「自分戦略」とは何か
第1回
「外側の尺度」に振り回されない自分を持て
アットマーク・アイティ 藤村厚夫
2003/3/12
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■どうして「戦略」が必要なのか
どうして「戦略」が必要なのか 私たちは、2001年5月、「@IT」内に「Engineer Life」フォーラム(現在の「@IT自分戦略研究所」の前身)を開設するに伴って、「自分戦略をつかめ」というスローガンを用い始めました。
その際、念頭にあった「自分戦略」のイメージとは――。一般に企業や組織が、その向かうべき分野(ビジョン)を定め、それをいかに達成するかという方法論議が「戦略」なのだとすると、いままさに「ITエキスパート1人ひとりが、自分自身のための戦略を持つべき」というものでした。
Webサイト「@IT」は、1999年に構想され2000年に具体化しました。当時の社会的文脈は空前の「ITブーム」。JavaやスクリプトでWebシステムを開発できる、といったスキルに派手なスポットライトが当たり、2005年までにはそのような数十万人のITエンジニアが不足する……と「エンジニア売り手市場」が喧伝(けんでん)されたものでした。
アットマーク・アイティもその存在意義を「不足するITエンジニア」という課題への回答に見いだそうとしていたのです。ところが、です。その後、景気のいい言葉はあっという間に霧散。「エンジニア氷河期」の到来です。急転直下、私たちの課題も「不足」対策から、「ITエンジニアの生き残りのために」と転換を迫られることになりました。
2001年は、そんなITエンジニアをめぐる社会的文脈の急転換点にあったのです。私たちには、この文脈の変化に振り回されたという苦い思いがありました。従って、私たちの「自分戦略」コンセプトには、「他人に振り回されるのではなく」「1人ひとりがその向かうべき分野、目的を定めて歩む」ということへの強い傾きがあるのです。つまり体験に根差した思いに裏打ちされているわけです(笑)。
■「自分」を大切にすること
ビジネスは競争といわれ、時には戦争に例えられたりもします。『競争優位の戦略』(M.E.ポーター著、ダイヤモンド社刊)といった表現も俗耳に入りずいぶんと流通しました。「競争」「比較」にさらされずに生きることはなかなか困難な時代というわけです。優れたITエンジニアという基準にも勝ち負けや比較考量論議がついて回ることでしょう。
が、それだけに終始してしまうのか
A. H.マズローの欲求段階説(『人間性の心理学』、産業能率大学出版部刊)を待つまでもなく、「競争に勝ちたい」「他人に認められたい」といった自我実現の先には、自己実現への道が開かれています。そこでは尺度は外側にあるのではなく内側へと向かっています。
自分の内側の尺度を見いだすこと。「自分戦略」をつかむプロセスは、社会的文脈だけに振り回されるのではない内側の基準を探し求める道のりでもあります。「自分を見失う」こととは対極の歩みを、私たちは「自分戦略」に見ているのです。
次回は、さらに戦略について具体的に述べ、「戦略づくり」と「失敗の本質」について触れていきたいと思います。
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