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なぜ、彼らは転職を考えたのか

第2回 システムの一部しか見えない環境にいたくない

アデコ
山口孝之
2007/6/13

松田さんが転職に求めていたものは

 再転職を望む松田さんがここで確認しなければならないこと、それは社内SEを希望したそもそもの理由です。私は松田さんに問い掛けました。

山口(筆者) 松田さん、社内SEを希望されていた理由をもう一度思い出してくださいますか。

松田 はい、社内SEを希望した理由ですか……。情報システム全体を俯瞰(ふかん)したかったからです。前職では部分的にしか見えなかったもので。

山口 そういった意味では、いまのポジションはユーザー側ですから、全体を把握しやすいのではないですか。

松田 はい、そのとおりですが、運用となるとあまりやりがいが持てないんです。しかも技術からは遠ざかって事務的な仕事が増えましたし……。

山口 そうすると社内SEに限定して転職をする必要はないのではないでしょうか。

松田 えっ、またシステム開発の会社に?

 私は前述のような社内SEの仕事内容について説明し、松田さんにきちんと理解してもらいました。そのうえであらためて、「情報システム導入の全体を俯瞰できる仕事」という意味でSI企業への転職を提案しました。

山口  松田さんが希望されている仕事は、社内情報システム部門でないと実現できないものではないと思います。情報システムの企画開発に一段高いポジションでかかわりたい、そういう意味では、運用が多いユーザー側よりSI企業の側に多くチャンスがあるのではないでしょうか。

松田 そうですね、前の会社の仕事は大手企業からの下請けがほとんどで、システムの全体感がつかめなかったし、つかむ必要もなかったように思えます。でも元請けのSI企業ならシステム全体を把握して仕事ができる。ぜひチャレンジしたいです。いまならそう思えますよ!

1年ぶりの転職活動、そして内定

 こうして再び転職活動を始めた松田さんは、大手SI企業数社にアプローチ。転職後わずか1年での再転職で難航するかと思った書類選考は、思いのほか首尾よく進みました。短い期間とはいえユーザー側で仕事をした経験も、とても好意的に受け取られたようでした。そして松田さんは、意中の会社から採用内定を獲得することができたのです。

 私は松田さんに、内定をもらった会社のSEマネージャとオファー内容に関する打ち合わせを行うことを勧めました。松田さんのやりたい仕事の内容や将来へのキャリアビジョンなどを伝えることで、入社後のギャップを回避するためです。

 企業側は快く対応してくれました。未来の上司は松田さんの話を聞き、会社の事業方針や業務内容、社内でのキャリアパスを考慮したうえで、「ぜひ一緒に頑張りましょう」と温かい言葉をかけてくれたようです。松田さんの心から、転職に関する不安が一掃された瞬間でした。

転職をする本当の理由をよく考えよう

 転職では、最初と最後が肝心です。転職先を決める最後の意思決定が重要であることは、皆さんよく分かっているかと思います。しかし、転職活動を始めるときに「なぜ転職するのか」「何を解決するための転職なのか」をはっきりさせることも、最後の意思決定と同じくらいに重要なのです。

 今回紹介した松田さんは、一度の失敗を経て夢をかなえることができました。でも、失敗の中身によっては再起ができない可能性もあります。

 転職を思い立ったときこそ冷静に、よく考えて物事の本質を見極めるべきです。間違いのない転職のために、一度人材紹介会社のサービスを利用してみてはいかがでしょう。客観的に転職のテーマを浮き彫りにするお手伝いができると思います。

 

今回のインデックス
 なぜ、彼らは転職を考えたのか(2) (1ページ)
 なぜ、彼らは転職を考えたのか(2) (2ページ)

筆者プロフィール
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント
山口孝之

千葉県出身。大学卒業後、建設会社にて人事、経理などの管理業務を経験。その後ITエンジニアに特化したスカウト型の人材紹介会社に転職し、キャリアアドバイザー業に従事する。その後アデコに参画し現在に至る。キャリアアドバイザーとしては一貫してIT業界、インターネット業界を担当。ギャップのない転職を支援するための情報収集能力、転職者側と採用企業側の両方の目線で行うカウンセリングには定評があるという。

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