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「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント

第14回 私生活を犠牲にしなければ、成功できないの?

アデコ
高野和幸

2008/4/3

数年前と比較すれば、転職は身近なものになってきている。だからこそ気を付けたい「転職でキャリアアップ」の思い込みについて、「ウソ・ホント」の視点で考えてみたい。

ITエンジニアを続ける限り、私生活の充実はムリ?

 日々転職の相談を受ける中では、女性のITエンジニアに会う機会も多くあります。女性のITエンジニアからは、「仕事と私生活のバランス」について相談をいただくことが比較的多いように感じます。

 私は、ITエンジニアという職業は、女性がキャリアを考えるうえでも素晴らしいものだと思っています。将来にわたっての核となるスキルを得ることができるため、もし出産や育児などで仕事を離れる期間があったとしても、評価を落とすことなく職場復帰することができます。技術の陳腐化が継続的な自己学習によって予防できることも、メリットの1つだと思います。

 しかし相談を受けていると、女性にとってIT業界はまだまだ働きやすい環境とはいえないかもしれないと感じます。恒常的に長い労働時間、時には深夜にも及ぶ業務は、体力的に大きな負担となっているだけでなく、私生活とのバランスを保つことの大きな障害となっているようです。プロジェクトマネージャやスペシャリストへステップアップしたいと考えれば、さらに多くの負担が掛かることもあります。

 「ITエンジニアを続け、キャリアアップを考えている限り、私生活は大切にできない」と考えている方も多く、「ITエンジニアを辞めて、別の職業に就きたい」との相談も少なくない状況……。

 本当に、ITエンジニアとしてキャリアアップを目指すこと、充実した私生活を送ることは、どちらか片方しか手に入れられないものなのでしょうか? 今回はある女性エンジニアのケースを基に、この疑問へのヒントを見いだしたいと思います。

激務に負けず前進あるのみ!

 松下さん(仮名)は26歳の女性エンジニア。家政系の短大を卒業後、「カタカナ職業」にあこがれて、社員数50人ほど、3〜4次請けのプロジェクトを中心に扱うシステム開発会社にITエンジニアとして入社しました。

 入社当初はパソコンでさえほとんど触ったことのないIT素人でしたが、業務に真剣に取り組むほどに、しっかりと技術を身に付けられるITエンジニアという職業に魅せられ、6年間でサブリーダーを任されるまでに成長しました。

 松下さんの会社には、松下さん以外の女性エンジニアは1人もいませんでした。一度だけ、年上の女性エンジニアが中途入社したことがありましたが、あまりの仕事の厳しさにわずか2カ月で退職してしまったのです。

 会社が請け負ってくるプロジェクトの業務環境はどれも、お世辞にも良いとはいえず、松下さんも毎月100時間近い残業が当たり前の状態。クライアントの都合で開発スケジュールが大幅に変更になったときなど、1週間自宅に戻れなかったこともありましたが、松下さんはそんな状況もまったく苦にせず、仕事をめいっぱい楽しんでいました。

 前向きで明るく働く姿勢は、クライアントからも高い評価を受けることとなり、松下さんの会社で初めてプロジェクトリーダーを任せられることに。目標としていた「社長賞」も獲得し、ますます仕事に打ち込むようになっていきました。

結婚を意識。募る不安

 そんな松下さんに、ある日運命的な出来事が起こります。

 トラブル対応で食事の約束をドタキャンしてしまうことも少なくなかった松下さん。ある日友人に、その埋め合わせとして強制的に合コンへ参加させられることに。しぶしぶ足を運んだその会で、松下さんはある男性と意気投合。そのままお付き合いすることになりました。

 忙しい業務の合間を見つけてお付き合いを続ける中、ドタキャンが続いても「無理しないでね」と体調を気遣ってくれる優しさに心引かれ、松下さんはいつしか彼との結婚を意識するようになったのです。

 しかし、結婚について真剣に考えるようになると同時に、松下さんの心に不安が芽生えます。彼はIT業界とは無縁の地方公務員。もし結婚をしたなら2人での生活も十分に楽しみたいのに、まったく仕事の時間帯がかみ合わず、ほとんど顔を合わせない生活になってしまうことに気付いたのです。

 そして近い将来、もし子どもができたら……。現在のペースで業務を続けながら出産・育児をする自分がまったくイメージできないことに、松下さんは非常に大きなショックを受けました。

 松下さんは就職前から、将来結婚したら出産や育児を経験したいと考えていました。しかしITエンジニアとして業務に没頭している間、そのことを意識する機会はありませんでした。

 会社の同僚に相談してみたものの、不安を振り払えるような回答は得られませんでした。反対に「仕事と私生活、どちらかをあきらめるしかない」との意見が多く、以前中途入社した既婚の女性エンジニアが「私生活とのバランスが取れない」との理由で退職したことも思い出し、さらに悩みは深まるばかり……。

 松下さんが私の元に相談に訪れたのは、そんなときのことだったのです。

「どちらかをあきらめる」という考え方はやめよう  

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