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不定期コラム:Engineerを考える(5)
ネットをうまく活用しよう


加山恵美
2003/12/3

 今年9月27日に「@IT的進路相談博」(主催:@IT自分戦略研究所と稚内北星学園大学)が開催された。その会場の片隅で「ネットのパワーを活かす」と題したミニゲリラセミナー(対談)を行った。お相手は@IT 編集局長の新野淳一氏だ。本来は休憩時間だったにもかかわらず、熱心にうなずきながら耳を傾けてくれた人たちにあらためてお礼を申し上げておきたい。

ネットから情報収集する

 会場で話したことは、主にネットから情報を得る方法についてだった。エンジニアの仕事は技術的な知識が重要なので情報収集は欠かせない。もちろん情報収集にはネット以外にも古典的な方法、例えば書籍を読む、誰か(ヘルプデスク、同僚、さらには先輩まで)に聞くといった方法もあるだろう。実際はその情報収集先の特徴や効果を生かせるように、うまく使い分けることが必要だろう。

 イベント当日は、ネットからの情報収集に限定して話した。@IT読者ならあらためていうまでもないが、突き詰めると検索エンジンやWebブラウザをいかに駆使するか、ということになると思う。そして英語のページでも恐れずに読もうとする勇気を、ほんの少し。

 ネットから情報収集する際の情報源としては、ネットコミュニティもあり得る。つまり、メーリングリストや掲示板などだ。システムに多少の差異はあるが、共通の興味を持った人間が集い、情報交換をする場である。

経験者の体験談という宝石

 ネットコミュニティに蓄積される情報は会話を集積したものに近く、あふれる情報はまさに玉石混交である。泥の中から砂金を探すような感覚だ。コミュニティで得られる砂金とも宝石ともいえるのは、経験者しか知り得ないノウハウだ。

 私は以前、こんな体験を投稿したことがある。それは、グループウェアのファイルシステムにフォルダをいくつか作成したら、ある名前のフォルダだけが認識されなかった、というものだ。すると「そのフォルダ名はシステムで使うファイル名と同じため、システムに認識されない」と教えてくれた人がいた。プログラムで使う変数の予約名ならよくある話だが、フォルダ名でも似たような現象が起きるとは、当時の私にとって意外だった。それでフォルダ名を変えると問題はあっさりと解決した。よく調べればオフィシャルのWebサイトで情報公開されていたかもしれないが、そこに到達するのは困難だったろう。

 こうした細かい話でも、経験者がいればすぐに回答がもらえる場合がある。限られた場所や経験を積んだ人間しか知らないことを、まったく無関係の初心者でも知る機会が与えられる。そういう意味ではネットコミュニティとはかなりありがたい存在である。

レスを誘う投稿とは

 ただし、ネットコミュニティの信ぴょう性には十分気を付ける必要がある。情報提供者に悪気がなくても誤解はあり得る。伝聞で得た情報は制限事項や正確性に気を付けて、必要なら検証も行うべきだろう。

 前述したセミナーの対談で新野氏に聞かれたのは、コミュニティの処世術としてレス(レスポンス:返事)をもらいやすくなるコツはあるのか、という点だった。私は2点あると思う。

 奇をてらった提案に聞こえるかもしれないが、まずは普段から「自分の名前を売っておく」ことだ。もちろん、これには時間がかかる。入会したばかりのメーリングリストでこれから質問をしようとするなら、有効なアドバイスにはなり得ない。ただし、レスをもらう条件とすれば、かなり強力な要素だ。

 なぜなら、同じ質問でも、なじみの人間が問い掛けるものと、新参者が問い掛けるものでは、返事をする側の姿勢が違う。万が一の見返りのためにと考えるのは不毛だが、各自が普段からよい形で自己主張してもらいたい。そうすれば、コミュニティ内に良好で健全な親睦が深まるだろう。それが私のひそかな願いだったりする。

観衆に興味を持たせる

 もう1つのコツは、「興味を持たせる」ような書き方の工夫だ。これなら新参者でも役立つだろう。

 単刀直入に「困っているので、教えてください」と聞くのも悪くないが、これではレスはもらいにくい。それどころか反感を買う場合もある。特に、回答する側はボランティアが多数を占めることを忘れてはならない。

