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「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント

第3回 派遣社員なら好きな仕事が選べる?

アデコ
山口孝之
2007/3/13

数年前と比較すれば、転職は身近なものになってきている。だからこそ気を付けたい「転職でキャリアアップ」の思い込みについて、「ウソ・ホント」の視点で考えてみたい。

派遣社員と正社員

 最近、派遣社員を主人公にしたテレビドラマがはやっていますね。連載3回目である今回は、「足りないスキルを派遣就業で埋めることができる」ということについて考えてみましょう。

 顧客先で働くことが多いITエンジニア。重層構造のIT業界にあっては、IT企業の正社員であっても派遣社員と同じ業務に就くことは多いものです。では、正社員として働くことと派遣社員として働くことは、まったく同じものなのでしょうか。

 ITエンジニアのキャリアという観点で、この問いについて実際の転職事例を通して説明します。

「派遣なら仕事が選べる」

 私が芳賀さん(仮名)と会ったきっかけは、知人の紹介でした。芳賀さんは28歳のITエンジニア。当時、派遣社員として大手通信会社のソフトウェア研究所で働いていました。

 芳賀さんは私立大学の情報系の学部を卒業後、大手製造業のシステム子会社に就職し、親会社向けの情報システムの開発に携わっていたそうです。入社から5年間、販売・在庫管理、物流管理システムの運用保守および開発業務を担当していましたが、同じ技術を使用する仕事が長く続き、「幅広い分野にチャレンジしたい」という希望とのギャップを感じていました。

 そんなある日、いつものように残業で遅くなった帰りの電車の中で、芳賀さんは派遣会社のITエンジニア募集の広告を見掛けたそうです。そこには「派遣なら仕事が選べる」「派遣なら幅広い技術分野の経験が積める」と、魅力的な文字が躍っていました。

 「これだ!」。そう思った芳賀さんは、即座に転職を決意。それまでの会社を退職して派遣会社に登録し、「先端技術を扱えるような仕事」という希望を出して案件の紹介を受け、希望いっぱいに派遣社員としての生活を始めたそうです。

 私が芳賀さんに会ったのは、それから2カ月が過ぎたころでした。

本当にこんな仕事がしたかったのか

 芳賀さんは前述のようなソフトウェア研究所で、次世代通信制御ソフトウェアの開発プロジェクトのメンバーとして働いていました。通信会社のプロパー社員やパートナー社員、フリーランスのITエンジニアや芳賀さんのような派遣社員まで、さまざまなバックグラウンドのITエンジニアが総勢120人体制でかかわっていました。

 「先端的な技術が身に付けられる」。期待ではちきれそうだった芳賀さんが配属されたのは、制御ソフトウェアの検証チームでした。来る日も来る日も単調な検証作業の連続。芳賀さんは体力的にも消耗し、仕事に対するモチベーションを維持するのが難しいと感じていました。「自分は本当にこんな仕事がしたかったのか……」と自問自答する毎日を送っていたそうです。

 検証チームはプロパー社員をリーダーとし、派遣社員やフリーランスエンジニアを中心としたメンバーで構成されていました。20代前半から30代後半まで、幅広い年齢層のITエンジニアが配属されていたそうです。自分よりもキャリアの長いメンバーが同じ作業を続けているのを見ていても、将来が不安になるばかり……。芳賀さんはいまの状態のつらさ、先が見えない不安、すぐに転職を決めてしまったことへの後悔の念などを私に訴えました。

   

今回のインデックス
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