第8回 無計画なチャレンジは転職失敗のもと
アデコ 福間啓文
2008/11/27
目的別の実例を挙げながら、転職における成功・失敗の要因を探る。皆さんの参考となる「道」を探してほしい。 |
今回は、「新しいことにチャレンジしたい」という転職理由を取り上げます。
「新しいことへのチャレンジ」、皆さんも一度は考えたことがあるのではないでしょうか。実際にこの理由で転職した人もいることでしょう。チャレンジしたいという気持ちは、仕事へのモチベーションにかかわる大事なものだと思います。
しかし転職活動において、「気持ち」だけで安易に動いてしまうことには注意が必要です。場合によっては「こんなはずではなかったのに……」というような結果になり、再度の転職を考えるケースもあると思います。
実際にあった転職の例を取り上げ、なぜ失敗したのか、その後どのようにして再度転職活動をし、成功を勝ち取ったのかを考えてみましょう。
■敏腕プロジェクトマネージャ、徳山さんの疑問
徳山さん(仮名)は35歳。大学卒業後、大手システムインテグレータ(SIer)に入社してキャリアを積み、プロジェクトマネージャとして活躍していました。
主に通信キャリア向けの大規模インフラ構築プロジェクトに実績があった徳山さんの強みは、通信業界の知識と、100人月以上のプロジェクトを遂行してきたマネジメント経験でした。的確な提案力、大規模運用でのトラブル対応力もあり、顧客からの評判は上々でした。
入社から13年間、順調に働き続けていた徳山さんでしたが、年齢が35歳になったところで漠然と現状に疑問を感じ始めたとのことです。その要因は下記のようなものでした。
- 順調にキャリアを築いてきたことへのマンネリ感を覚え始めた
- 社内でこれ以上のキャリアアップができるか疑問に思っていた(年功序列、社内派閥の存在など古い体質があり、部長職には就けないだろうと予想していた)
- もともとチャレンジ志向があった
■取引先の社長からスカウト
そんなとき、以前付き合いのあったベンダの部長から、「ぜひ、社長と会ってほしい」という連絡を受けました。社長と会った徳山さんが聞かされた内容は、次のようなものでした。
「当社で新規事業を立ち上げる計画があり、そのプロジェクトを任せられる責任者を探していました。徳山さんの評判はかねがね聞いております。当社の社運をかけるプロジェクトですので、ぜひ、新規部門の部長として力を発揮していただきたい!」
社長から直接スカウトされてうれしくは思いましたが、予想もしていなかった話であったため、徳山さんは即答はしませんでした。ただ、気持ちは意外に早い段階で傾いていったそうです。それは、下記のような考えによるものでした。
- 現状のマンネリ感を打破するのにいいきっかけであると思った
- 「35歳の自分に転職は難しいのでは」と思っていたところに好条件の話が舞い込み、これが最後のチャンスではないかと考えた
これらの考えに「新しいことにチャレンジしたい」という強い気持ちが重なりました。以前の付き合いで好印象を持っていた会社であったことも手伝い、徳山さんは入社の決意を固めたのです。
この会社はメールセキュリティに関する自社製品を持つ、従業員50人ほどのソフトハウスでした。徳山さんは「通信業界での人脈を生かし、新規開拓をしてほしい」「将来的には上場も考えている」と聞かされ、大きな期待とともに新しいスタートを切ったのです。
■転職先の実態。そして再度の転職を考える
しかし実際は、そんなに簡単にいくものではありませんでした。この会社の売り上げ構成の実態は、大手SIerからの受託開発案件がメイン。自社製品の導入実績はほとんどなく、そもそも他社製品と比較して優位性のないものだったのです。会社の資金繰りもうまくいっていませんでした。以前、製品開発のために先行投資をしており、これが経営に影響しているようでした。
転職後間もなく、信じがたいことが起こり出しました。業績不振から給与遅配が始まり、ついには新規事業部の閉鎖が決まったのです。志半ばの徳山さんは、やむなく転職活動を始めました。
徳山さんの今回の判断に、何か問題はなかったのでしょうか。
・冷静な判断だったか?
新しいチャレンジがしたいという思い、社内の将来的なキャリアパスについての疑問は、十分転職を考えるきっかけになるでしょう。しかし徳山さんの場合、それ以上に年齢からくる焦りが強く影響したのではと思います。新規事業へのチャレンジ、部長職という予想以上の話に、少々舞い上がって冷静さを欠いてしまったのではないでしょうか。
もしこのとき、「知っている企業だから安心だろう」ではなく、客観的な企業研究や新規事業の詳細なヒアリングを行っていれば、違う判断ができたと思います。
・明確な転職テーマがあったのか?
徳山さんの一番の問題点は、転職のテーマがあいまいだったことだと思います。いわゆる現実逃避的な色合いの強い行動だったのではないでしょうか。
「マンネリ感を打破したい」「部長職で新規事業にかかわれるチャンスだ」というだけでなく、「なぜ転職をしなければならないのか?」「転職することで自分の課題は解決できるのか?」などの疑問について、解答を明確にしておくべきだったと思います。
「転職で一番重視したいポイントは何ですか?」 |
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