第3回 学生諸君、「就活としての勉強会」に参加せよ
よしおかひろたか
2008/9/29
■学生のうちに、企業の本音を見ておく
このように、主催者・参加者・学生、すべてのプレーヤーにとって、「学生が勉強会に参加する」ことのメリットは存在するのである。
就職して2〜3年くらいの若手は、後輩に「学生時代は遊んでおけよ、海外旅行でもしておけよ」なんてアドバイスをする。しかし、勉強会に来ている30歳前後の社会人、あるいは企業の中堅でバリバリ仕事をこなしている社会人は、学生時代にもっと勉強しておけばよかった、語学もちゃんとやっておけばよかった、こういう勉強会が学生時代にあれば参加したかった、などという(あくまで、わたしの実感だが)。
30歳前後の中堅の技術者の話を信じるとするならば、学生時代に勉強会に積極的に参加して、いろいろな会社の人と知り合いになることは、メリットこそあれデメリットはほとんどないことなのではないか。これほどローリスクな社会勉強はないのではないかと思う。就活としての勉強会参加メソッドを、ぜひ試してみてほしい。
さらにいえば、学生であるメリットを十二分に生かし、プログラマとしてアルバイトをするというのも、一歩進んで社会を知ることになる。
世の中には、いい会社もあればブラックな会社もある。アルバイトのいいところは、その実情を自分の経験として得られることである。アルバイトは就職してからではできないので、いろいろな会社で、それこそ小さな会社から大きな会社まで、働いてみることは絶対に無駄ではないと思う。
うわべだけの建前論ではない、企業の本音の姿が垣間見られるだろう。
■参加すべき勉強会の見つけ方
学生にとって、IT系の勉強会をどうやって発見すればいいのだろう。ITといっても、
- 基盤系技術(OSやコンパイラ、RDBMSなど)
- エンタープライズ系(企業の情報システムなど)
- ミッションクリティカル系(勘定系や、電力送電網などの社会基盤系)
- Webサービス系(Web 2.0?)
- 組み込み系(いろいろ)
など、いろいろある。
自分が興味を持っている領域についての勉強会を選べば、その業界の専門家が参加している可能性は高い。とはいうものの、Linuxの勉強会に行ったからといって、仕事でLinuxを開発している人と必ず会えるというわけではないが。
勉強会参加の方法については、本連載の第1回から目を通してほしい。
あまり難しく考えずに、「IT勉強会カレンダー」でも眺めながら、自分の興味とスケジュールに合う勉強会を見つけよう。主催者に、学生でも参加が可能かどうか聞いてみよう。通常、学生の参加は上述したとおり、主催者にとっても大歓迎のはずなので、特に問題はないと思う。その際、自分は初心者で専門的な事は分からないかもしれない、などと簡単な自己紹介を付加しておくといいかもしれない。
■勉強会当日
課題の参考書があるのであれば、購入し、予習をしておく。勉強会によってはポジションペーパーを書くことが要求される場合もあるが、あまり固く考えることはない。主催者に詳細を問い合わせよう。特にそのようなものがない場合は、肩の力を抜いて参加しよう。
学生の場合、名刺を持っていないことが多いが、プリンタで自作した名刺などを持っていくと自己紹介のきっかけになる。初対面の人と会うので緊張するかもしれないが、何事も経験である。大きめな文字で書いた名札を持参し、首から下げたり、自作の名刺を持っていって、初対面の人と名刺交換をしたりしよう。
「ごあいさつをさせてください」といいながら、自分の名刺を相手に見えるように渡す。社会人であれば名刺をくれるので、元気よく「××です」と名前をいう。
自分が学生であることをアピールしよう。話のきっかけになる。
勉強会の席では可能な限り積極的に質問をする。あまりにもチンプンカンプンであって、どんな質問をしていいのかすら考えつかない、という人もいるだろう。だが、恐れることはない。
君にも質問はできる。例えば、「わたしはこの分野にまったく詳しくない素人なのですが、お薦めの参考書や入門書があったら教えてください」というのはどうだろう。
専門家が選んでくれるものは定番の教科書だ。素人が書店の本棚で、どれを読んでいいのか目まいを覚えながら立ちつくす必要はない。専門家に教えてもらうのが一番だ。
次回までに、薦められた参考書を読んでおく。疑問点、分かったこと、分からなかったことなどを、また専門家に聞いてみよう。話がどんどんふくらむ。
勉強会では質問するのが鉄則である。最低1回は質問をするように心掛けよう。
■懇親会
勉強会によっては懇親会がつく。アルコール付きの場合、未成年は参加できない。これは仕方ない。主催者に相談してみるのも手だと思うが、ケースバイケースだ。
歓談の機会があれば積極的に参加しよう。参加者の人となりを知る機会にもなる。いくつかの質問も用意しておくといい。メタな質問として、「なぜこの勉強会を始めたのか」「勉強会を開催していて良かったこと、悪かったこと」「失敗談、成功談」などもいいだろう。失敗談や苦労話に真実が宿るので、ぜひ聞きたいところである。
■ブログに感想を書く
本連載でも何度か強調しているが、勉強会は帰宅後、ブログなどにまとめることによって完結する。名刺交換をした人にはお礼メールを書こう。その際に、感想を書いたブログのURLなどを記しておくと、いろいろなフィードバックがくるかもしれない。
ブログに記すことによって、勉強したことの復習や、理解の整理になる。また、十分理解していないこと、誤解していることなども明らかになる。仮に間違った理解をしていたとしても、ブログに記すことによって、勉強会の参加者や有識者から突っ込みや指摘が入るかもしれない。いずれにせよ、ブログを書くことは自分にとってメリットが大きいので、欠かさないようにしたい。
いろいろな勉強会に参加し、いろいろな人と出会う。勉強できて、人とも出会える。一石二鳥である。学生にとっても、勉強会の参加はとてもメリットのあることである。
■まとめ
就活としての「初めての勉強会」を記してみた。勉強会に積極的に出席することは、IT技術の勉強になるだけではなく、一線で活躍する中堅の技術者と会う機会が得られる。
漠然と考えていた「就職」というものに対する明確なイメージを、勉強会の参加者は与えてくれる。
就活としての「初めての勉強会」、ぜひその一歩を踏み出してほしい。
筆者プロフィール |
吉岡弘隆(よしおかひろたか) 2000年6月、ミラクル・リナックスの創業に参加。1995年から1998年にかけて、米国OracleにてOracle RDBMSの開発を行う。1998年にNetscapeのソースコード公開(Mozilla)に衝撃を受け、オープンソースの世界に飛び込み、ついには会社も立ち上げてしまう。2008年6月、取締役CTOを退任し、一プログラマとなった。 所属 ミラクル・リナックス株式会社 日本OSS推進フォーラム ステアリングコミッティ委員 U-20プログラミング・コンテスト委員 セキュリティ&プログラミングキャンプ、プログラミングコース主査 独立行政法人情報処理推進機構、技術ワーキンググループ主査 OSDL Board of Directorsを歴任 カーネル読書会主宰 Webサイト ブログ:ユメのチカラ 日記:未来のいつか/hyoshiokの日記 |
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