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今週のリーダー

第3回 生粋のプログラマが体得、人を変えるリーダーシップ


荒井亜子 (@IT自分戦略研究所)
岩井玲文(撮影)
2009/2/16


庄司容崇 (しょうじひろたか) 面白法人カヤック 静岡支社長 PROGRAMMER 1980年9月5日、静岡県出身。沼津工業高等専門学校卒業。2001年4月、面白法人カヤックに入社。カヤック本社にて、不動産情報サイト「マンション100%」、ECサイト「BEYES」などを開発。2007年、結婚を機に静岡に帰らなければならなくなる。新幹線通勤や在宅勤務をしてもカヤックで働きたいという強い思いが役員の心を動かし、静岡支社を設立、静岡支社長に就任する。現在は受託案件のシステム開発・運用にリーダーとして従事するほか、技術者育成に力を注いでいる。時間の許す限り技術書を読みあさる自称生粋のプログラマ。

一プログラマから支社長に

 僕が本格的にリーダーシップを意識し始めたのは2007年9月、静岡支社を立ち上げ、支社メンバー(*1)を持つようになってからです。それまでは鎌倉にある本社で約6年間、プログラマとして受託開発をしていました。自分でお客さんのところに行き、要求を聞くことから始まり、要件定義→設計→実装と、最初から最後まですべてやっていました。

*1)支社メンバー:一般的には「部下」の意。カヤックでは階級制を特別設けていないため部下という名称は極力使用しない。

 本社時代、後輩に技術を教えることはありましたが、リーダーという意識は持ち合わせていませんでした。上下関係がなくフラットな社風の会社なので、後輩に対しても一緒に仕事をする同僚という意識で接していました。

 静岡支社の立ち上げに伴い、2人の支社メンバーを持ちました。1人は後輩のエンジニア。本社時代よく一緒のプロジェクトで働いていた人ですが、何と静岡までついて来てくれました。もう1人は大学を出たての新人エンジニアで、技術の修業のために静岡に来ました。彼らとともに、新しいオフィスで初めてのリーダーを経験したわけですが、特に戸惑いなどはありませんでした。

庄司氏のリーダーとしてのミッション

 僕のリーダーとしてのミッションは3つです。

 1つ目は、売り上げ目標の達成。自社サービスの開発が多い本社と違って、静岡支社は受託開発がメインです。全社目標に比例した数字目標を自分たちで決め、達成を目指します。

 2つ目は、静岡支社を運用機関として確立することです。カヤックでは、サーバなどインフラ周りの運用を静岡支社で行っています。静岡支社のプログラマは、自社サービス含め1人1サイトの運用を担当しています。しかし、運用機関としてまだきちんと確立していなので、これからしっかりした体制を整えていくことが目標です。

 3つ目は、技術者教育です。静岡支社立ち上げ時、新人が入ってきたことをきっかけに、静岡支社は教育機関としての役割も担うことになりました。(当初は1人でしたが)現在は10人くらいの新人エンジニアを抱えています。4月に入ってきた新人エンジニアは、3カ月〜半年ほど静岡支社で修業します。研修期間は人によって異なり、スキルが上がったら本社に戻るというわけではありません。本人や僕自身の希望で変わります。

カヤック静岡支社の教育プログラム

 教育プログラムも人によって変えています。個人個人に必要な課題図書を与えたり、週に2〜3回勤務時間内に講習会を開催したりしています。PHP、Javaなどのプログラミング講座は毎週、ネットワーク講座もあります。僕はオブジェクト指向講座を1回30分程度、毎週曜日不定で持っています。2〜3年目のプログラマには研修の一環として教えることもさせていますね。教えると自分も成長するので。

 あとは、コードレビュー会。業務の中でコードレビューの時間を取っています。書いたコードは必ず誰かに見てもらうことを徹底しています。コードレビューはサービスの品質にかかわるため非常に重要です。人の書いたコードを見て、アレコレいうだけでも成長するものですよ。

 読書や講習会、コードレビューと挙げましたが、一番人を成長させるのは何といっても現場(仕事)です。新人とはOJT(On the Job Training)で一緒に仕事をしています。

難しいのは、人を変えること

 技術者育成をしていて難しいと思うのは、技術を教えることよりも人を変えることです。世の中にはいろいろなコーチングのノウハウがありますけど、小手先で工夫を凝らしてみてもなかなかうまくいかないことが多いことを実感しています。人を変えるには、やはり本音でぶつからないと難しい。相手の深いところまで入り、心を開いてもらわないと、人の考えていることは分からないと思うのです。

 支社メンバーに「こうした方がいい」ということを指摘しても、いうだけでは変わらないと思うんです。指摘したことを相手にくみ取ってもらうには、まず自分がお手本にならないといけないと感じます。リーダーは尊敬されないとダメですよね。そうなれるように努力しないといけないと思っています。

 社員数が少なく、支社メンバーとの距離が近い職場だから支社メンバーにはすごく見られている気がします。(支社メンバーを)見ていないことも見られてしまう。だから、自分は常にちゃんとするよう心掛けています。技術者としての働く姿勢や、学ぶ姿勢、仕事への取り組み方、礼節や時間の使い方など、自分がきちんとしていれば支社メンバーもしっかりやってくれるはず。リーダーとして支社メンバーを変えたいなら、まずは自分が立派な人間にならないといけないと強く思うんです。それが僕にとっての支社メンバーに対する本気の向き合い方でもあります。

人を変える秘けつは「ありがとう」

 カヤックには、「自分が変わらないと相手が変わらない」という考えがあります。相手を変えるために、きちんと向き合って話をする、相手から得たもので自分が変わり、それを見て相手が変わる。それにはまず「ありがとう」なんです。誰に対しても、まず感謝なんです。感謝をすることによって、相手が自分を受け入れやすくなる。

 感謝の究極の意味は、気持ちを込めて伝えることではないでしょうか。気持ちを込めて伝えれば、たとえそれが注意であっても相手には「自分のためにいってくれている」と伝わるものです。そのことを、リーダーという立場になって本当に実感します。

技術同様、リーダーの勉強も楽しんでやっています

 リーダーとして相手と向き合う経験は、SEやプロジェクトマネジメントの仕事にすごく役立っています。相手の意見をくみ取るとか、相手の立場に立ってものを考え伝えるなどコミュニケーション力は一プログラマのときより向上した気がします。SEやマネージャをやっていくうえでリーダー的な要素は絶対必要です。

 僕は高専時代、C言語とアルゴリズムにどっぷりはまり、技術が楽しすぎて毎日ほとんど研究室にいたような人間です。技術が好きでプログラミングを仕事にしたいと静岡から上京してきたくらいですから、いったん“開発集中モード”に入ったら、3日は寝ないで開発し続けます。その位、開発に夢中になることができます。こんな生粋のプログラマですが、技術を追い求めるのと同じようにリーダーシップやマネジメントの道も楽しく追求していきたいと思っています。

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