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連載:ITエンジニア最新求人レポート No.13<2002年12月版
技術を追求し続けられるキャリアパス

小林教至(@ITジョブエージェント担当
2003/1/10

アットマーク・アイティのキャリアアップ支援サービス「@ITジョブエージェント」を担当している筆者は、同サービスに参加していただいている会社をはじめ、複数の人材紹介会社/人材派遣会社を毎月訪問している。そこでヒアリングしたITエンジニアの求人動向を定期的にレポートする。マクロ的な動向ではないし、具体的な数値もないが、現状の市況や今後のトレンドを推測する資料としてほしい。

ITエンジニアの中途採用が活発化

 この1年ばかり、ITエンジニアの中途採用動向はマイナストレンドにあったが、今回のヒアリングでは、ようやくいい話を聞くことができた。「2002年の1年間を通じて、12月が最も求人件数が多かったですね。秋以降から右肩上がりです」と某人材紹介会社の幹部はいう。この理由として「売り上げ低迷のため中途採用を抑制しすぎた企業が、いよいよ現場の人材不足に耐えられなくなった」「今年度の業績の着地点が見えてきて、ペンディングとなっていた採用活動を再開した」など、複数の要因が考えられる。

 特に採用活動が活発なのは、官公庁、流通、金融を顧客に持つ開発会社だという。例年1〜2月は求職・求人ともに活動が活発になる時期。改善の兆しの見えない景気動向を考慮すると、来年度以降もこの傾向が続くかは不透明なため、転職を検討しているITエンジニアにとってはいまが“動きどき”かもしれない。

 採用の基準(ボーダーライン)も下がっているようだ。「いままで未経験者不可だったプロジェクトマネージャについて、サブリーダークラスでも書類選考は通過するようになりました」(前述の人材紹介会社)とのこと。ただし、重視されるのは従来どおりコミュニケーションスキルだ。顧客のニーズを正確にくみ取り、プロジェクトチーム内で情報共有をしつつ、確実にシステムに反映できる能力が求められる。

派遣エンジニアの需要も増加

 中途採用以上に低調が続いていた派遣エンジニアへのニーズも、12月に復調したようだ。「11月までは、こちらから営業していましたが、12月は顧客から問い合わせが入るようになっています」(某人材派遣会社の営業担当者)。通常、派遣エンジニアのニーズは、下半期から開始するプロジェクトのメンバーを集めるため、8〜9月に活発化し、通常12月は年内で終了するプロジェクトが多いために案件数が落ち込むらしいが、今年はその落ち込みがないという。

 「年度初めから計画していた開発案件が、売り上げ低迷のためにずっとペンディングになっていたが、いよいよ着手しないと今年度のカットオーバーに間に合わなくなり、焦っているユーザー企業が多いと聞きます」と、前述の人材派遣会社はいう。システムへの投資が活発化しているというよりも、最大瞬間風速的な現象といえよう。

技術職としての専門性を究めるキャリアパスの可能性

 2002年3月に行ったEngineer Lifeの「第3回 @IT読者調査結果」によると、将来希望するキャリアの方向性として最も多かった回答は、「技術職としての専門性を高める」だった。特に開発系エンジニアの場合、一定年齢に達すると、プロジェクトマネージャなど管理的な業務が中心となろう。果たして「Engineer Life」フォーラム読者の志向する技術職としての専門性を究められるキャリアパスはあるのだろうか?

 2002年12月にアットマーク・アイティが開催した「第3回 自分戦略セミナー」でリクルートエイブリックのキャリアアドバイザーから、下図のようなエンジニアのキャリアパスが提示された。ここにある「テクニカルアナリスト」「要素技術スペシャリスト」がその解かもしれない。そこで今回は人材紹介会社、人材派遣会社に技術職としての専門性を究めるキャリアパスの実態についてヒアリングした。

図 エンジニアのキャリアパス

テクニカルSEという選択肢

 「大手システムインテグレータの技術部門は多くの場合、流通や金融など産業別に編成された事業部と、OS、DB、ネットワークなど技術分野別に編成された事業部に分かれています。後者に属するエンジニアを“テクニカルSE”と呼ぶことが多いのですが、テクニカルSEは、技術職として専門性を究められるキャリアパスの1つだと思います」と、ITエンジニアの経験があるパソナテック シニアコンサルタント杉山宏氏は説明してくれた。

 例えば、Oracleを専門とするテクニカルSEであれば、産業別の事業部が個々に抱えているプロジェクトのうち、Oracleを実装するプロジェクトに横断的にかかわることになる。従ってプロジェクト全体の管理や顧客折衝業務は少ないが、Oracleについては相応のスキルレベルが要求される。逆にいえば、技術レベルがほかを圧倒していれば、技術職としての専門性を究めるキャリアを築けるわけだ。

