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パソコン創世記


大いなる誤解

富田倫生
2009/9/1

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本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、日本のパソコン業界黎明期に活躍したさまざまなヒーローを取り上げています。普段は触れる機会の少ない日本のIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は『パソコン創世記』の著者である富田倫生氏の許可を得て公開しています。「青空文庫」版のテキストファイル(2003年1月16日最終更新)が底本です。「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」に則り、表記の一部を@ITの校正ルールに沿って直しています。例)全角英数字⇒半角英数字、コンピューター⇒コンピュータ など

『ASCII』創刊号、「編集室から:ホビーとの決別」(全文引用)

 「ホビーとしてマイクロコンピュータが注視されており、今までマイクロコンピュータの記事は専門紙の専売特許だったのに、ほとんど一般向けのすべての週刊誌、月刊誌が、なんらかの形で〈マイコン〉を紹介する記事を書きました。おもしろおかしくというのがそれらの記事の基本的な執筆方針ではないのかと思うこともありましたが、反面、マイクロコンピュータが実用化された時期が過ぎ、遂に日常化されるようになったきざしと考えると大きな期待を感じます

 昨年の11月に創刊した月刊ホビー、エレクトロニクスの情報誌『I/O』は、今日のマイコン・ホビー・ブームのはしりでもあり、また、そのスーパースター的急成長も今となってみればむしろ必然であったとも言えるのではないかとすら考えたくなります。

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 創刊号が皆様のお手もとに届く頃、米国では全米コンピュータ会議(National Computer Conference)が開かれた直後で、そこでマイクロコンピュータを個人的な目的に使用する、いわゆるパーソナル・コンピューティングが一般に学会レベルで認められるようになるようです。

 ここにホビーではない新しい分野『コンピュータの個人使用・パーソナル・コンピューティング』が出現したと言うことができます。

 ひととおりマイクロコンピュータのシステムをそろえるためには最低20万円はかかります。20万円を単に純粋な遊びのために投げ出す人が国民的レベルで増加することは期待できそうにありません。

 何の理由でもいいのです。とにかく自分で納得のいく目的があること、それがマイクロコンピュータに取り組む人の備えなければならない最低条件になるのではないでしようか。

 マイクロコンピュータは家電製品にも積極的に使われて、産業としての地位を確立しつつありますが、今まで大型が担ってきた計算とか処理などの機能を備えたコンピュータが個人の手のとどく商品となったら、それをどのように分類したらいいのでしょうか。

 電卓の延長ではないと考えます。家庭や日常生活の中に入ったコンピュータ、テレビやビデオ、ラジオのような、いわゆるメディアと呼ばれる、コミュニケーションの一手段になるのではないでしょうか。テレビは一方的に画と音を送り付けます。ラジオは声を音を、コンピュータはそれを決して一方的に処理しません。誇張して言うなら、対話のできるメディアなのです。個人個人が自分の主体性を持ってかかわりあうことができるもの――これが次の世代の人々が最も求める解答であると思うのです。

 『ブーム』といってさわがれているその理由が、かつてのBCLと同じように内部からの自然発生でなくて、外部からの励起によるものであることは明らかですが、これがブームから革命に移る過程は、自発的に、主体的にユーザーが行動できるかということにかかっていると思います」

◆ ◇ ◆

 『ASCII』創刊号にはもう1つ、TK-80に対する「大いなる誤解」の典型ともいうべき、印象的な記事がある。

 TK-80と家庭用テレビとをつなぐインターフェイス回路、この2つを木製のレコードケースに収め、潜水艦ゲームやスロットマシンなどのゲームを楽しんでいるという浜幸平。自作のシステムを写真入りで紹介した記事で、浜は「メーカーが何を言おうと、我がマイコンは、コンピュータであるべきなのだ。そろそろコンピュータとして、働いてもらいたいのだがメーカーの謀略に落とし入れられ、まったく拡張性がないのだ! 負けてたまるか! 必ず近いうちに、何が何でも、BASICを使えるようにしたい」と噛み付いている。

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