第3回 急な異動命令! そのとき……
■強みと課題は何ですか?
転職活動をサポートするに当たって、まず私はこれらのポイントを木戸さんとともに洗い出しました。次に木戸さんの強み・現在の課題を確認しました。
1.木戸さんの強みを確認
木戸さんと話し合ったところ、次のようなことを強みとして挙げられました。
- 金融(特に証券系)業界の業務知識
- 上流工程から運用までの経験
- マネジメント経験
- ユーザーに受け入れられやすい人柄
採用者側は木戸さんの年齢から、プロジェクトを回す力(マネジメント経験・業務知識)を最も重要視すると予想されます。企業が期待するポイントを、木戸さん自身がアピールポイントとして把握することは大事ですね。
2.木戸さんの課題を確認
「木戸さん、ご自身の課題は何だとお考えですか?」。このように聞いたところ、木戸さんは「やはり、オープン系の経験が少ないことですかね……」といいました。しかし私は「そのことは、ある意味小さいと思いますよ。一番の課題は、柔軟性が足りなかったことではないですか」と答えました。
確かに現在、業界ではオープン系が主流ではあります。しかし採用者側は、ただ単に経験してきた環境だけで判断をするわけではありません。先ほども述べたとおり、木戸さんの強みである業務・業界知識、マネジメントスキルも重視する傾向にあります。
木戸さんはこの点、考え方に柔軟性が足りなかったということになると思います。
私は木戸さんに、わずかな情報だけで「ここではできない」「あきらめる」「これではない」と判断するのではなく、視野を広く持って情報把握と検証をすること、現に多数のメインフレーム経験者の転職成功事例があることを話しました。
木戸さん自身、少々固執しすぎて視野が狭くなる傾向にある性格を振り返り、このことを課題としてきちんと認識してくれました。
■そして転職に成功
もう1つ考えなければならないことに、待遇面の希望がありました。前職では経験が12年目になっていた木戸さんは、業界水準より多い収入を得ていました。
話し合いをしたところ、木戸さんの転職活動における優先ポイントは「仕事内容」なので、「大幅な減額でなければOKです。この点も柔軟に考えます」とのことでした。
ちなみに年収提示については、例えば求人票に上限金額があっても、優秀な人材ならば企業もあらためて年収を検討する時代です(もちろん法外な要求ではなく、増額の根拠が明確なことが前提となりますが)。
以上のことから、私は木戸さんの強みを念頭に、SIerを中心とした複数の企業を紹介しました。木戸さんの活動は今度は順調に進み、金融業界・上流工程に強みを持っている準大手SIerから内定を得ることができました。年収面についても、的確なアピールと人柄で前職を多少上回る提示を受けました。
この木戸さんのケースからも分かるように、急な異動命令を受けた場合も、転職活動においても、あわてたり思い込みで行動したりではなく、適切な判断・対応をすることが大事だと思います。特に異動は、最初は「嫌だな」と思うようなことが、場合によっては大きなチャンスになることもあるのです。
もし判断がつかず、困ったなと思ったときには、信頼できる方やわれわれコンサルタントにご相談ください。
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筆者プロフィール |
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント 福間啓文 1969年生まれ、大阪府出身。私立理系大学卒業後、精密機器メーカーにてソリューション提案営業を経験し、2000年にアデコへ入社。現在、IT系人材・ITエンジニアを専門にキャリアコンサルティングを担当。営業としての観点とキャリアコンサルタントとしての経験から、1人1人のニーズをくみ取り、的確な情報提供・アドバイスをすることを念頭に転職支援を行っている。CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格取得。 |
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