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コラム:自分戦略を考えるヒント(46)
自立したエンジニアに必要な4つの姿勢

堀内浩二
2007/10/29

 こんにちは、堀内浩二です。去る9月29日に行われた「フリーエンジニア カンファレンス2007」(アイティメディア @IT自分戦略研究所主催)で、3つのトークセッションの司会を務めさせていただきました。すでに独立して仕事をされている方や、弁護士・社会保険労務士の方をゲストスピーカーにお招きして、貴重なお話を伺うことができました。

 そこで今回はイベントを振り返り、「自立したエンジニアに必要な4つの姿勢」をまとめてみます。これらはフリーエンジニアのみならず自立志向の社会人すべてに役立つものだと思います。

自立したエンジニアに必要な4つの姿勢

1.仕事から学ぶ

 「キャリアとスキルを高めるTips」というテーマでお話を伺った大橋悦夫さん(サイバーローグ研究所 代表)は、短い期間ながら人材派遣会社に登録していたことがあるそうです。その理由は「テクニカルライティングを仕事から学び、実績を作るため」と明確。スキルアップというと、資格を取ったり学校に通ったりするのが一般的なイメージですが、大橋さんの選択は「仕事から学ぶ」でした。

 確かに仕事から学んだ方が実践的な知識が身に付きそうですし、周りのプロから教わることもできます。と書くと、

 「そうしたくても、そもそもスキルがなければ仕事に就けないのでは?」

と思う方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、スキルと仕事とはニワトリと卵の関係。未経験でも仕事に挑戦させてもらえるタイミングは4つあると思います。

 1つ目は新入社員のとき。しかしこのチャンスは一生に一度しかありませんし、思いどおりになるものでもありません。

 2つ目は社内での異動。社内である程度信用を蓄積していけば、冒険させてくれる余地は徐々に広がっていくでしょう。ただし、人間関係やタイミングに依存するところが大きいので、自分の思いどおりにはなかなかなりません。

 3つ目は派遣社員として働くこと。上で大橋さんが選んだアプローチです。まったく違う業種への挑戦などであれば考慮に入れるべき手段かと思います。ただし、望む案件が必ずあるわけではない、仕事で中核的な存在になれないといったリスクもあります。

 4つ目は、1つのスキルをテコに仕事を得て、スキルを広げていくこと。大橋さんは独立後、マーケティングが学びたくなってあるマーケティング会社と雇用契約を結びます。マーケティング未経験だった大橋さんの武器になったのが、それまで培ってきたプログラム開発とライティングの実績です。社内にそういうスキルの持ち主がいなかったこともあって、社内システムの相談役という形で社内に居場所を築くことができました。

 「安定的に案件を受注するテクニック」でお話を伺った野口和裕さん(NTX 代表取締役)も、やりたい仕事は安値でも受注するといいます。1つはそれが純粋にやりたいからでしょうし、もう1つはそうやって確実に受注することでスキルと実績を積み、次の仕事につながるという期待を持っているからでしょう。

 「学ぶ姿勢」に関しては印象的な出来事がありました。弁護士・社労士の方々を招いてのトークセッションの後、控え室で休憩をしていると、あるスポンサー企業の社長さんがひょっと遊びに来られたのです。スピーカーの方々に短い質問をするためでした。専門家の方に直接意見を聞く機会はなかなかありません。会社に顧問弁護士がいても、セカンドオピニオンを聞いておきたい問題もあるでしょう。こういう場をとらえて勉強してしまう、その行動力に感心しました。

2.仲間をつくる

 野口さんは、そもそも独立のきっかけが仲間(先輩)に誘われたことだそうです。その人が営業面を受け持ってくれたので順調に滑り出すことができたとのことでした。

 大橋さんは「シゴタノ!流 スキルアップのコツ」というミニプレゼンをしてくださいましたが、コツのすべてに「仲間」をうまく活用することが含まれていました。仲間の存在によって互いを刺激し合い、仕事の生産性を高めています(大橋さんには『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』という著書もあります。

