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リーダー

第4回 リーダーは逃げ出さない。真剣でなければ資格がない


金武明日香 (@IT自分戦略研究所)
2010/2/1

馬場功淳氏
馬場功淳(ばばなるあつ) コロプラ代表取締役。九州工業大学卒業後、大学院時代にiアプリの開発にのめりこむ。2003年、PHS 「AirH"Phone」にヒントを得て『コロニーな生活』を開発し、個人サイトとして サービスを開始。2005年『コロニーな生活☆PLUS』の提供を開始。携帯電話の位置 情報登録を利用したシミュレーションゲーム「位置ゲー」を初めて立ち上げて、 口コミで全国からファンを集める。自らゲームマスター(GM)としてサイトを運 営しながら、ITベンチャー企業などでプログラマとして勤務していたが、2008 年、ユーザー増加のため退社し、コロプラを設立。コロプラによって移 動がより楽しくなり、地域コミュニティが発達する未来をめざしている。

■会社かコロプラ、どちらかをやめなくてはならないなら

 「自宅サーバを使って何かサービスを作りたい」。それが「コロニーな生活」(「コロニーな生活☆PLUS」の前身)を作ったきっかけでした。2003年のことです。

 当時、わたしは大学院の博士後期課程に所属していましたが、学校にはあまり行かず携帯電話のWebアプリサービスを作る会社でアルバイトをしていました。実は、アルバイト中ずっと「なぜ自分はケータイコンテンツを作っているのだろう?」と疑問に思っていました。表現力に関していえば、携帯電話はパソコンやゲーム機に到底かないません。

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 携帯電話のアプリを作るなら、どうせだったら携帯電話「ならでは」の特性を生かしたものを作りたい。そう考えて、「どこにでも持っていける」「位置情報を確認できる」という携帯電話の特徴を生かせる「位置情報を使ったゲームアプリ」を作ろうと思い立ちました。わたしは育成ゲームが好きだったので「町を育ててはどうか」と考えました。でも、町は携帯電話と一緒に移動することはできません。だったら移動できるように町を浮かせてしまえばいい。「コロニーな生活」は、このような経緯で誕生しました。

 「コロニーな生活☆PLUS」(以下、コロプラ)は、2003年から2008年までずっと1人で運営していました。この頃は、昼はITベンチャー企業でITエンジニアとして働き、夜はひたすらコロプラ運営をしていました。

 当時は、なかなか人にできない働き方をしていましたね。夜中に帰宅して、サポートメールやメンテナンスをする。大体5時ぐらいに寝て、8時に起きて会社に行く。休日は少し寝て、あとはずっとコロプラを開発する。2008年まではこんな調子で、「会社」と「コロプラ運営」両立の日々を送っていたのですが、コロプラが成長するにつれて、さすがにこの生活を維持できなくなりました。もしこのまま両立を続けようとしたら、会社に迷惑をかけてしまいます。

 「コロプラ」か「会社」、どちらかをやめなければならないなら……と考えて、会社を辞めました。コロプラはもはやわたしのライフワークになっていて、やめることが考えられなかったのです。

■「やらなければ死ぬなら、やるしかない」。会社を「育てる」日々

 1人でコロプラ運営をするのは本当にきつくて、正直にいえば「やめよう」と思ったことは幾度となくありました。それでも結局やめなかったのは、「やめるのは簡単だ」と思っていたからです。

 コロプラは1秒でやめられます。サーバの電源をオフにしてしまえばいいのですから。でも、それではあまりにあっけない。「だったらもう少し続けてみよう」とねばり続けて、結局やめずにここまで来ました。

 2008年4月に会社を辞めてしばらくは、個人事業主としてコロプラを運営していました。「24時間コロプラができる!」と喜んでいたのですが、そのうち24時間でも回らなくなってきたので、2008年10月に法人化しました。

 会社というのは「箱」です。1人で始めた会社だったので、最初の3カ月は会社という「箱」をしっかり整備することに注力しました。毎日、経営学や会計学の本を読みまくりながら、コードもばりばりと書いていましたね。コードを書くのは得意ですが、経営学については何も知りませんでした。でも、やったことがないことをやるのは楽しいものです。なぜこれだけハードな生活をしていたかというと、「生存本能」が働いたからでしょう。「自分がやらないと会社もサービスも死んでしまう」と思えば、やらざるを得ないですから。

