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「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント

第3回 派遣社員なら好きな仕事が選べる?

アデコ
山口孝之
2007/3/13

5年後、10年後の目標は

 私はまず、こう質問しました。「芳賀さん、5年後、10年後の目標は何ですか? どんなことをしていたいですか?」。確認したかったのは、芳賀さんの中長期にわたるキャリアビジョンです。「いま、どんな仕事をしたいのか」は、「将来、どんな自分になりたいのか」のプロセスにすぎないからです。

 芳賀さんは答えられませんでした。私は芳賀さんに、少し自分のキャリアプランについて整理してみるようにアドバイスしました。

 後日の面談で、芳賀さんから将来のキャリアビジョンについて聞くことができました。考えに考えた末に出した結論は、「さまざまな経験を積み、将来はプロジェクトマネージャとして責任ある仕事がしたい」というものでした。

 いまの職場では次世代技術のコアな部分にはかかわることはできず、製造されたプログラムの検証作業に忙殺されている毎日です。プロジェクトが重要であればあるほど、派遣社員などの外部の人間がコアテクノロジに触ることはできなくなります。確かにプロジェクト自体は先端技術にかかわるものなのですが……。

 芳賀さんの間違いは、中長期的な考えの基に行うべき転職を、目先のメリットのみを考えて決めてしまったことです。今回、芳賀さんの将来の目標は「プロジェクトマネージャとして責任ある仕事をする」であったことが分かりました。「幅広い分野にチャレンジし、スキルを習得したい」という思いは、この目標のためのプロセスだったのです。

 もちろん、派遣就業にもメリットはあります。就労条件や業務内容など、ある程度自分の希望に合わせて仕事を決められる点です。しかしスキルアップという意味では、上流工程の経験を積むことは比較的難しいようです。ここでいう「スキル」が製造やテスト工程などの下流工程であれば話は違ってくるのですが、プロジェクトマネージャを目指す芳賀さんが望むものは、実装工程のスキルだけではありません。

そして再び正社員を目指して

 キャリアビジョンを確認し、気持ちを新たに再び正社員での就業を目指して転職活動を始めた芳賀さん。何度か書類選考に落ちたものの、あるベンチャー系システム開発企業から面接試験のオファーが来ました。芳賀さんは入念に準備をし、面接に臨みました。

「転職する理由を教えていただけますか?」

「私は将来、プロジェクトマネージャとして責任ある仕事がしたいと考えて転職活動を始めました」

「いま派遣社員で働いているけれど、これはプロジェクトマネージャになるために必要な経験ですか?」

「派遣社員としての経験は決して無駄にはならないかと思いますが、いまのままでは責任のある仕事を任されることは難しいので、より目標に近づくために転職したいと思います」

 面接官は芳賀さんの中長期的なキャリアビジョンに基づいての転職理由に納得したようでした。数日後、最終選考の案内が届きました。

自分の価値観によって選ぶ雇用形態

 芳賀さんはその後、最終選考にも合格。派遣期間の満了を待って、新しい職場で再スタートを切る予定です。

 ITエンジニアにはさまざまなワークスタイルがあります。その1つ1つにメリット、デメリットがあって、どれが良いとか悪いとかはありません。働き方を選ぶ際に最も大事なことは、自分が何を大切にしたいかという価値観です。

 仕事を選ぶとき、希望する条件を羅列することは誰にでも容易にできます。しかし優先順位付けは、積極的には行わないようです。大事なことは転職するメリット、デメリットを考え、条件に優先順位を付けること。自分の気持ちに従って順位を付けることができたら、あとはそれに合わせて仕事を見つければよいのです。

 派遣社員として働くITエンジニアは多いですが、「働く」ということに関して何を大事にしたいのか、よく考えたうえで選択をしてください。特に上流工程の経験を積みたい場合、正社員と派遣社員では、30代になるとかなりキャリアに差が出てきます。

 それぞれの働き方のメリット、デメリットを考え、中長期のキャリアプランを立て、自分自身の価値観の定義を行うなど、転職にはコツがあります。失敗しない転職のためにも、一度キャリアコンサルタントを活用してみてはいかがでしょうか。

 

今回のインデックス
 「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント(3) (1ページ)
 「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント(3) (2ページ)

筆者プロフィール
アデコ 山口孝之
千葉県出身。大学卒業後、建設会社にて人事、経理などの管理業務を経験。その後ITエンジニアに特化したスカウト型の人材紹介会社に転職し、キャリアアドバイザー業に従事する。その後アデコに参画。キャリアアドバイザーとしては一貫してIT業界を担当。ギャップのない転職を支援するための情報収集能力、転職者側と採用企業側の両方の目線で行うカウンセリングには定評があるという。

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