第8回 Linux SeminarからInfoTalkへ――勉強会今昔物語
岑康貴
2009/1/30
■定期開催の重要性
InfoTalkは毎月第3金曜日に開催する、とあらかじめ宣言している。2009年9月までの日程は確定済みだ。小山氏は「定期開催すること」と「それを宣言しておくこと」の重要性を指摘する。
「継続して定期的に開催するのは大切です。それが積み重ねになりますから。また、事前に開催日を宣言しておくことで、『今回は行けないけど次回は』という具合に、その日を空けておいてもらえるようになるというメリットがあります」
日にちを決めてしまって、3カ月先のテーマや講師を調整する。同じく毎月開催していたLinux Seminarの運営ノウハウが生かされている。
勉強会が終わった後は、懇親会が控えている。お金が掛からないように、その場でピザを頼んで簡単に交流の時間を設ける。ところが、多くの人がその後、さらに外のお店に行って朝まで飲む。「次の日に朝から授業があるけれど、帰れないんですよ」と小山氏。
あまり早い時間から始めてしまうと社会人の参加は難しい。さらに勉強会自体が2セッションあるため、その後のディスカッションの時間を多く取れば、懇親会はかなり遅い時間になってしまう。そのため、いまのところディスカッションの時間はほとんど取っていない。もっともその分、懇親会で盛り上がってしまうのかもしれないが。
第1回の様子 |
■「大学の講義」と「オープンな勉強会」の関係
小山氏の本業は同大学院の教授である。教授がオープンな勉強会を企画することにはどんな意味があるのか。小山氏は「大学の講義」と「オープンな勉強会」は相互補完関係にあると語る。
「講義は全15回の中で、体系立った知を体系立った形で伝えます。ところが、ここには当てはまらない知というのがある。それを勉強会で取り上げる。お互いに補い合っているんです」
大学側はこうしたオープンな勉強会の開催について、何もいわなかったのだろうか。
「特に何もいわれませんね。むしろ皆さん協力して、手伝ってくれています」
小山氏自身の狙い以外にも、同大学院の在学生・修了生が来れば「学生へのサービス」となり、地域の人が参加すれば「地域振興の一環」となる。
本来、大学や大学院というのは「知の集まる場」であったはずだ。いまの日本では、「学者や研究者の集まる場」としてしか機能していない。産業を生み出すことをミッションとする同大学院が、外部の技術者に門戸を開いたオープンな勉強会を開催するのは、一見不思議なことのように見えて、実は真っ当なことである。
■コミュニティから生まれるプロジェクト
InfoTalkの今後について、小山氏は次のように語る。
「取りあえず、9月までは確実に開催します。常に40人以上を集客できるように、できれば60人規模くらいで続けていければと思っています」
そして、かつてのLinux Seminarのように、ここから新しいビジネスや研究プロジェクトが生まれることを期待している、と小山氏は目を輝かせる。
「大学で開催しているのですから、勉強会や懇親会で盛り上がった話題をそのまま研究プロジェクトへと展開するのは、普通に勉強会で集まっているところよりも容易なはず。それに大学という場だと、競合関係の企業の人同士でも、何となく一緒にプロジェクトができてしまう。大学で行う勉強会、というメリットを最大限に生かしていきたいですね」
大学という場で、技術者コミュニティを作り、育てていく。小山氏の新しい取り組みは、まだ始まったばかりだ。
参考:アーキテクトを目指して 社会人大学院生の挑戦
産業技術大学院大学に通う阿部聡さんのコラム
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