第3回 「人をどう動かすか」より「私はどう導きたいか」
テイクウェーブ 竹内義晴
2008/3/13
「幸せなITエンジニアが増えてほしい」「若いITエンジニアにエールを送りたい」という筆者が、自らのITエンジニア/マネージャ経験と、そこから得たものを語る。 |
テイクウェーブの竹内義晴です。前回「あなたが本当にしたいことは、何ですか?」では、ITエンジニアであるあなたが「自分は本当は何をしたいのか」を考え、その目標に近づくための方法を紹介しました。今回は「人間関係が変わるコミュニケーション術」というテーマで、人間関係を良くするいくつかの具体的な方法についてお話しします。限られたスペースですが、エッセンスだけでもお伝えできればと思います。
今回主に紹介するのは具体的な「方法」ですが、実は「方法」より重要なことがあるのです。いったい何だと思いますか? それについては、最後にお話しします。
■コミュニケーション力は上げられる
組織に属している・いないにかかわらず、仕事を進めていくうえでは、第三者とのかかわりが必ずありますよね。多くの人が「コミュニケーション力は重要だ」といいますが、子どものころからいままでを考えると、その方法を教えてもらう機会は案外少ないことに気付くかもしれません。
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以前、システム開発の上流工程の手法を学ぶセミナーに参加したときのこと。講師は最後に「今日はいろんな手法をお伝えしましたが、最終的にはシステム開発の9割が、コミュニケーション力で決まるといっていいでしょう」といったのです(もちろん、技術力も大切ですね。上流工程では……ということでしょう)。9割を占めるなら、コミュニケーション力を上げる方法を教えてくれればいいような気もしますが(笑)、その講義で聞いたのは「コミュニケーションは大切だ」というひと言だけでした。
技術力は、「学んで繰り返す」ことによって向上しますね。では、コミュニケーション力はどうでしょうか。「技術と違って、コミュニケーション力を磨くのは難しい」と思うかもしれません。
私は、コミュニケーション力も技術と同様、「方法を知り、繰り返すことで上げられる」と考えています。なぜなら私自身、かつては人付き合いが得意ではなかったからです。「チームなんて動かしたくない」とまで思っていたのに、いつの間にかそのコツをつかんで楽しいと思えるようになってしまったのですから。
■最初に知っておくこと――「価値観は人それぞれ」
コミュニケーションを考えるに当たって、最初に知っておきたいことがあります。
みつがたっぷりと入ったりんごが1つあるとします。それを分けて4人で食べることを想像してください。1人はりんごを「甘い」と思うかもしれませんし、1人は「酸っぱい」と思うかもしれません。「硬い」と思う人もいるかもしれませんし、ただ「おいしい」と思う人もいるかもしれません。
「甘い」「酸っぱい」「硬い」「おいしい」……。このりんごの評価、どれが正しいのでしょうか? 考えてみてください。
そうです、どれが正しくてどれが正しくないということはありません。それぞれの人が、それぞれの過去の経験に基づいて、それぞれの見方でりんごを評価していると考えられます。
「自分と相手は考え方も好みも違う」。当たり前のことですよね。
けれども、これが人間関係になるとどうでしょう。多くの人がこのことを忘れ、「いかに自分が正しいか」を主張します。私もマネジメントを任された当初、「〜すべきだ」「〜ねばならない」「何でできないの?」「こっちの方がいいよ」と、「自分の正しさを主張するわな」にはまっていました。
■I'm OK - you're OK――すべて正しい
交流分析という、1つの心理学理論があります。その中に、こんな言葉があります。
I'm OK - you're OK.
私もOKで、相手もOK。りんごの評価ではありませんが、甘くてもいいし酸っぱくてもいい。自分は「甘い」と思っても、相手にはそうではないかもしれない。「すべてが正しい」ということ、をひと言でいい表しているような気がします。
「あなたは甘いと思っているんですね? 私は酸っぱいと思っているんです」
自分のいいたい意見を少しだけ脇に置いて、相手がどう思っているかに意識を傾けてみてください。あなたが酸っぱいと思うのに、なぜ相手は甘いと思うのか? それはなぜか? いろんな興味がわいてきませんか。
相手の意見に同意しろというのではありません。相手に興味を持ち、相手が何をいいたいのかをよく「聴いて」みるということです。「それは違う」「これが正しい」と自分から見た正しさを主張する前に、
「あなたは○○だとお思いなんですね?」
と相手がいいたいことを受け入れてみる。それだけで、人間関係はスムーズになります。
ひょっとしたらあなたは、「自分の意見はいってはいけないのか?」と思うかもしれません。そうではありません。相手の話を十分聴いた後で、「私はこう思います」とあなたの意見をいうといいでしょう。
「会社に評価してもらえない」と相談に来たかつての後輩 |
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