 そこでもし、質問をするなら話題に興味を持たせたり、参加することで自分にもメリットがあると思わせるような問い掛けが効果的だろう。時には付加的な情報提供も加えつつ、問題提起するような形だと興味を持ってもらえる確率は高い。

 例えば「新しいバージョンで出たモジュールを導入したらパフォーマンスが落ちてしまいました。対策を教えてください」と助けを求めるのと、「新しいバージョンで提供されることになったこのモジュールは、パフォーマンスにどう影響を与えるでしょうか。試した人はいますか」と考察や経験談を求めるのでは、どちらが好意的な関心を周囲に持たれるだろうか。恐らく後者の方だ。人助けではなく考察なので関心を持たれやすい。または自分の最新の研究をひそかに自慢したいと思う人をも誘うことができる。結果的に、後者の方がより多くの実利のあるレスが期待できる。

 @ITの会議室でも同じことだ。PC自作や開発ツールのスレッドが盛り上がるのは、誰もが経験し、興味を持ち、喜怒哀楽を含めて体験談が語れるからだろう。回答に幅がある質問もレスが増える原因の1つになる。

禁じ手の質問

 ただ、こう思う人もいるだろう。「そんな悠長なことをいってはいられない。いま、サーバが落ちているんだ。歓談ではなくて解決策がほしい」と……。そういう危機的な状況での質問もあるだろう。

 ただ、切迫した問題はコミュニティよりもほかに頼るべきではないだろうか。もちろん、親切に対応してくれる人もいる。だが、回答が必ずくるという保証はない。しょせん、コミュニティはコミュニティであり、ヘルプデスクではない。共通の興味を持つ人たちの寄り合いの場所だ。「ギブ&テイク」であり、「持ちつ持たれつ」の精神を忘れてはならない。

 だが緊急時でパニックになると、ついそれを忘れてしまう。私がよく出入りしているコミュニティでも年に数回は「現在、客先でトラブルに直面しています。対処法を教えてください」といった悲痛な投稿を見掛けることがある。エンジニア経験者としは心より同情するが、こうした質問はやめておいた方がいいだろう。「甘えるな」という訓戒だけではない。プロとしての信用を失うことはしてほしくないのだ。

 顧客の中には情報収集に熱心な人もいる。そういう人は結構メーリングリストや掲示板を参照していたりする。メンテナンスを有償で請け負っているエンジニアが、無料のネットコミュニティから解決方法を得たと顧客にばれたらどうだろう。技術力が疑われ、信頼を失うことにもなりかねない。プロとして軽率な行動は取らないように気を付けてほしい。

交流のきっかけの場として

 コミュニティでは情報交換が主ではあるが、加えて、コミュニティを契機に人脈を広げてほしい。@IT的進路相談博のパネルディスカッションで、「人と会うこと」の大切さを主張したパネリストがいた。私も強く同意する。これはエンジニアの問題解決といった特定の話ではなく、かなり普遍的な話ではないだろうか。

 エンジニアにとって、あらゆる意味で、あらゆる場面で、ネットを効果的に使うことが重要になる。1回のコラムで語りきれることではないが、日々、活用法を研究してほしい。自分なりの小技も開拓してほしい。そして、情報収集は1人で完結するだけではなく、たまにはコミュニティに公開して周囲と一緒に知識を広めることもしてほしい。そうすれば、ネットがより何倍も強力な武器になるに違いない。

筆者紹介
加山恵美(かやまえみ) ●茨城大学理学部化学科卒業。金融機関システム子会社とIT系ベンダにてシステムエンジニアを経験し、グループウェア構築や保守などに携わる。そのかたわらで解説書を執筆していたが、それが本業と化す。技術資料を提供することで、日夜システムと格闘しているエンジニアをサポートできればと願う。幼少からバレエを始め、現在コンテンポラリーダンスを習っているが、いまだに身体が硬いのが悩みとか。双子座A型。




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