■1人でやっていた仕事を「共有化」する

 ある程度会社としてきちんと形になってきたところで、徐々に人を増やしていきました。現在は34人の社員がいます。コロプラは開発から運用・サポートまですべて自社で行っているので、技術者とサポート担当は半々くらいですね。

 わたしの仕事は、いまでは会社運用と意思決定、コンテンツの企画がメインです。ずっとコードを書きながら経営をしてきましたが、最近ようやくコードをあまり書かなくなりました。

 1人で運営していたころと会社になったいまとで違うことの1つに、「仕事の割り振り」があります。企画制作から運用・サポートまですべて1人でやっていた仕事を、他の人に割り振るための工夫をいくつか行いました。

 サポート対応時、わたしはSQLコマンドを使っていたのですが、新しいサポート担当の人はSQLコマンドなんて使えない。そのため、誰でも使えるツールを作りました。ITエンジニアには、まずコロプラのメンテナンスから始めてもらい、皆がつまづくところをドキュメント化して残すようにしました。もっとも、ドキュメントはすぐに古くなるので、「変わりやすいところ」はそこそこに、「変わりにくいところ」はしっかり、と臨機応変にドキュメント制作をしています。

■「細かく意思決定を行う」ことで、正解に近づいていく

 コロプラの開発現場は「作りながら考える」がモットーです。仕様書は一切ありません。手直しがしょっちゅうあるため、スケジュールも意味がありません。作ったものが悪ければリリースしない方がましなので、作ったものを思い切って捨てることもあります。柔軟性が求められる現場ですね。

 こうした開発現場で重要なのは、進行管理やスケジュールよりは、「意思決定」なのだと思います。しかし、意思決定をする際に「正解」かどうかの判断をするはなかなか難しい。わたしの場合は、決定が間違っていることを考慮して「細かく判断する」ようにしています。もし、自分の判断が「2回に1回の正解率」だとしましょう。途中の判断を間違えたとしても、細かい判断を積み重ねていけば、途中で気付いて方向修正ができるかもしれない。細かい判断を繰り返していくことによって、だんだんと正解に近づいていくことができるのでは、とわたしは考えています。

 例えば、開発が遅れているチームがあったとします。そうした場合には「増員する」「仕様を変更する」「作業担当者を一新する」などの判断を行います。大事なのは「最適化」、つまり「全体にとっていいか悪いか」です。もし最初の判断が間違っていたとしたら、最初の前提から見直すこともあります。

■リーダーとしての唯一の資質は「真摯であること」

 リーダーとして唯一の資質は「真摯(しんし)であるかどうか」だと思います。「問題があるときに逃げ出さない」という姿勢を持ち、かつその姿勢がきちんと人に伝わるようにすることが肝心です。真剣さがないと、人は絶対についてきません

 わたしにとって、マネジメントとは「人の面倒を見ること」です。もしつまずいている社員がいたら、一緒に悩んであげるという姿勢を見せることが必要ではないでしょうか。その人の成長を願ってあえて突き放す人もいますが、わたしは問題の大小を問わずに一緒に考える姿勢でいたいと心掛けています。

 会社全体として、立場や部門を問わずに「何でもいいたいことをいえる」風土を作るようにしています。各人の自由度も比較的高くしています。理屈が通っていれば取りあえず始めてみる。もし駄目だったら、途中で方向修正をすればいい。規模が50〜60人規模であれば、この方法はうまくいくと思います。

 もっとも、うちの会社は少し特殊かもしれません。他のIT企業より平均年齢が高く、マネジメント経験者がたくさんいるからです。マネジメントをしたことがある人は、きちんと自分の役割を演じることができます。つまり、マネジメントができる人はマネジメントされるのもうまいのです。

 トップに立つ人は、逃げ出してはいけません。判断が間違っているかもしれないし、人によっては合わないかもしれない。それでも、「真摯」であれば、人はついてくるでしょう。信頼関係の基本だと思います。この人にいえば解決してくれるという「頼りになる人」が、リーダーとしてふさわしいのではないでしょうか。

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