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IT業界の冒険者たち

第29回 リーナス・トーバルズを助けた男

脇英世
2009/6/30

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 アラン・コックスは、ともかくウェールズ・ユニバーシティ・カレッジを卒業し、ケーブル・オンラインと3Comで働いた。ネットワーク関連に興味があって3Comに入ったのだろうが、そこでの経験がネットワークの知識をさらに強化したようである。実際、3Comは彼に強い印象を残しているらしい。もともと書籍より、インターネットからダウンロードしたデータを読むタイプらしいが、ある時期など、手元に置いてある書物は、3Comの3C527のプログラミング・マニュアル、マッキントッシュ・カードの設計本、光磁気ディスク製品のマニュアルだけだったこともあるという。また、ある文献ではハッキングする価値のあるものとしては、3Comの3C501、Linux/8086を挙げている。

 Linux2.0.25以降、アラン・コックスはLinuxにおけるネットワーク機能の開発にあまり関与していない。人材が豊かになったこともあるが、アラン・コックス本人の興味がほかに移ったためだろう。

 アラン・コックスはSMP(対称型マルチ・プロセッサ)に興味を持ったのだが、そのきっかけは、カルデラの技術者にペンティアム90MHzのデュアルプロセッサを勧められたことによるらしい。多分これは、ゲートウェイのマシンであると予想される。そこでアラン・コックスは、SMP用Linuxのハッキングに夢中になる。正式にはLinux1.3.37以降に、SMP用Linuxのハッキングを始めた。そうしてあれこれやるのだが、Linux2.0以降、米国に渡ったリーナス・トーバルズが勤めたトランスメタ社が彼にSMPを買い与え、Linux2.1以降でリーナス・トーバルズとDaveMがSMPでよい仕事をするようになると、アラン・コックスはSMPとの間に距離を置くようになった。アラン・コックスがSMP以外に関係したプロジェクトとしては、Linux/SGI、Linux/Mac68K、Linux/8086、TVカードドライバ、サウンドカードドライバ、セキュリティ、IPv6などが挙げられる。

 アラン・コックスはCymru.netで、テクニカル・ディレクターとして働いている。Cymru.netは、ウェールズ地方のインターネット・サービス・プロバイダで、キース・ベイカーという人物によって1995年に設立された。フリー・ソフトウェアのGPLベースで働きたいというのがアラン・コックスの希望である。従ってマイクロソフトから働かないかとの誘いはあったそうだが、むろん断ったという。

 話は変わるが、アラン・コックスにはテレサという奥さんがいる。彼女はインターネットのホームページを持っており、ここで日記を公開しているのだが、これが非常に面白い。アラン・コックス自身もWeb上で日記を公開しているが、奥さんの書く文章の方が断然いい。プログラミングの才能はともかく、文才は奥さんの方が上のようだ。アラン・コックスの趣味はLinux以外ではガーデニングというが、これまでの成果は、未完成の物置小屋、多数の壊れたコンクリート・ブロック、手付かずの芝のパッチだそうである。40時間Linuxのハッキングをやって、40分ガーデニングをやったとテレサは書いている。

 アラン・コックスはオープン・ソースとフリー・ソフトウェアのうち、どちらを支持するかについて、これまでもフリー・ソフトウェアだったし、これからもそうだと明確に述べている。ちなみに、UNIXに関しては次のようにコメントしている。「UNIXなんて古いメインフレーム・ホラーだ。もはや何かの価値があるとは思えない」

本連載は、2002年 ソフトバンク パブリッシング(現ソフトバンク クリエイティブ)刊行の書籍『IT業界の冒険者たち』を、著者である脇英世氏の許可を得て転載しており、内容は当時のものです。

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