 また、弁護士・社労士の先生をお招きしたセッションでは、Q&Aの時間中途切れることなく質問が続きました。独立する前はもちろん、独立後も不安はいろいろありますが、個人に固有のものだけでなく、似たり寄ったりの悩みもたくさんあります。そういった問題を共有できる仲間を持つことは重要だと感じました。

3.情報発信を心掛ける

 野口さんは、案件を獲得するための営業はしていないとのこと。その代わり記事の執筆など情報発信活動には時間を割いています。トークセッションでは出なかった話題ですが、野口さんが@IT自分戦略研究所で執筆をするようになったきっかけは、野口さん自らが@IT自分戦略研究所の編集部に提案しに行ったそうです。野口さんの情報発信に対する熱意が分かりますね。

 大橋さんはもちろんblog「シゴタノ!」が出版や講演のきっかけになっていますが、そのずっと以前から情報発信活動を続けてきています。

 ただ、文章を書くことだけが情報発信とは限りません。仕事は知人の紹介で舞い込んでくることが多い現実を考えると、閉じこもらずにいろいろな仕事をこなして信頼を蓄積していくことが、最高の情報発信といえるかもしれません。

4.誇りを持つ

 「誇り」という言葉は、野口さんが「収入より大事なもの」というトピックについて語られているときに出てきた言葉です。自分がプロとしての誇りを持っていなければ、ただ仕事を請けるだけの存在になってしまう。誇りを持つからこそ、顧客の期待に応え、さらには超えようとする努力ができる。そういうお話でした。

 大橋さんももちろん自分の仕事に誇りを持っているはず。「役に立たないハックですが……」などといって本を出しても売れるはずがありませんからね。

独立事業者に必要な「誇り」の源

 「自分はこういう価値を発揮できるはず/できている」という誇り。

 「その価値を、出し続けよう」という目的意識。

 「そのために、学び続けよう・変化し続けよう」という意欲。

 その意欲を持ち続ける原動力は何か。そこまではトークセッションでは語られませんでしたが、同じ独立事業者としてわたしはこう考えています。

 短期的には、不安や恐れが原動力になります。周囲の期待に合わせて、あるいはそれ以上に、提供できる価値を高めていかないと職が得られないという不安は、独立事業者にはつきものです(これはすべての社会人が持ってしかるべき「健全な不安」だと思いますが……)。

 長期的には、何らかの希望や、後から振り返って後悔したくないと願う気持ちが原動力になっていると思います。不安に駆られて変化を強いられてばかりでは、走り続けることはできません。何か長期的にこうありたいと願う気持ちがあればこそ、変化に挑む勇気が出てくるのではないでしょうか。

 最後に、最近目にしてハッとした言葉を引用します。「経営学の父」P.F.ドラッカーが自分の強みの生かし方について述べている文章です。P.F.ドラッカー『仕事の哲学(ドラッカー名言集)』より。

知っておくべき大事なことがある。緊張感や不安があったほうが仕事ができるか、整備された環境のほうが仕事ができるか。大きな組織で歯車として働いたほうが仕事ができるか、小さな組織で大物として働いたほうが仕事ができるか。どちらでもよいというものは、あまりいない。

 「フリーエンジニア カンファレンス2007」では、参加者の約半数がこれから独立を考えている方々でした。独立をお考えの方は、ゲストスピーカーに共通して見られた「4つの姿勢」、そして上記のドラッカーの問いについて考えてみるのは、よい心の準備になると思います。

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筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役、グロービス経営大学院 客員准教授。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。シリコンバレーに移り、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。帰国後、ベンチャー企業の技術および事業開発責任者を経て独立。現在は企業向けにビジネスリテラシー研修を提供するほか、社会人個人の意志決定支援にも注力している。

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