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「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント

第1回 転職すれば給料上がるよね?

アデコ
大田耕平
2006/12/21

やりたいこと重視で給与ダウンのCさん

 Cさんは31歳、インターネット関連の制作会社の開発部隊のプロジェクトマネージャです。大学を卒業後、半導体製品を扱う専門商社に営業として就職しましたが、物足りなさを感じ、当時脚光を浴びていたインターネット関連の仕事に就きたいと考えて小規模なWeb制作会社に転職。プログラマとして予約システムの開発などに従事しました。その後、もっと質の高い開発をしたいと考え、当時上場して注目を集めていたインターネットに特化したベンチャー企業に転職しました。それが現在の会社です。

 急成長のベンチャー企業ということもあり、Webのフロント部分のプログラミングから始めてデータベースの設計を任され、次のプロジェクトでは5人のメンバーをまとめるリーダーとして要件定義から実装、テストまで任され、あっという間にプロジェクトマネージャとして総勢10人のメンバーとプロジェクト全体を任せられるようになりました。会社の成長とともに自分の成長を実感できる環境に彼の意欲はますます高まり、数々のプロジェクトで活躍しました。

 入社から4年が経過し、従業員50人ほどだった会社は、300人を超える大所帯になっていました。しかし、Cさんは周囲の状況に問題を感じ始めていました。入社当初こそ未経験者採用が中心でしたが、現在はソフトウェアハウスやSIerで経験を積み、実装経験や開発方法論をしっかり身に付けたITエンジニアが中途で採用され、メンバーとして下についているのです。つまり会社の成長とともに従業員の質が変わってきたのです。ユーザーからの要求も高くなる中、開発経験を積んで高いスキルを持っているメンバーと、手探りで学んできた自分とのギャップに気付いたのです。ITエンジニアとしての志の高いCさんは苦悩しました。そして1つの決断をします。「転職して、開発の基礎から勉強し直そう」

 人材紹介会社に相談したCさんは、大規模Webシステムに定評がある大手SIerを紹介されました。現在の会社の他部署でパートナーとして付き合いのある会社です。社内でも開発の質の高さで有名であったため、即応募を希望しました。面接に進み、面接官と話をするうち、これまでの開発方法との違いを知り、スキルレベルの高さにますます引かれるものを感じました。選考は順調に進み、Cさんは内定通知を手にします。提示された年収は450万円。現職の600万円から150万円のダウンとなります。少しためらいはありましたが、数年先のキャリアパスを考え、Cさんは転職を決断しました。

 Cさんのケースは、図1のCグループに当たります。「やりたいこと」を重視し、転職を将来の投資と考えるタイプです。新天地で修業をしたい、あるいはキャリアチェンジしたいと考える人がこのグループです。ほかにも第二新卒組の転職者層がCグループに属します。しかしこの層を受け入れる企業は、好景気にもかかわらず、現在の転職市場にはまだ少ない状態です。

できること=やりたいことで現状維持のDさん

 25歳のDさんは、従業員30人のソフトウェアハウスに勤務するJavaプログラマです。大学を中退してアルバイトで入社し、実績を認められて2年前からは正社員として勤務しています。この会社はITエンジニアを単独でユーザー先に派遣する形態で、業務は機能追加の開発が中心でした。将来はプロジェクトマネージャになりたいと考えているのですが、周りの先輩を見ても、プロジェクトマネージャやプロジェクトリーダーとして活躍している例はありません。いい機会があればプロジェクトマネージャを目指せる環境に転職をしたいと考えていたDさんは、思い切って人材紹介会社に相談しました。

 そこでは、中堅のSIerを数社紹介されました。どの会社も大手のベンダやSIerとの強力なパイプを持っており、大型案件の上流工程を経験できる力を持っていました。プロジェクトマネージャを目指しているDさんにはどれも魅力的で、すぐに応募を決意しました。

 どの会社の選考も順調に進み、3社から内定をもらいました。3社とも年収は、残業代を含み380万円前後で現在とほぼ同額です。5年先、10年先に理想のキャリアが描けると思える会社を選び、従業員数600人の中堅SIerに入社を決めました。

 Dさんは、図1のDグループに属します。転職を将来の投資と考える点ではCグループと近いのですが、これまでの経験の積み上げと考え方は、「できること」と「やりたいこと」が同じ線上にある点でBグループに似ています。Bグループと異なるのは、スキルが企業の求めるレベルより低かったため、給与アップにつながらなかったことです。Dグループの層は転職市場に最も多く、求める企業も豊富にあります。

何を重視するかは考え方次第

 前職(現職)よりも給与が上がる場合、下がる場合、同等の場合について、事例を交えて説明しました。このように、転職すれば給与が上がるというものではありません。

 転職によって給与アップできる環境を探すのか。

 長期的なキャリアパスを考え、「給与はキャリアについてくる」と考えるのか。

 あるいは、大幅な給与ダウンを覚悟でキャリアチェンジを図るのか。

 どれを選択するかは皆さんの考え方次第です。

 答えが見つからない場合は、先輩の話を聞くのもいいでしょうし、キャリアコンサルタントに相談されるのも1つの方法かもしれません。中立的な立場でお話を伺いたいと思います。

 

今回のインデックス
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筆者プロフィール
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント 大田耕平
神奈川県出身。大学卒業後、大手独立系システムインテグレータに入社。システムエンジニアとして大手生命保険会社のシステム開発に携わる。アデコでは主にIT業界のエンジニアを中心に幅広く担当。Webや紙面上では伝わりにくい部分をITエンジニア視点で求職者に伝えられるように心掛けている。

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