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第7回 XPJUG――居心地の良い「ゆるさ」

岑康貴
2008/11/25

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XP-jpからXPJUGへ

 彼らは普段、どんな業務に従事しているのか。天野氏はソフトウェア開発現場の業務改善コンサルティングを、安井氏はアジャイル開発のコーチやコンサルタント、実際の開発業務に加えて、セミナーで技術系の教育を行っているという。

 
XPJUGスタッフ 天野勝氏
 

 XPJUGは、XP-jpというメーリングリストが元になっている。このメーリングリストのメンバーがオフラインで活動し始めたところから、XPJUGというコミュニティが発足した。

 その始まりは2001年。エクストリーム・プログラミングの考案者であるケント・ベック氏と、アジャイルソフトウェア開発分野の重要人物マーティン・ファウラー氏の来日イベントがXPJUGの最初の活動だった。テクノロジックアートの長瀬嘉秀氏が発起人だ。

 ちなみに当時、渋谷に「XP」というバーがあり、そこで最初のオフ会が開かれたそうだ(もちろん、この「XP」はエクストリーム・プログラミングとは何の関係もない)。

 天野氏は発足当初からのスタッフだ。XP-jp時代から参加しており、前述の来日イベントのころからスタッフとして本格的に活動するようになった。安井氏は2003年ごろから参加した。コミュニティ活動に興味を持ち、たまたま参加したのがXPJUGのイベントだった。最初はただの参加者だったが、いつの間にかスタッフになっていたという。

「やりたい」と手を挙げた人がスタッフ

 活動内容は大きく2つ。1年に3〜4回開催する「ユーザー会」の運営と、毎月1回行う「スタッフミーティング」での企画会議だ。ユーザー会の中でも、毎年9月第1土曜日は「XP祭り」と題して、100人以上を集めて丸1日イベントを行う。

 これらは「きっちりしたものではない」と安井氏は語る。ほとんど開催していない年があれば、ユーザー会を5回以上開催した年もあったという。「ゆるい感じです」(安井氏)

 もともと参加していた人たちの中で、特に熱心な人がスタッフとして引き込まれていく。ただの参加者とスタッフの違いは明確だ。「スタッフをやりたい」と手を挙げた、その瞬間からXPJUGスタッフなのだ。

 スタッフになったからといって、必ず何かをしなければいけない、というわけではない。スタッフではあるがほとんど活動していない人や、忙しくなって活動できなくなった人もいる。

帰ってくる場所

 
 
XPJUGスタッフ 安井力氏

 XPJUGで活動していて、良かったと思うことは何か。安井氏は、コミュニティとしての良さは「いろんな人に会えること」だと語る。有名な人から、現場で頑張っている人まで、多くの人に会うことができるのがメリットだという。スタッフとしての良さは「自分がやったことで喜んでもらえる」という点。「自分は楽しんでやっているのに、その結果、周りの人も楽しんでもらえると、エネルギーがもらえる」と笑う。

 天野氏は「呼びたい人を、XPJUGという看板を使って呼べる」ことだと語る。ボランティアのコミュニティであることを伝えると、有名な人が賛同してくれることが多い。これまで、Seasarファウンデーションのひがやすを氏や、豆蔵の萩本順三氏などがイベントに来ているという。その結果、仲良くなったり、つながったりすることは、コミュニティに参加していることで得られるメリットだ。

 「XPJUGの良いところ」については、「技術系とヒューマンスキル系の両方をバランスよく話せる人が多い」(天野氏)、「参加している人たちが温かい。帰ってくる場所という感じ」(安井氏)とそれぞれ語る。

コミュニティの「ゆるさ」

 2人は、しきりにコミュニティの「ゆるさ」を語る。「無理はしない。仕事が忙しくなったらしばらく来なくて、ひと段落したらまた帰ってくる。それをお互いにサポートし合っている」「強制じゃないからこそ、居心地が良い」「すごく燃えてる、という雰囲気じゃないのが良い」――。

 筆者が「コミュニティに参加するモチベーションは」と尋ねたところ、2人とも「モチベーションという言葉がしっくりこない」と答えた。彼らにとってコミュニティとは、「モチベーションを持って何かをする場」ではないのだ。

 もちろん、入ったばかりの若いスタッフは「こんなことがしたい」と熱心に活動している。そのエネルギーをもらって彼らは刺激を受ける。そしてやがて、若いスタッフも「ゆるさ」に同期していく。

 安井氏は「現場で悩んでいることや、愚痴を持ち寄って、共有できる場がXPJUGにはある。お互いに悩みを共有できるし、それを克服した人の体験談が聞けるかもしれない」と語る。「ゆるい」けれど、とても大切な場であるということが、彼の話しぶりからうかがえた。

 最後に、今後のXPJUGについて聞いた。

 「何かをやりたいと思ったときに、やらせてもらえる場として、今後も展開していきたい」(天野氏)

 「新しく入ってきた人が『こんなことやりたい』といったときに、サポートできるコミュニティであればいいな」(安井氏)

http://www.atmarkit.co.jp/im/carc/serial/column/nagase06/nagase06.html

参考:XPからアジャイルへの遍歴 via kwout
(長瀬嘉秀氏による、XPJUG発足当時の話)

http://el.jibun.atmarkit.co.jp/akiyah/

参考:コミュニティの裏側を見せちゃいます via kwout
(XPJUGスタッフ 水越明哉氏のコラム)

http://jibun.atmarkit.co.jp/lcom01/special/fivett/tt00.html

参考:5分で絶対に分かるテクニカルトーク - @IT自分戦略研究所 via kwout
(XPJUGスタッフ あまのりょー氏の執筆記事)

 

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