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なぜ、彼らは転職を考えたのか

第5回 社長、もうついていけません……

アデコ
高野和幸

2007/9/26

「ネガティブ転職は悪」なんて、誰が決めたの?

 小塚さんとの面談では、「なぜネガティブ転職はダメなのか」というテーマが中心になりました。

小塚 ネガティブな理由で転職すると、それが癖になってしまって、ちょっと気に入らないことがあると、またすぐに退職したくなってしまうからだと思っていました。

高野(筆者) 皆多かれ少なかれ、いま働いている企業や組織に対して不満があると思います。すべての不満をなくすことが目的になってしまうと、確かに転職を繰り返すことになるでしょうね。

小塚 やっぱり、ネガティブな理由での転職は避けた方がいいんですね……。

高野 それは違うと思います。自分自身が大切にしたい、仕事に求める価値が実現できているなら、多少の不満があってもその仕事は続けた方がいいでしょう。でも、仕事をする意味を得られないのであれば、続けること自体がリスクになってしまいます。

小塚 えっ、続けることもリスクになるんですか?

 私は、「社長の個性」という小塚さんの努力ではどうにもできない問題が原因で、小塚さんが一番大切にしたかったキャリアアップへの意欲が奪われてしまっている点を指摘しました。

 無理をして長く働き続けても状況が好転する見込みが低く、後からやはり転職をしなくてはいけなくなる場合を考えれば、いまの仕事にかけている時間は「もったいない時間」になってしまうと思ったからです。

高野 重要なのは、転職した先の企業で頑張れるよう、できる限りの準備をすること。ネガティブな理由も、次の会社で頑張るためのエンジンとして利用したらいいんですよ。

小塚 それであれば私は相当、高性能なエンジンを手に入れたと思います(笑)。でも、面接のときに転職理由を質問されたら、やっぱりネガティブなことを話すのは良くないんですよね?

高野 確かにそれは避けた方がいいと思います。口にした不満が、面接を受けている企業でもあり得ることだとすれば、入社をしてもまたすぐに退職してしまう人だと判断されてしまうかもしれませんので。不満は心の中のエンジンにしておいて、転職活動はポジティブに進めるのが成功の秘けつだと思います。

小塚 キャリアアップを目指したい、そのために最適な環境を見つけたいというのはずっと変わらない目標です。ポジティブな目標もちゃんと大切にしていれば、ただのネガティブ転職にはならないんですね。

 このやりとりを通じて、小塚さんの手の中に、転職という選択肢が戻ってきました。

小塚さんの大胆な戦略

 小塚さんの転職活動は、スタートから意外な展開を見せました。

 前回の転職から短期間での活動となることに不安を感じていた様子から、私は小塚さんが以前に所属していたシステム開発会社と同様の規模の企業を中心に提案しました。しかし小塚さんからは、もっと規模の大きい、大手から準大手に該当する企業にチャレンジしてみたいとの逆提案があったのです。

 「面接の場で『いまの会社では規模が小さすぎる、もっと大きな仕事がしたいんです』といえたら、私自身がすごくポジティブに話ができるような気がするんです。そのためには本当に大きい会社でないと……」

 小塚さんのネガティブなエンジンが、突然ポジティブなジェットエンジンにバージョンアップした瞬間でした。険しい道のりだとは感じましたが、まずは一緒に乗ってみようと私は思い、名のある企業にどんどんチャレンジしてみる戦略へと変更しました。

 初めのうち、結果は散々なもので、書類選考すら通過しないことがほとんどでした。しかし小塚さんは決してへこたれることなく、前向きな気持ちで転職活動を継続してくれました。

 すると、20社を超える応募企業の中で1社だけ、スキルはまだまだとしながらも、小塚さんの成長意欲を高く評価してくれる企業が現れたのです。従業員数は現職の50倍にもなります。

 小塚さんは、みごとその企業からの内定を獲得。現在、レベルの高い業務に追いついていくのに四苦八苦しながらも、充実した楽しい日々を送っています。

肝心なのは、ネガティブ転職の「その先」

 小塚さんは、ネガティブな理由でスタートした転職活動を、ポジティブな転職へとつなげることに成功しました。

 この例からも分かるように、肝心なのは、転職に至ったきっかけが何であれ、そこから自分の目標を実現する推進力を得られるようにすることだと思います。

 そのためには、冷静な気持ちで現在の環境を客観的に分析し、自分の求める目標は実現できそうなのか、これから先の見通しはどうか、自分の力でできることはないか、そして転職した方がいいのか、手持ちの選択肢をじっくりと検討してみることです。

 もし、1人で整理するのが難しいようなら、ぜひプロのキャリアコンサルタントを利用してみてください。きっと新しい可能性を見いだすお手伝いができると思います。

 

今回のインデックス
 社長、もうついていけません…… (小塚さん、我慢の限界)
 社長、もうついていけません…… (ネガティブな理由をポジティブな力に)

筆者プロフィール
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント
高野和幸

1974年埼玉県生まれ。大学卒業後、テレビゲーム雑誌、パソコン雑誌の編集・ライターを経て、2001年アデコに入社。スーパーバイザーとして、通信キャリアや大手航空会社のユーザー系システム開発企業にて派遣スタッフの管理を担当し、厚い信頼を得る。現在はキャリアコンサルタントとして、IT関連職種を中心に転職希望者のサポートを行っている。日本産業カウンセラー協会認定 産業カウンセラー、日本産業カウンセラー協会認定 キャリアコンサルタント資格取得。

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