自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |

今週のリーダー

第25回 開発に専念し続ける取締役、モバゲー川崎氏の戦略


岑康貴(@IT自分戦略研究所)
赤司聡(撮影)
2009/7/27


川崎修平(かわさきしゅうへい) ディー・エヌ・エー 取締役 1975年11月15日、千葉県出身。東京大学大学院博士課程在学中、2002年よりディー・エヌ・エーにアルバイトとして入社。モバゲータウン、モバオク、ポケットアフィリエイトなどを開発。2004年卒業、正社員に。

モバゲーがここまで大きくなるとは思わなかった

 「モバゲータウン」は当初、僕1人で開発していました。今の開発陣は、正社員で30人くらいの規模です。

 作る前は正直、ここまで大きなサービスになるとは思っていませんでした。もちろん、ある程度はいけるだろう、という感覚はありましたが。当時、「モバオク」が5000万PVくらいだったので、それを超えるくらいのものになるだろうとは感じていましたけどね。

 自分がかかわってきたサービスの立ち上げは、企画者が「こんなのはどうだろうか」と持ってきたイメージを開発側で具体的な形にして、それをみんなで触りながら作りこむというパターンが多いです。最初は少人数のチームで始めるので、企画者もシステムの話をしますし、開発者も企画の話をします。立ち上げメンバーには自分の専門以外の知識や価値観を理解して会話できる能力が必須ですね。

 とはいえ、お互いの「専門領域」を尊重して仕事しています。例えば僕の場合、ユーザー目線でのサービス作りは得意ですが、ビジネス的な着想やマネタイズのセンスについては専門家にはかないません。お互いの専門性を信頼しているからこそ、チームとして安心して一緒に考えていけるという部分が大きいです。個人的には、企画と開発が「編集者と作家」のような関係で仕事できるのが理想です。

プロジェクトマネジメントは得意な人に任せる

エンジニアライフ
コラムニスト募集中!
あなたも@ITでコラムを書いてみないか

自分のスキル・キャリアの棚卸し、勉強会のレポート、 プロとしてのアドバイス……書くことは無限にある!

コードもコラムも書けるエンジニアになりたい挑戦者からの応募、絶賛受付中

 モバゲーに限らず、サービスは最初1人で開発して、サイト規模が大きくなってきたら複数人のチームを編成します。そのため、開発の際には最初から大人数で運用することを想定しています。僕自身は、大きく育ったサービスの完成度を丁寧に高めていくよりも、新しいものを一気に作る方が得意なので、高める部分は得意な人に任せています。ある程度形になると任せてしまうので、子離れは早い方だと思います。

 僕は、具体的に「これが作りたい!」というものが自分の中でイメージできないと、開発に取り掛かれないときがあります。ダメなときは本当にダメで……、自室で「北斗の拳」とかヤンキー漫画とかをひたすら読んで、モチベーションを高めて、気分が乗ってくると一気に開発、というパターンです。

 僕にとって、開発は圧倒的に個人プレイです。複数人でやると、例えば「ほかの人の開発部分ができるまで自分の開発を待たなければならない」となって、それで1日経過してしまったりしますよね。初めの段階では全体をいろいろいじりながら作っていくので、自分で全部やってしまう方が進めやすいんです。

 何人かのチームで動くこともありますが、その時はマネジメントは得意な人に任せて、僕は一開発者として開発に専念するようにしています。これも、それぞれが「得意なことに集中する」ということですね。

取締役になっても変わらない

 いま、僕は取締役という立場ですが、最初に「取締役をやってほしい」と会社にいわれたときは、あまりピンとこなかったというのが正直な感想です。

 僕は、本当に開発という「作る喜び」のある仕事が好きでやっているので、開発をしなくなったら、この業界にはいないと思うんです。だから、自身が開発に携わらないでマネジメントの仕事だけをするつもりはありませんでした。「それでもいいなら取締役に」と思っていたところ、会社の方も「もちろん、取締役といっても開発に専念してもらう」と。僕の考えやスタンスは、会社にも分かっていただけていたようで、ありがたかったですね。

 ちょうどその時期、会社が大きくなってきたところで、ずっと開発を続けていきたいけど、現場の開発者という立場のままで発言力を持つことはだんだん難しくなってくるだろうなあ、と考えていました。「現場の仕事をする人」でありながら、同時に責任のあるポジションにつく、というキャリアパスを意識していました。「開発に専念する取締役」という僕のポジションは、そこにうまくはまったといえます。

 取締役になっても、良くも悪くも大きくは変わらないですね。社内の人は僕が「偉い人」と意識して接する、というわけではありません。社風かもしれませんが、「肩書き付いたんだねー」っていわれるくらいで。

 ただ、取締役になったことで少し世の中に勘違いされた部分があるかもしれない、と思っています。僕は別にすごいギークであるとか、ハッカー気質なわけではありません。技術的に面白いものよりも人に喜ばれるものを作る方が好きなんです。単純に面白くて、みんなが喜ぶものを作ることができればいいじゃないか、というスタンスなんですけど、「モバゲーを作って取締役になった開発者」ということで、技術的にすごいことをしているとか、ディー・エヌ・エーの開発のリーダー的存在だ、とか、そんな風に思われることがありますね。

開発者でい続けるための、ほんの少しの配慮

 取締役といっても、特にリーダーとして、ということを強く意識しているわけではありません。ただ……僕がもし途中で今のスタンスをやめてしまったら、現場主義を貫く社内のエンジニアたちの夢がなくなってしまうから、ものづくりの立場で今後も頑張り続けていきたい、と思っています。

 僕はこれまでずっと開発を続けてきましたし、今後も開発をし続けたいと思っています。世の中には、僕と同じように思っていながら、会社からはマネジメントを望まれて悩んでいるエンジニアの方がいるかと思います。もちろん、マネジメントを手がける道を選ぶのも1つだと思いますが、開発を続けるのであれば、「やろうと思ったら、やれる場所はいくらでもある」と伝えたいですね。

 僕は「面白いものが作れればいいじゃん」と気軽にいう反面、会社から求められることに対しては配慮するように心がけています。エンジニア的な価値観だけに固執しないで、ほかの立場での価値観も理解して行動するようになると、周囲からの自分の仕事に対する評価が変わってきて、大きな仕事がまわってくる機会も増えるのではないでしょうか。

 好きなことをやり続けたかったら、やっぱりそういう配慮は必要です。その、ほんの少しの配慮さえあれば、きっと開発者として仕事をし続けられると思います。

» @IT自分戦略研究所 トップページへ

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。