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こっそり教える組み込みエンジニアの転職事情

第23回 不況でも転職できるエンジニア

大谷麻里子(パソナキャリア)
2009/4/9

「したいことをするため」「条件のいい仕事に就くため」など、人はさまざまな理由で転職する。組み込み業界も例外ではない。同業界を舞台にした転職活動の喜怒哀楽を、キャリアコンサルタントがこっそり教える。

 戦後最大の不景気といわれる現在。転職市場においてもご存じのとおり、不況の影響を大きく受けています。採用を全面的に中止する企業も出てきました。だからといって、すべての企業が採用を中止するわけではありません。

 この経済環境下において成長を続ける元気な企業もありますし、事業の拡大や、受注済みのプロジェクトのために人員を必要とする企業もあります。とはいえ、以前に比べて応募者に求める要件が厳しくなっているケースが多いでしょう。

厳しくなった応募要件の内容とは

 「厳しくなった応募要件」とは、どのようなものでしょうか? 組み込みエンジニアに対する企業の採用要件については、以下の大きな流れがあるといえるでしょう。

●「C++、Javaの経験」といった技術要件だけでなく、「○○製品の開発経験」などの領域指定に

 以前に比べると、技術をメインとした要件の求人よりも、経験領域を限定した求人が増えてきました。例えば、

  • 携帯電話関連メーカー:携帯電話関連の開発経験の有無が応募の必須要件

  • 自動車関連の部品メーカー:「自動車業界における」組み込みエンジニアの経験が応募の必須要件

などのケースが挙げられます。

 こうした傾向はメーカーに限りません。客先常駐型のソフトハウスにおいても、経験領域を指定するケースが増えています。 

●「第二新卒歓迎」から「○○の経験○年以上」に

 エンジニアの不足感が強かった時期においては、人員を集めることがかなり重要でした。また、新卒が思うように採用できなかった会社などでは、「第二新卒歓迎」として、組み込みエンジニアとしての経験のない人材を教育しながら、必要な人材を確保する施策を取っている会社が少なくありませんでした。

 現在では、前述の「領域」に加え、「経験○年以上」というキーワードが付くケースが増えてきました。経験年数「3年程度」から「5年程度」へと、応募に必要な年数を増やした企業もあります。

 多くの企業が、すぐに現場で活躍できる即戦力の人材を求める傾向にあるのです。

 転職によってキャリアを変えようと思っているエンジニアにとっては、厳しい状況になっているといえるかもしれません。しかし、企業である程度の経験を積み、さらなるキャリアアップを望むエンジニアや、ほかの会社も見てみたいと考えているエンジニアにとっては、道が閉ざされたわけではありません。

変わらぬキャリアアップの近道、「同じ業界での転職」

 年収や職位を上昇させたいという人にとっては、景気の良しあしにかかわらず、いままで経験してきたフィールドで転職をした方が成功の可能性が高い、といえます。

 企業にしてみれば、類似の業界・製品を扱っていた人材や同業他社から来た人材に対する評価は高いですし、転職をする方にとっても、いままでの経験・知識をすぐに生かせる分、パフォーマンスを出しやすいといえるでしょう。 

 そう考えると、前述のように領域が限定されていたり、求められる経験年数が長くなっていたりしても、自分がその要件を満たしているのであれば、キャリアアップのための転職の可能性は、それほど変わらないのかもしれません。

 また、メーカーの場合、給与テーブルが年齢・職階によってある程度固定されている企業が少なくありません。そのため、景気の良しあしにかかわらず、給与のレンジが変わらないケースが多いのです。

 もちろん、賞与の額については会社の業績によって上下しますので、提示される想定年収は低くなるかもしれません。しかし、所属している企業でも支給額が下がっていることを考えると、転職の際に提示される年収・給与のアップ額が減少したとしても、実質的な上昇額は変わらない、もしくは上昇すると考えられます。

評価の高い「現場のリーダー」は時期を逃すな

 求人情報の公開に敏感になっている企業が増えているように感じます。採用情報を一般には公開しないことを条件に、人材紹介会社を通じて採用しているケースもあります。そのため、企業のWebサイトには公開されていなくても、人材紹介会社経由などで採用している企業があるのは事実です。

 もしかしたら、経験を生かせる企業がない、というケースがあるかもしれません。しかし、転職するに当たって高く評価される現場のリーダー――ある程度の経験・知識を持ち、最初から管理職として入るのではなく、入社後に現場で仕事の進め方、風土などを知ったうえで、将来的には管理職としてのキャリアを積むことのできる人――は、景気の状況に流されて尻込みせずに、チャレンジしてみるとよいと思います。

 ただし現在、転職活動をするのであれば、注意すべきことがあります。可能な限り、辞めてからではなく、在職中に転職活動を行ってください。

 採用されることがなくても、自分の力を否定されたことにはなりません。採用されないことを恐れてチャンスを逃すことこそ、もったいないことのように思います。転職はご縁ですから。

筆者プロフィール
大谷麻里子(パソナキャリア)●総合人材サービス会社での営業、アシスタント、企画業務経験を経てパソナキャリアへ入社。以前取得したCDA(キャリアデベロップメントアドバイザー)の資格を生かし、現在は機械・電気・化学メーカーなどに特化した転職希望者を担当。エンジニアを中心に転職相談などのアドバイスを行っている。

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