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加山恵美
2006/4/21

将来を見通し、自らやる気を沸き立たせることができる「セルフモチベーテッド エンジニア」であり続けるためにはどうしたらいいか。その答えを探るため、稚内北星学園大学・東京サテライト校では「ITエンジニア コンピテンシ開発法・概論」が開催され、講師はアイティメディア代表取締役会長 藤村厚夫氏が務めている。今回はNTX 代表取締役 野口和裕氏がゲストとして登壇し、フリーランスのITエンジニア経験から得た考えを語った。

ITエンジニアの雇用形態の現在と未来

 講義で話す野口氏はとても快活だ。人生や仕事を前向きに楽しんでいる様子がひしひしと伝わってくる。そんな野口氏のモットーは「成功は失敗のかなたに」だそうだ。本当の成功とは失敗を数多く経験した先にあるという。今回、野口氏が語ったのは「働くうえで大切なこと」である。将来独立するかどうかに関係なく、触発される何かがあった。

 講義の冒頭、@IT自分戦略研究所の読者調査から興味深いデータ「@IT読者に見る就労観のいまと将来」が提示された。アンケートによる現在の雇用形態と今後希望する雇用形態を比較したものだ。

図 @IT読者に見る就労観のいまと将来(「@IT自分戦略研究所 読者調査結果」2005年4月より  n=504)

 現在の雇用形態は、「一般社員」が全体の71.9%で突出している。だが、今後一般社員を希望する人となると41.8%まで下がる。現在一般社員として働くITエンジニアの半数弱が、将来は一般社員以外として働くことを希望していることが分かる。

 ではITエンジニアは、将来はどう働きたいと考えているのか。現在と比べて今後の希望の方が増えている雇用形態を見ると、「経営者(10ポイント増)」や「管理職(14.3ポイント増)」がある。将来の選択肢としてはこのあたりが順当なところだろう。

 「フリーランス/個人事業主」はどうだろうか。現在が5.6%、今後の希望が13.1%で、その差は7.5ポイント。ほかの形態と比べて数は多くないが、今後希望する人が現在の倍になっている。実数を推測すると、現在フリーランス/個人事業主として働いている人が約9.4万人、将来その道に進みたいと考えている人は約22万人と考えられる(@ITの月間ユニークユーザーが約240万人、うちITエンジニアが約70%として算出した)。

フリーランスへの志向と壁

 こうした調査からも、フリーランスのITエンジニアとして働くという道は、将来の選択肢の1つとして十分に現実味があるといえる。誰でも一度くらいは、フリーランスという形態を考えてみたことがあるのではないだろうか。

 講師の藤村氏は、需要と供給の両側からITエンジニアの就業構造を分析した。まず需要(雇用)側には非直用(直接雇用しない)志向があるという。ITエンジニアにはスキルが必要だが、育成は困難である。特にITを本業としない企業では、IT要員のキャリアプランをつくるのも難しい。そのため業務分析など上流の部分だけを社員に任せ、実働部隊は外部から調達したいと考える企業が多いようだ。

NTX 代表取締役 野口和裕氏

 逆に供給(被雇用)側には、直用(直接雇用)志向と独立志向が混在している。「会社に雇われることで安定を得たい」と考える人はまだまだ多い。だが会社が提供する業務のみに従事することに対して、懸念や抵抗も少なからずあるようだ。安定と自由との間で揺らぐITエンジニアの独立志向は「潜在的に高い」と藤村氏は考える。

 しかし、一般社員という殻を破り、独立を果たすことは容易ではない。藤村氏は「会社を超えた枠組みで『(ITエンジニアの)評価』を客観視する仕組みがない」という。確かな技術を持つITエンジニアがいるとして、その技術を客観的にどう証明するか、どう信用を得るかという問題である。金銭面の問題もある。端的にいえば「独立して収入は確保できるか」ということだ。

 こうした問題は、独立を考えるITエンジニアなら誰でも気になるところだろう。フリーランスはハイリスク・ハイリターンである。経営状況は個人事業主ごとに千差万別であり、当事者の努力と運次第である。

野口氏に10の質問

 だが、悩んでいてもきりがないことではある。ここで、実際に独立を果たした野口氏に藤村氏が「独断と偏見による10の質問」を投げ掛け、簡単にマル/バツで回答してもらった。

こんなヒトは「独立自営エンジニア」を検討すべき……か!?

Q:技術者としての能力を今後も極めていきたい
A:マル。

Q:信頼できる顧客とプロジェクトに絞って仕事をしたい
A:マル。(できるなら)いいですね。

Q:自分の腕なら食っていけるという自信がある
A:マル。自信があるのですからマルです。

Q:カネ勘定に異常に自信がある
A:マル。

Q:9時〜5時仕事、事務仕事が苦手だ
A:マル。二重マルですね。

Q:「独立したら仕事を出すから」と顧客に勧められている
A:マル。顧客から勧められるなんて相当なことですよ。

Q:扶養家族をめいっぱい抱えている
A:マル。自分の人生ですから。自分が思う以上に、意外とやっていけるものです。

Q:自分のコミュニケーション能力に自信がない
A:マル。コミュニケーションが苦手でも、ほかに自信があればいいです。

Q:「開発部長」や「アーキテクト」とかいう肩書きに魅力を感じる
A:マル。独立したらこうした肩書きを飛び越えて、一気に「社長」ですから。

Q:実はITが嫌いだ
A:マル。嫌いなことをしているくらいなら、独立して好きなことをすればいいんです。

 なんと、野口氏はすべての質問に「マル」と答え、独立を推奨した。冗談のようだと会場には笑いが起こった。これも野口氏の前向きなところだろう。講義のテーマが独立エンジニアだからといって、無理にこじつけたわけでもないようだ。

 野口氏の回答は、「いま社員で満足しているから独立したくない」というなら無理に独立する必要はないが、独立を考えているならどんなことも前向きに考えていいということのようだ。こうした楽観的な姿勢がないと、なかなか独立には踏み切れないのかもしれない。

   

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