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リーダー

第6回 席に座る暇などない。NAVERリニューアルの舞台裏


金武明日香 (@IT自分戦略研究所)
赤司聡(撮影)
2010/4/5

板倉誠氏
板倉誠(いたくらまこと) ネイバージャパン 検索企画室 統合検索チーム 1979年生まれ。石川県金沢市出身。2004年4月よりWebマーケティング会社でユーザビリティ、SEO業務を担当。2007年4月より、ヤフー 検索事業部で企画業務を担当。2009年3月より現職。

 これまでずっと検索エンジン関係の仕事をしています。ネイバージャパンに来る前は、ヤフーで検索エンジンの企画担当をしていました。

 ヤフーにいたころから「NAVER」は気になる存在でした。「ちょっと変わった検索エンジンがあるなあ」と。ヤフーでの仕事は充実していましたが、「大企業よりも、新しいことに挑戦できる企業の方が面白い」と思って、2009年3月にネイバージャパンへ転職しました。

■「NAVER」大幅リニューアルの舞台裏

 「NAVER」は3月30日、大幅なリニューアルを行いました。トップページのデザインを変えて、「トピック検索」機能を追加しています。目的は「社会やインターネット上で話題になっているトピックを、総合的に検索できるようにする」こと。はてなブックマークやTwitterで人気のURL、最新のブログ・ニュース記事、リアルタイムのツイートなどを同時検索できるようにしています。

 今回のリニューアルプロジェクトは、2009年7月ごろから始まりました。わたしは、デザインから開発までを行う「フロントエンド」チームのリーダーを担当しました。

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 ネイバージャパンでは、職種を細かく分類しています。わたしの担当チームには、「デザイン」「HTMLコーディング」「AjaxとJavascriptのコーディング」「開発」という4つの部隊がいました。皆、専門分野に特化したプロフェッショナルです。専門家だらけのチームをまとめるのが、わたしの仕事でした。具体的な仕事内容は主に2つ、「仕様の企画」と「進ちょく管理」です。

 「仕様の企画」「進ちょく管理」といっても、ウォーターフォール方式で開発していたわけではありません。仕様は、開発と同時にどんどん変えていきました。

 細かい指示はほとんど出しません。「最低限ここだけは守ってほしい」という事柄だけを伝えるのがわたしの方針です。チームメンバーに、それぞれの専門性を存分に発揮してもらいたいからです。チームメンバーが提案してくれるアイデアや改善案を吸い上げて、詳細仕様に落とし込んでいく。この作業を繰り返して開発を続けました。

■妥協はしない。リリース3カ月前、3日前でも仕様を変える

 開発チームは皆「やれるところまではとことんやろう」というモットーを持っているため、急な仕様変更にもきちんと対応してくれました。「難しいからやれない」「その仕様は面倒くさい」といった言葉は、聞いたことがありません。皆「必ずやる」というので、無理をしすぎはしないかと心配になるくらいでした。

 「やれるところまではとことんやろう」というのは、つまり「妥協しない」ということです。競争力がないと思ったら、これまで作ってきたものだろうと何だろうと思い切って潰します。2009年末、Twitterのツイート検索を中心とした前バージョンの開発を完全にストップしました。「このままでは他社と競争できない」と判断したためです。年明けには「トピック中心の検索」へ大きく舵を切りました。

 実は、トップページもリリース3日前にデザインを変更しています。「もう少しデザインを変えるべき」というユーザーテスト時の意見を反映しました。本当は、動作確認ぐらいで終わる予定だったのですが……。結局、各チームが半日ずつかけて作業をこなし、いまのデザインに落ち着いたのです。

■対面で話すことが重要。メールを送ったら直接伝えるために走る

 リーダーの仕事は「専門家が集まったチームの能力を最大限生かす」ことだと思っています。「プロダクトを一番いいものにするには何をすべきか」と考えれば、自然とこうなります。

 専門家たちのチームを動かすためには、「情報共有」が必要不可欠です。そのため、わたしはほとんど席にいません。いろいろな部署を回り、うるさいぐらい担当者たちと話すようにしています。仕様変更のメールを送ったら、そのまま担当者の元へ走っていって内容を口頭で伝えるようにしています。

 メールや進ちょく管理システムといった情報共有の手段はありますが、それだけだとどうしても足りない部分があると思います。情報共有の基本は、やはり「直接話すこと」ではないでしょうか。

 わたしは、チーム内のハブ役でありたいと思っています。「何でも聞いてください。わたしが調整しますから」というオープンな姿勢を示しています。チームメンバーからは「この人なら何でも知っている、答えてくれる」と思ってもらいたいですね。自分が分からないことを聞かれたら、詳しい人に教えてもらいに走ります。その分野の専門家ではなくても、基礎知識を持ち、全体像を把握することは必要だと思います。

 基本的に、専門分野に精通している人は説明するのも上手です。でも、ときどき「はてな? この人は何をいっているのか?」と思うことがことがあります。そういうときは、こちらが理解できるまで説明してもらいます。分かったふりはしません。

■一貫性のないことはいわない

 のんびりした性格のせいか、周囲から「リーダーとして、ときには厳しくいうべき」と指摘されることがあります。そうした意見をもらうと、たまに強めの口調で話してみたりします。しかし、どちらかといえば「一貫性のないことはいわない」ことの方が、リーダーとしては重要ではないかと思っています。

 どんなに仕様を変えても、一番大事な軸は変更しない。リーダーとはそうあるべきではないでしょうか。

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