テックスタイルを経て、2010年8月、ブログネットワーク運営会社のアジャイルメディア・ネットワークに入社。さらに同年9月には、ほげ技研を設立 |
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興味深いのが、彼らがコミュニティに参加するようになったきっかけだ。小山氏に限らず、取材対象者全員が、「共通の話題で話ができる仲間がほしかった」ことを理由に挙げた。
勉強会やコミュニティで名前と顔が売れるようになれば、個人に対して仕事が舞い込むことも珍しくない。
僕はフリーになって1年半ほどが経ちますが、実はこれまで一度も営業活動をしたことがありません。勉強会や仕事を通じて知り合った方から、仕事を紹介してもらえるからです。
僕がフリーでもやっていけると感じたのは、荻野さんから仕事をいただいたのがきっかけなんです。荻野さんとはRailsの勉強会で初めて会い、Rubyコミュニティでも何度かお会いしていました。
で、僕が会社を辞めた話をしたら、ソーシャルアプリを作る仕事を紹介していただいたんです。その時、「ああ、仕事ってこうやってもらえるんだな」と実感しましたね。今は、勉強会やTwitterなど人とつながるツールが充実した時代。技術力とやる気があれば、どうにかなると感じています。
(赤松氏) |
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舞い込むのはフリーへの仕事の依頼だけではない。そこで得た人脈から、起業に発展することだってある。
僕自身がフリーだった時期は、意識して数多くの勉強会に参加していました。
最初に興した会社は、NeXTユーザ会という勉強会で知り合った人との共同起業。また、『Rubyソースコード完全解説』という本の読書会を通じて、何人もの実力派のRubyistと出会いました。
面白い人とたくさん知り合えましたし、何より、知識の幅が広がりましたね。今は、勉強会に参加することがずいぶん一般的になりました。勉強会も、あっと言う間に定員いっぱいになってしまいます。エンジニアが個人の力を伸ばそうとしている良い傾向だと思います。
(荻野氏) |
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活動範囲が社内だけならば、そこで話される話題は自然と業務に関係したものだけに限られていく。「でも本当はこの技術について深い話がしたいんだ!」そう思うなら、Google先生にオススメの勉強会を教えてもらおう。
寂しければ仲間を探してみること。それが脱・リーマンに必要な習慣その2である。
■ 習慣3 会社が認めざるを得ない、2足目のわらじを履く
コミュニティへの参加が習慣化したら、次のステップに進む潮時だ。「2足目のわらじ」を履いてみよう。
そこで参考にしたいのが、2足のわらじを履くことで、自身の価値を大きく向上させることになった日本Androidの会で理事/運営委員長を務める安生真氏だ。
アメリカの大学に在籍していたころ、公共機関の技術課でインターンとして働き、Google Desktopの開発にかかわっていた安生氏。その関係で、日本に帰国後、2008年より始まったGoogleデベロッパー交流会(Google Developer Dayの前身)に参加したことが、日本Androidの会の運営を任されるようになった発端だ。
今でこそ注目を集めるGoogle Developer Dayですが、その前身であるデベロッパー交流会は2008年当時、講演者若干4名の小さなイベント。そうしたイベントに参加することに対し、会社は「勤務時間外ならいいよ」というスタンスでした。日本Androidの会が発足し、場の流れで僕が運営委員を務めることになった時も同様です。
ただ、だんだんと世間でAndroidの認知度が高まるにつれ、Webやスマホ関連の技術、マーケティング動向といった最新動向が、自然と僕の元に集まるようになった。それとともに会社へのフィードバックが増えるようになり、今や「好きにやっていいよ」という、会社公認に変わりました。
この業界は、ものすごい速度で変化しています。だから企業側には、状況に合わせた対応が求められる。ところが、社内が同じような人材ばかりだと、入る情報も偏りますよね。だから今後、社員に社外人脈を広げさせ、
多様な情報を得ようとする企業は増えると思いますね。
(安生真氏) |
ケイブ プロモーション&マーケティング室 開発・ディレクター/日本Androidの会理事・運営委員長/Tokyo GTUG マネージャー
Google API Expert 1976年生まれ。専門学校を卒業した後、単身米留学し、現地の大学でコンピュータサイエンスを学ぶ。卒業後、大学でインターンをするかたわら、エンジニアとしてGoogle Desktopなどの開発に携わった。2007年に帰日し、ゲームソフト制作会社のケイブに入社。日本Androidの会理事兼運営委員長も務める。 |
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二足のわらじを履いているのは、安生氏だけではない。
例えば小山氏は日本UNIXユーザ会(jus)で幹事を務めているし、赤松氏は、KaigiFreaksレポート班スタッフとして、RubyKaigi2011に参加している。
なるほど、注目度の高いコミュニティに運営側として参加することは、フリーランス的立場で働く小山氏や赤松氏にとって、仕事を得る上で重要な活動の一部だろう。
会社に頼らずに生きるためにはまず、他の人に自分を知ってもらわなければなりません。
その意味で、ただコミュニティに参加するだけでなく、運営側に回ることで、関係者ほか、さまざまな人により深くコミットしていくことは、非常に重要だと思います。
僕の場合は他にも、GitHubで自分が開発したプラグインやライブラリを公開したり、技術に関する覚え書きをブログに書いたりして、意識的に自分や自分の持つ技術について知ってもらおうとしていますね。
(赤松氏) |
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確かに、Webアプリなどであれば難なく作れてしまうほど、個人レベルの開発環境が充実してきていることや、FacebookやTwitterといったSNSの発展は、個人で活躍するエンジニアの活動を後押ししているといえる。
一方で安生氏は、会社組織に身を置くからこそ得られるメリットがあることも、忘れてはならないと強調する。
日本Androidの会が、2万人を超える会員数を集めるほどの組織になったことで、「なぜまだ会社員を続けているのか?」と、たまに聞かれます。理由は明確です。それは、会社組織でしかできないことがたくさんあるから。
Web制作なら、プログラマ1人でも何とかなることは多いでしょう。でも、売れるクオリティを持ったゲームを作るためには、音楽やグラフィックの専門家が必要です。とても1人ですべて作れるものじゃない。まれにそういう人もいますが、会社が組織として運営されているのには、それ相応の理由があるはずなんです。
何だか逆説的ですが、こうして会社員として働く意味を客観的に知ることができるのも、会社員を続けているからなんだと思います。
(安生氏) |
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どうせ社外活動に身を投じるなら、運営側として入り込み、会社が文句を言えないだけのフィードバックをしてやればいい。それがひいては個人の付加価値にもつながるのだ。
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