Engineer Life
第3回 読者調査結果発表
〜エンジニアの目指すキャリアとスキルとは?〜
小柴豊
アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当
2002/5/23
当サイト(@IT)では、“自分戦略をつかめ”というスローガンを掲げている。「戦略」という響きがやや仰々しいかもしれないが、いい換えれば「ITを生業とする人の長期的なキャリア形成(による幸せな職業人生)をお手伝いします」ということ。企業の終身雇用制度が崩壊しつつある現在、このような“キャリアプランの必要性”については、多くの場で語られているが、現実のエンジニア諸氏は今後どのようなキャリアを考え、そのために何を学ぼうとしているのだろうか? Engineer Lifeフォーラムが実施した第3回読者調査の結果から、その状況をレポートする。
キャリアプランの作成をしているか
今後のキャリア形成について、まず読者が自分の中でどのような計画を立てているのかを聞いた結果が、図1だ。
図1 読者のキャリアプラン形成計画(N=314) |
「自分自身で長期的なキャリアプランを立てている」という回答は14%にとどまったものの、「個人的に次にやりたい仕事や、身に付けたいスキルのイメージを持っている」人が全体の70%を占めた。戦略とはいえないまでも、戦術的な身の処し方については、多くの人が自分なりの計画を立てている様子だ。一方「勤務先の人事制度の一環としてキャリアプランを立てている」と答えた人は全体の5%にすぎず、“キャリアは会社に与えられるものではなく、自分で考えるもの”という意識が一般的であるようだ。
ここにいても自分のスキルは……
ではエンジニアは、どのようなときに将来のキャリアを考えるのだろうか?仕事関連から私生活まで幅広い選択肢を提示して尋ねたところ、「その職場でのスキル向上に限界を感じたとき」がトップとなった(図2)。給与などの待遇や私生活上の節目などよりも、エンジニアとしての成長意欲こそが、キャリア変革のトリガとなっているようだ。
図2 次のキャリアを考えるとき(3つまでの複数回答 N=314) |
また他者との比較という面では、「上司や同僚と比べて、自分の力不足を感じたとき」よりも「他社エンジニアのキャリアやスキルを見聞きしたとき」のポイントが高いのが興味深い。技術者としては、会社の中での偏差値よりも、“技術者コミュニティ”内での位置付けの方がより重要なのかもしれない。
希望するキャリアの方向性:専門職へのこだわり
続いて、読者が希望するキャリアの方向性を見てみよう。自分が将来進みたい経路として、
A)技術職としての専門性を高める方向
B)ユーザーの業務目的を達成するために、プロジェクト全体を管理する方向
という2つの方向性を示したところ、全体の4割以上が「A+どちらかといえばA」を選んでおり、技術者の専門職志向の高さが明らかになった(図3)。図2で見た「スキル向上に限界を感じたときのキャリア変革ニーズ」は、その背景にこのような専門職志向が影響を与えているものと思われる。
図3 将来希望するキャリアの方向性(N=314) |
51%が“現在転職を考えている”
キャリアのターニングポイントといえば、まず「転職」が挙げられる。では、上記のようなキャリアプラン/志向性を持ったエンジニアの転職意識は、現在どうなっているのだろうか? 読者にこれまでの転職経験と現在の転職意向を聞いた結果が図4だ。
図4 転職経験/転職意向 (N=314) |
図4を見ると、
過去の転職経験率(図4 C+D)=40%
現在の転職意向率(図4 B+D)=51%
となっており、読者の半数が“現在転職を考えている”ことが分かった。「転職したことはなく、現在も考えていない」人はおよそ4人に1人にすぎず、エンジニアの“流動化”はもはや常態化したといえそうだ。
転職で重視する点:1に待遇、2にスキル支援
転職する際の理由や重視点は、過去と現在でどう変わってきているのだろうか? 転職経験者が過去に転職した理由と、現在の転職意向者の重視点を、それぞれ同じ選択肢で聞いた結果が図5だ。
図5 過去の転職理由/今後の転職の重視点(3つまでの複数回答) |
過去の転職の理由上位が「経営者のビジョン/方針」「給与・賃金」「企業活力/将来性」なのに対し、いま転職を考えている人では、「給与・賃金」に次いで「スキルアップ支援体制の有無」が重視されている点が大きな変化といえそうだ。
ここまで見てきたとおり、現代のエンジニアは専門職志向が強く、自分のスキル向上を中心としたキャリアプランを考えている人が多い。そうした人たちにとって、(待遇はもとより)“自分の望むスキルアップを実現できる会社”こそ、理想的な場であることは想像に難くない。不況にもかかわらず、優秀なエンジニアは人材不足だといわれているが、エンジニアが望んでいる次のスキルを把握し、その技能獲得を支援できるような企業には、おのずと人材が集まっていくのかもしれない。
今後注目のスキル分野とは?
それでは、エンジニアは現在、どのようなスキルアップを望んでいるのだろうか? 最後にその内容を紹介しておこう。読者に“現在までに身に付けているスキル”および“今後身に付けたいスキル”を質問した結果が、図6だ。
図6 現在のスキル/今後身に付けたいスキル(複数回答 N=314) |
まず技術分野において、現在までの習得状況に比べた今後の習得意向が高いのは、「セキュリティ」「XML」「オブジェクト指向分析/設計」といったスキルだ。これらはいずれも今後のビジネスを支えるシステム構築に不可欠な要素であり、日ごろから開発に携わっている読者ならではの、“先を見据えた”選択といえるのではないだろうか。
技術系以外でも、「ビジネス英語/TOEIC」「プレゼンテーション/コミュニケーションなどのヒューマンスキル」の2点が、高いポイントを集めた。先端の技術情報を取得したり、国の内外を問わないビジネスのために英語は必須であり、技術スキルを生かすためにはヒューマンスキルも重要だ。主体的なキャリア構築に向けて、エンジニアのスキル向上意欲は広範囲にわたっているようだ。
調査概要
調査概要 | |
調査方法
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Engineer Life フォーラムからリンクした Webアンケート |
調査期間
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2002年3月12日〜4月5日 |
有効回答数
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314件 |
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