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加山恵美
2006/7/5

転職の意向は高まっている

 転職意向の調査結果を見てみよう。近い将来の転職を考えている割合は、2002年では「3カ月以内には転職する予定」8.2%と「近い将来転職する予定」17.1%を合わせて25.3%にとどまっていた(図3)。しかし2006年では「現在、転職活動中である」5.9%、「半年以内の転職を考えている」4.0%、「1年以内の転職を考えている」4.4%、「時期は未定だが、近い将来の転職を考えている」22.5%を合わせると36.8%となり、全体の3分の1強まで増加している(図4)。エンジニアの流動性は確実に高まっているといえる。

 また予定はないが「いつかは」または「良い話があれば」と答える人は両調査ともに半数ほどいる。終身雇用的な考えを持つ人は減り、常に意識のどこかで転職の可能性を考えている人が増えているようだ。

図3 今後の転職意向(2002年読者調査レポートより[N=392])
図4 転職意向(ITエンジニアの転職意識レポート 2006年度版より[N=964])

転職先選定は年収優先だが

 2006年の調査のみではあるが、就職先選定時に重視する点についての結果はどうだろうか。最も多いのが「現在よりも給与/年収が高い」で、50.6%と約半数が選んでいる(図5)。だが半数とはむしろ少ないといえないだろうか。これを選ばないということは収入の増加を必須要件としないということであり、選んでいない半数は金銭面はあきらめてでもほかに重視する点があるとも考えられる。

 ではほかに重視することは何か。2番目に多いのが「自分の能力/適性を生かした仕事ができる」44.1%である。これはエンジニアらしい結果だ。それ以降の選択肢は幅広く選ばれている。会社のビジョン、家庭との両立、スキルアップの機会、優れたエンジニアの存在、能力評価の公平さなど、着目点はまったく異なる。転職先に求めるものは十人十色ということなのだろう。働くことについての価値観や優先事項の違いが表れている。

図5 転職先選定時の重視点(ITエンジニアの転職意識レポート 2006年度版より[複数回答、N=964])

会社に所属しない理由

 さらに2006年の調査では、派遣/フリーランスエンジニアに対し、この就業形態を選んでいる理由について聞いている。派遣/フリーランスエンジニアは回答者全体の7.3%であり1割に満たないが、着実に増えてきている就業形態である。

 理由は均等に分かれた。最も多かったのは「時間が自由になるから」21.4%である(図6)。多くの理由に共通しているのは自由度の高さであり、会社員では得られない何かを求めているようだが、自由、経験、収入、技術など、各人重視することは異なるようだ。

図6 派遣/フリーランスエンジニアという就業形態を選んでいる理由(ITエンジニアの転職意識レポート 2006年度版より[N=70])

 中には「会社が倒産したから」と回答する人もいる。やむを得ず暫定的に派遣/フリーランスエンジニアの道を選ぶ人がいるのも確かだ。だが大半は何らかの理由を持って自発的に選んでいる。将来的に派遣/フリーランスエンジニアがどれだけ増加するのかはまだ不透明であるが、今回の調査からすれば、就業形態として珍しいものではなくなりつつあるのかもしれない。

不安は客観的に分析することから

 これらの調査結果からは、4年前に比べて減少しているとはいえ、不安を感じながら働くエンジニアの姿が見えてくる。彼らの不安や危機感について知り、何に目を向けているのかを見ると、それぞれが真剣に自分自身に向き合う姿がうかがえる。

 エンジニアとして働き続けるためには、常にスキルを磨いていく必要がある。このことは不安や危機感を伴うが、乗り越え続けなくてはならない壁でもある。調査結果からは、そうした課題に日々取り組み、前進しようと努力する誠実なエンジニアが多いことがあらためて分かったように思う。

 時には気分転換も必要だ。だが不安について考えるなら、客観的に分析することが大事だ。何が不安や危機感の原因なのかを自分なりに分析することが、克服への第一歩となるだろう。

 何を克服すべきかが分かれば、解決策を考えることができる。いくつかの策の中から何を選んで専念するかは、自分の戦略次第だ。具体的な目標や指標が見つかれば、前進しているのか後退しているのか分かる。そうすると不安は漠然としたものではなくなり、いつか克服することもできる。

 克服した先に新たな課題が生まれることもあるが、1つ1つ課題を克服して前進を続ければきっと自信にもつながるだろう。不安や危機感とはうまく向き合ってほしいと思う。

 

今回のインデックス
 エンジニアの危機感は自分のスキルに (1ページ)
 エンジニアの危機感は自分のスキルに (2ページ)

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