自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |
「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント

第4回 「資格を取って転職」は可能?

アデコ
高野和幸
2007/4/12

資格取得で状況を変えたい

 達川さん(仮名)は、入社2年目の若手エンジニア。ネットワークの設計・構築で活躍できるITエンジニアを目指して大手機器メーカーに入社しましたが、配属されたのは自社製品のユーザーサポート業務を担当する部署。ネットワーク関連の専門的なスキルを磨くことが難しくなってしまいました。

 希望の業務ができる部署への異動をたびたび上司に申し出ましたが、「いまの部署で実績を挙げなければ可能性はない」といつも門前払い。この閉塞(へいそく)した状況を変えるために達川さんが考えたのが、資格を取得することでした。

 ただ、達川さんは入社から1年少々とまだ間がなく、会社が求めているスキルや必要なレベルが分からず、どんな資格を取得すれば一番効果があるのかで悩んでしまいました。業務で多忙なこともあり、なかなか前に進めないまま数カ月が過ぎたころ、ちょっとしたきっかけで発想の転換をすることができたのです。

 「会社に認めてもらうことを目的にすると、目的が達成できなかったときにがっかりしてしまう。それなら自分が面白そうだと思う技術に関する資格を選んだ方が、後悔しなくて済むのではないか」

 興味を持っていたジャンルは、ネットワークやサーバ、インターネットなど。とにかく興味を持てることにチャレンジすることを決め、ワクワクしながら楽しく勉強を継続できるようになった達川さんは、この日から2年間で「CCNA」「MCP」「LPIC」「SCSA(Sun認定Solarisシステム管理者)」「.com Master」「初級システムアドミニストレータ」を続けて取得することに成功しました。

「資格マニア」にされないために

 数々の成果を上司に報告したものの、やはり部署の異動は実現しませんでした。「それならば転職も視野に入れて、今後のキャリアプランを考えたいと思うのです」。私と初めて会ったとき、達川さんははっきりとした口調でそういいました。

 私は最初のうち、結果として努力が認められなかった達川さんはがっかりしている部分もあるのではと感じていました。しかし達川さんは「大手企業に所属しているだけに、やりたい仕事ができなくても、なかなか転職活動に踏み込めずにいました。しかし資格取得の勉強を通じて、ネットワーク関連の技術が好きであることを再確認できました。自分の好きな、やりたい仕事ができる環境を探し出し、スキルを磨いてキャリアアップしたいという気持ちがとても強くなりました」と、希望に満ちた顔を見せてくれたのです。

 さっそくネットワークエンジニアとして活躍できる企業を提案し、本格的に転職活動を開始することになりました。

 1つだけ、達川さんが心配していたことがありました。資格を数多く取得したことによって、資格取得だけを目的にしている、いわゆる「資格マニア」だと思われてしまうのでは、ということでした。確かに履歴書に資格名だけが羅列されていれば、そう受け取られるリスクはあります。そのことを説明した後に、私は達川さんに話しました。

 「資格は、取得することだけに意味があるのではありません。常に新しい技術に関心を持ち、意欲を持って勉強し続けることができることを証明するためのツールとして活用すれば、企業はきちんと評価してくれますよ」

 さらに、面接のときには資格のために続けた努力を具体例として活用しながら、自らの学習意欲の高さをアピールするようにアドバイスしました。

 応募の際には、達川さんのまじめで熱心な人柄、きちんと努力を継続できる学習意欲を持っていることを、資格取得実績を裏付けとして企業に伝えました。そのことが功を奏し、次々と面接のオファーがやってきました。そして面接では、達川さんがご自身の体験談を丁寧にアピールできたことで、最後には有力なネットワークベンダから内定をもらうことができたのです。

 無事転職した達川さんは、取得した資格についてこう話していました。「転職先で、取得したすべての資格が直接役立っているとはいえません。しかしいきなり畑違いの新しい業務を割り振られてもそれほど動じないのは、きっと資格の勉強で免疫ができているからだと思います」。達川さんの言葉には、やはり説得力がありました……。

資格でアピールできるもの

 2つの成功エピソードに共通しているのは、資格を取得したという事実をそれだけに終わらせず、「学習意欲の高さ」という、企業の評価ポイントにアピールできる材料として活用していることです。

 すべての資格が企業に評価されるわけではありませんが、その取得までに積み重ねた努力や成功体験、時に失敗体験は、新しい業務への取り組みにもイメージが重なります。

 一方で、資格を取れば必ずキャリアアップが成功すると考えるのは危険です。勉強に取り組む過程も含めて、自分が「何のために」努力をしようとしているのかをしっかりと整理してアピールのポイントを押さえておかないと、高額な受験料や費やした時間もコストとして、費用対効果がマイナスになってしまうケースもあるでしょう。

 プロのキャリアコンサルタントは、資格の活用方法や企業へのアピールのポイントなどをしっかりとアドバイスしながら、将来のキャリアプランを整理するお手伝いをしています。資格を取る前にも、資格を取った後にも、お気軽にご相談ください。

 

今回のインデックス
 「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント(4) (1ページ)
 「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント(4) (2ページ)

筆者プロフィール
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント 高野和幸
1974年埼玉県生まれ。大学卒業後、テレビゲーム雑誌、パソコン雑誌の編集・ライターを経て、2001年アデコに入社。通信キャリアや大手航空会社などのユーザー系システム開発企業にてスーパーバイザーとして派遣スタッフの管理を担当。幅広い年齢層のスタッフから厚い信頼を得る。現在はキャリアコンサルタントとして、SEやWebクリエイターなどIT関連職種を中心に転職希望者のサポートを行っている。日本産業カウンセラー協会認定 産業カウンセラーおよびキャリアコンサルタント。

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。