第10回 横田聡――ブログから始まった巨大コミュニティ「FxUG」
岑康貴(@IT自分戦略研究所)
2009/2/19
■日本中で勉強会
FxUGは、日本中で勉強会を開催している。
「コミュニティって、そもそも地域に根ざしたものですよね。だから、地方でやりたい人がいれば、支援しましょうという姿勢でいます」
最初の1年は毎回、横田氏が勉強会でスピーカーを務めていたという。だが、2年目以降は交代制とし、たまにライトニングトークをする程度となった。毎回、半数以上は新しい人が参加しているという。
地方でも勉強会を開催したい、という声が上がった場合、手を挙げた人が主催者となる。FxUGとしては、勉強会開催のノウハウの共有や、アドビシステムズ(Flexの発売元)の協力を得るための調整などを行う。「地方自治」のような運営スタイルによって、日本中にFxUG勉強会が広まった。
■人を集めるのは技術
「現場で実務をやるときと、経営者のときと、コミュニティのときで、自分の中ではスイッチを軽く切り替えている感じ」
横田氏は自身の切り分けについて、そう語る。経営者とコミュニティ代表を両立させている。そして、そこに「無理」は生じていない。
ここまでの話で推測できると思うが、FxUGは完全なバザールモデルで運営されている。そのため横田氏は現在、それほど多くの時間をFxUGに割いているわけではない。
「そもそも、何かを仕掛けるということをしていません。Webサイトをしっかり作っておいたくらいですかね。まずフォーラムありきで、あとは最新トピックが一覧できるように工夫したくらいです」
それにもかかわらず、ここまでコミュニティが広がった要因は何なのだろうか。横田氏は「アドビさんが頑張ってFlexを作ってくれたからですよ」と笑う。
「人を集めるのは、コミュニティではなく、技術です。技術が面白ければ人は集まるんです」
■コミュニティでは他人の立場を疑似体験できる
FxUGの今後について、横田氏は「新陳代謝が起きていくのでは」と語る。
「最初からいた人たちは飽きてくるんじゃないでしょうか。一方で、Flexを始める人は増えていく。そういう人にとって、始めやすい環境をつくるのがFxUGの役目だと思います。そうして、人が入れ替わっていくのだと思います」
常に新しい人を受け入れようとするFxUG。横田氏にとってコミュニティとはどんな存在なのだろうか。
「ゆるく、新しい技術を語れる場」
横田氏は「エンジニアは外に出るといい出会いがあるとよくいうけれど、本当にそう思います」と語る。いろいろな立場の人と出会うことができ、相手の立ち位置を疑似体験できるのが大きなメリットの1つだという。
「例えばFlex勉強会だと、プログラマやエンジニアだけではなく、デザイナーや、ユーザー企業の人もたくさん参加します。自分とは違う立場の人たちと、仕事抜きで付き合える。話をして、まるで相手の会社にちょっと入ったような感覚が得られます」
それが巡り巡って、自身の本業に影響を与える。
「それに、コミュニティ自体は企業色を出さないようにしていますが、結果としてそこから仕事が始まることもある。特に地方では、仕事を依頼したいユーザー企業と仕事をしたいデベロッパが出会って、マッチングが行われています。もちろん、みんなそれが目的というわけではないのですが」
会社の垣根を越えるのは良いこと、と横田氏は断言する。技術者であり、社長であり、コミュニティ代表でもある彼は、コミュニティ運営を無理することなく行い、コミュニティの良い部分を存分に享受しているのだ。
そして、今日も誰かがMLでFlexの質問を投げ掛け、今週末も日本のどこかでFlex勉強会が開催される。
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