 では、テクニカルSEの求人動向はどうなっているのだろうか? 「求人はあります。しかし、産業別の事業部に属するSEの求人数が10名あるとすると、テクニカルSEの求人は1名程度の狭き門です」(杉山氏)との現状を説明してくれた。分野別ではデータベース関連、セキュリティ関連のテクニカルSEの求人が多いという。

 続いて、テクニカルSEとして年数を積んだ先のキャリアパスに、どんな選択肢があるのかを聞いた。「大きく分けて次の4つがあります。いずれを目指すにしても、エンジニア歴6〜8年あたりのリーダークラスの段階で方向性を定め、技術スキルを磨く必要があります」(杉山氏)。

1)所属部署で管理職になる
2)さらに技術力を高め、テクニカルアナリスト、要素技術スペシャリストになる
3)その技術専門のトレーナーになる
4)専門としていた製品の製品ベンダに転職し、製品開発エンジニアなどになる

テクニカルSEでも、技術以外のスキルも重要

 顧客折衝などの機会が少ないテクニカルSEでも、コミュニケーションスキルは必要だと力説するのは、人材紹介会社リーベルの石川隆夫代表だ。「レベルの高いテクニカルSEは、往々にしてコミュニケーションスキルも高いものです」というエンジニアの経験もある石川氏の話には説得力がある。

 「エンジニアに必須のスキルには、次の4つがあります。テクニカルSEであれば第1の技術スキルに、ITコンサルタントやSCM・CRM・ERPなどパッケージ導入コンサルタントであれば第2の業種・業務知識に、プロジェクトマネージャであれば第3のマネジメントスキルに、それぞれスキルの比重を置くことになります。いずれにしても必要なのは、第4のビジネススキルです。さらにテクニカルSEといえども、第2の業種・業務知識や第3のマネジメントスキルがなくていいというわけではありません。テクニカルSEとしてキャリアを積むのも険しい道だと心得てください」(石川氏)

1)技術スキル(開発言語、DB、ネットワーク、Web技術など)
2)業種・業務知識(財務会計・人事・生産・物流・販売など業務知識、流通・金融など業種知識)
3)マネジメントスキル(プロジェクト管理、品質管理、コスト管理など)
4)ビジネススキル(コミュニケーションスキル、プレゼンテーションスキル、交渉力、語学力など)

 さらに石川氏は、所属している企業にテクニカルSEのキャリアパスがあるかどうかも、重要なポイントだと指摘した。いくら本人の技術レベルが高くとも、会社自体にそのようなパス(ポジションや部署)がなければ技術職としての専門性を究めることはできない。その際には27、28歳くらいまでに転職も検討した方がいい、と石川氏はいう。

派遣エンジニアとして、ニーズの高いテクニカルSE

 続いて、特定技術に特化した派遣エンジニアの需要について聞いた。リーディング・エッジ社の加藤千尋マネージャは次のように教えてくれた。「特定技術に特化した派遣エンジニアのニーズは高いですね。特にデータベース専門のエンジニアは売れ線です。Oracleエンジニアは以前からニーズは高いのですが、2002年の夏以降は、DB2エンジニアのニーズが増えています」

 自社内にはいない特定技術者として派遣エンジニアをアサインする、という開発系企業の姿が見てとれる。では、技術職としての専門性を究めるには派遣エンジニアという選択肢が最もよいのだろうか?

 「特定技術に特化したエンジニアのニーズは高いといっても、やはり35歳までというのが現状です。それ以上になっても技術中心でエンジニアを続けられるのは、相当レベルの高い人だけ。技術レベルがそれほど高くない場合には、プラスアルファのスキルを持つ必要があります」(加藤氏)。例えば、それほど技術レベルの高くない30歳代後半のネットワークエンジニアは、コミュニケーションスキルを生かし、ユーザー企業の情報システム担当として長期契約しているという。

まずは現状を正しく認識すること

 技術職としての専門性を究めるキャリアパスについて、人材紹介会社、人材派遣会社からのヒアリング結果をレポートした。これらの話で共通していたのは、「特定技術に特化したエンジニアでい続けるためには、その分野での高度な技術レベルが必要」ということだった。30歳前後で、自分の技術レベルや志向、属する組織の現状を評価し、キャリアプランを練ることが重要だろう。

 今回のヒアリングで、気になる話を聞いた。「まず運用管理業務を受注し、そこから派生する開発案件を受注する、というのが最近の開発系企業の営業戦略のようです。そこで営業的な動きもできる運用管理スペシャリストの求人が増えています」というものだ。そこで、次回の求人トレンドレポートでは、運用管理スペシャリストをテーマにしてみたい。

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