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ネット企業への転職人気、その事情とは?

アイ・アム 稲田敦司
2006/6/21

転職市場では、ネット企業の人気が高いという。それはなぜだろうか。キャリアコンサルタントが、その人気の背景を解説しよう。

最近転職で人気のネット企業

 キャリアコンサルタントが転職希望者の転職をサポートするうえで重要視する点の1つが、転職希望者が現在所属する会社の現状をヒアリングし、転職するメリットがご本人にあるかどうかを判断することです。客観的に見れば、すでに転職をしてその人にとっていい会社に移っている人もいらっしゃいますし、現在の会社に残った方がいいという人もいらっしゃいます。

 キャリアコンサルタントが具体的な転職のご提案をする場合、方向は大きく4つに分かれます。1つ目は、同じIT業界の中で先を見据えたキャリア構築が可能な企業への転職をご紹介する場合です。2つ目は、ネット業界への転職をご紹介する場合です。3つ目は、事業会社でのIT企画や社内SEとしての転職をご紹介する場合です。そして4つ目は、IT業界を離れてのキャリアチェンジのご提案です。

 この中で最近増えているのが、ネット企業への転職のご提案です。

人気の秘密は?

 なぜでしょうか。ネット企業(多くはベンチャー)へ転職する最大の魅力は、最新技術に携わりやすいということにあります。大量のトランザクションを扱うネット企業は、それに対応するサーバやネットワークへのIT投資が見込まれること、セキュリティに関してもその強化に最新技術が必要とされています。さらにネットベンチャーでの業務は、ITエンジニアにその成果が見えやすいという点も魅力です。そのほかにも、ネット業界自体が急成長を続けている、ということもあります。

 ITエンジニアの仕事上の不満としてよく聞かれるのが、大きなシステムでは自分の作っているものの全体像が見えにくく、結果としてどのようにシステムが動いているか自覚しづらい、というものです。

 例えば大手企業でSEとして従事していると、「ヒト・モノ・カネ・情報」のほんの一部分にしか携わることができません。人を動かすためのスキルや予算管理のノウハウなどは、ITエンジニアには蓄積しにくい環境です。

 ところがネット企業では、費用対効果を考えつつ、自分が設計・開発したシステムを稼働させます。そのため、自らの仕事の成果を身近に感じることができます。顧客指向の開発が実現できるなど、ITエンジニアが学べる部分が多いという利点があります。

高まるネット業界への転職ニーズ

 ネット業界の求人ニーズは非常に増えています。実際には、転職者数以上に求人ニーズの伸びが大きいのが現状です。求人ニーズは、個人的な感覚値ですが、2年前と比較するとおよそ1.5倍にも達しています。そして、ただ求人が増加しているだけでなく、求人職種も増えているのです。

 ひとくくりにITエンジニアといっても、サーバやネットワークなどの基盤系、Javaなどを使った開発エンジニア、ITをベースにしたIT企画などさまざまな職種があり、それらに対する求人ニーズが軒並み拡大しています。

 転職希望者にも変化があります。ネット業界の情報を希望する方が増えているのです。そしてそういう情報を希望される転職希望者を中心に、ネット企業は従来のIT企業(SIerなど)とは別のカテゴリ、ジャンルの企業であるとする認識が広がっているようなのです。

IT企業とネット企業の違い

 では、従来のIT企業とネット企業では、何が違うのでしょうか。ネット企業と従来のIT企業の最大の違いは、開発スピードと手法です。最も驚く点は、ネット系企業では詳細な設計書がないまま開発をするケースが多いことです。一般のIT企業は設計書の作成段階(いわゆる上流工程)で数カ月費やすことがあるのに対して、ネット企業ではプロトタイプを作成し、そのまま設計書として利用することがあります。そのため開発スピードは格段に早くなります。

 従ってネット業界への転職を考える場合、個人の資質として柔軟性、スピード感、セルフスターター(自分から動ける)、という要素が重要となります。特にセルフスターターについては、独自に思考して行動し、結果を出すことが要求されるネット業界では特に重視されます。逆にいえば、ビジネスパーソンとしての人間力を高めたいと考えている人、また早い段階でのステップアップを目指す人にとっては、非常にメリットのある職場環境だといえます。

IT企業とネット企業で働く人の違いは?

 転職の相談を受ける立場として私が感じるのは、IT業界の人とネット業界の人では、転職に対するモチベーションや考え方に違いがあるということです。

 例えば、ネット業界で働いている人の転職観は、夢を持ち、さらなるステップアップを目指すポジティブな転職を、と考えている人が多いように感じます。

 それに対して従来のIT企業に勤めている人の転職観は、将来の年収に対する不安や、頭打ち状態の組織の中でのポジションへの不安、開発の全体像が見えにくいルーティンな仕事内容に対する不満など、あまりポジティブとはいえないような要素が見られることも多いのです。

ネット企業への転職を成功させるには

 今後ネット業界の果たす役割はますます大きくなっていくでしょう。中でも通信との融合、モバイルとの融合など、将来、身近に活用される技術としてもネット業界は大いに期待されています。IT業界がまだまだレガシーシステムのメンテナンス需要が残る中で、最新技術を学びたいと望むITエンジニアにとって、ネット業界は確実にそれに携れる環境があります。

 ネット業界のITエンジニア需要は拡大の一途をたどり、その門戸は大きく開かれています。技術や経験を問わず、幅広い職種の採用枠を設けている企業も少なくありません。転職を考えていらっしゃる方で、上記の要件のいくつかを満たしているならば、ネット業界への転職を1つの可能性として考慮する意義は大きいと思います。

 いずれにせよ、転職はキャリアプランだけでなく、ライフプランにも大きく影響します。それだけに、中・長期的な視野でポジティブに転職をとらえることが必要でしょう。

 最後に、私なりに分析したネット業界への転職に関する適性要件を挙げておきたいと思います。

●ネット系企業に向いている人

  • このままIT業界(開発)を続けるつもりはないが、IT(いままでの経験)を生かして転職したい
  • 起業に興味がある
  • 企画力を身に付けたい
  • 成長意欲が高い
  • 仕事にスピード感がある
  • 基本的なコミュニケーション能力を持っている

●要求される技術

  • インフラ、多少でもLinux、UNIX、Javaなどの経験がある
  • 多少でもPHP、C、Perlの経験がある
筆者プロフィール

アイ・アム 稲田敦司:SEで8年、人材紹介業で8年の業務経験を生かし、IT・ネット業界を中心にこれまでに約3000人の転職をサポート。求人企業の社風や職場環境、上司や同僚の人柄など、一般には公開されていない情報を提供。親身なコンサルティングに定評がある。


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