Engineer Life Book Review
自分を見つめ直すきっかけにしたい6冊
2002/3/14
藤村厚夫、江島健太郎、小林教至
エンジニアが自分の技術スキルを磨くため、技術解説書、仕様書、ドキュメントなどを読むのは当然のこと。しかし、できるエンジニアは技術スキルとともにヒューマンスキルも磨くもの。それを磨くには、実際の体験が大きいが、書籍を読むという体験も貴重なこととなろう。
今回はそうした視点から、エンジニア個人の現在や将来をいま一度見つめ直すきっかけとなる書籍を、アットマーク・アイティ代表取締役藤村厚夫、@IT Job AgentとLearning Desk担当小林教至、それに現役エンジニアを代表してインフォテリアの江島健太郎氏の3氏に選んでもらった。あなたはどの本を読む?
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就職はゴールじゃない。スタートだ |
ジョブウェブの就職自分戦略 佐藤孝治著 ダイヤモンド社 2001年1月 ISBN4-478-78282-2 1400円 |
本書は、日本有数の学生向け就職支援サイト「ジョブウェブ」の代表である著者が、就職活動を行う学生や就職間もない青年たちに発信する「自分戦略」の築き方だ。
ではなぜ「就職戦略」ではなく「自分戦略」なのか? それは著者が記すように「就職はゴールじゃない。スタート」だから。「どうやったら……自分が納得できる人生を送れるのか」を考えるスタンスだ。単に“思い”だけではない。「自分戦略を立てる5つのポイント」など、役立つ発想法がたっぷり盛られている。若い著者らしく、読者の共鳴を呼ぶ等身大の視線からの「自分戦略のすすめ」が売り。特に紹介されているマネックス証券の松本大氏の自分戦略=素振り説は印象的だ。「いざストライクが来たとき、それを確実に打ち返せるようにしておくこと」。もやもやを晴らすきっかけになるかもしれない。
変化は自分にとってのチャンス |
キャリアショック ―どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるのか? 高橋俊介著 東洋経済新報社 2000年12月 ISBN4-492-53108-4 1500円 |
人材マネジメント・コンサルタントとして、活発に活動する著者を知る人も多いだろう。本書で、著者はおののくような考えを提示する。将来目標を計画しそれに向かって着々とキャリアを積み上げる……。一合目、二合目と歩む、富士登山型に例えられるキャリア形成は、むしろリスクだというのだ。予期しない状況変化の到来で、計画してきたキャリアの将来像があっという間に崩壊する、それが「キャリアショック」だ。そんな時代がやってきている。
厳しい時代の到来を警告するとともに、本書ではそんな時代を切り開く方法論を述べる。「キャリア構築は予定どおりにはいかない。であるならば、自分にとってより好ましい変化を仕掛け、キャリアショックに備える行動を取らなければならない」と。著者はこのようなスタイルを「キャリアコンピタンシー」と呼ぶ。変化を自身のキャリアにとってチャンスとするプラス思考は、こんな時代だからこそ得がたい示唆となるだろう。
ビジネスマンのあるべき姿をウイットで提案 |
仕事運が強くなる50の小さな習慣 中谷彰宏著 PHP研究所 1999年10月 ISBN4-569-60836-1 1000円
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「エスカレーターに乗って、しかも歩いて上る人が成功する」、という一文から始まる本書は、筆者の好きなエッセイストである中谷氏の数ある著作のうち、ビジネスにまつわる教訓を読みやすくまとめた1冊。「標語+メッセージ」の組が50カ条あり、「楽をしたい人は好きな仕事もできない」「成功する人は、敵の少ない人ではない。味方の多い人だ」「問題が多いのは、能力があるからだ。夢の数だけ、問題がある」など、ビジネスマンとしてのあるべき姿勢を、ウィットに富んだ論調で提案している。
エンジニアという職種のビジネスパーソンにとって、日進月歩の技術を追い続けることだけに偏らず、普遍の社会法則という側面から自分を見つめ直すことの価値を発見できる。何よりも、こういったカジュアルな本を肩の力を抜いて楽しめるような、余裕のある心を維持できることが重要なのかもしれない。
自らを崖っぷちに追い込むことで新たなチャンレンジ |
29歳はキャリアの転機 小杉俊哉著 ダイヤモンド社 1998年5月 ISBN4-478-73149-7 1300円 |
元アップルコンピュータ人事総務本部長であった著者の、人生の節目となった29歳という年齢をテーマとしてつづられた自叙エッセイ。
30歳までNECに勤務した後、MITのビジネス・スクールへ留学、その後はモルガンスタンレー、マッキンゼーといった絵にかいたようなキャリアを経ていく……。ここまでを聞けば、自慢話風のサクセス・ストーリーなのだが、本書が面白いのは「社会人になっても待ち合わせに間に合ったためしがない」「やるべきことの前に必要のないことをやるのが常」「期限間際にならないと始めない」といった、非常に親近感を覚える(?)話からスタートしているという点である。
そして、ダメ人間という自覚があるからこそ自らをがけっぷちの環境に追い込み、留学に向けた学習と会社での新たなチャレンジ、資金の算段、子作り・子育てといったものをわざと一気に背負い込み、集中力を高めざるを得ない環境に置く。そこからは、たまにはズッコケながらも人生を大いに好転させ、楽しんでいくのである。筆者は、社会人になりたてのころに本書と出合ったことで、自らの人生を非常にポジティブにイメージできた記憶がある。
社会人になることの意味を自覚させた1冊 |
日本の経営組織 企業の一員となるとは 岩田龍子著 講談社現代新書 1985年10月 ISBN4-06-145792-6 534円 |
一般的に中学と高校は3年ずつ、大学は4年。つまり、常に3、4年で卒業式がやってきて、生活環境が大きくリセットされる。筆者には、社会人になってもその感覚が抜けなかったようで、社会人3年目のときに、来年も再来年も、ヘタすると(?)あと35年くらいこの生活が続くのだと気付き、目の前が真っ暗になったことがある。情けない話、そのときになって初めて社会人になること、組織の一員として埋没することへの抵抗を感じた。
そんなときに出合ったのがこの1冊。本書は日本の組織の特徴を分かりやすく解説し、その中で一社会人としてどう生きていくかを考えさせてくれる。本書が書かれた当時とは、組織のあり方も大きく変わって、内容的に時代にそぐわない点もあるが、日本の企業組織の性格を知るうえでためになるし、いまでも体質の古い大企業に勤めている人には、大変役立つのではないだろうか。
社会人10年目、勢いだけでは気力がもたない人へ |
人生の目的 五木寛之著 幻冬舎 2000年11月 ISBN4-344-40041-0 476円 |
筆者の社会人5年目は1995年だった。時まさにWindows 95の発売前、インターネットも注目され始め、ITバブル前夜の様相を呈していた。自分自身もどんどん仕事が楽しくなっていた時期で、業界も発展期にあり、忙しくも楽しい日々だった。
そんな生活を5年ほど続けていたある日、学生時代の友人に「お前、仕事の話ばかりじゃん」といわれた。自分でもうすうすと感じていた点を指摘され、ハッとする思いが……。それから、いままでの自分を振り返り、そもそも働く目的って何だろう?、突き詰めると生きる目的って何だろう?
と考えるようになった。無目的な自分の不甲斐なさに、やる気を失っていたときに本書を読んだ。「自分の人生の目的を見つけるのが、人生の目的である」という考えに、スーッと肩から力が抜ける思いがした。“いまの会社でいいんだろうか”と悩んでいるのであれば、転職情報誌を読む前に、ぜひ読んでいただきたい1冊だ。
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