第5回 わたしの「価値」は品質管理へのこだわりだった
アビーム コンサルティング
シニアコンサルタント 西岡昌平
2008/7/18
■価値を出す(2年半前、中国で働き始めたころ)
2年半前に日本企業の現地法人に対して中国語でのシステム導入を始めたころの私は、会計チームの1メンバーでした。Fit&Gap検討のためのプロトタイプ環境設定、開発フェイズにおける概要設計書作成、単体テスト、統合テストなど、一連のシステム導入作業に従事していました。
その当初に中国人上司からいわれた言葉をいまでも覚えています。
「日本オフィス社員と中国現地社員とでは同ランクでも給与額が大きく異なる。同じ職場で仕事をするからには現地社員よりも価値を出すことを心掛けてほしい」
皆さんはこれに対してどう思われますか? 入社オフィスが違うので給与額が異なるのは当然だと思う方がいるかもしれません。けれども私はこの考え方に同意しています。コンサルタントという職業は、クライアントを中心とする周りの人から認められてなんぼの世界です。
それでは当時、私はどのように“違い”を出したのでしょうか? 私が価値を出そうと一番重視したことは「品質管理」です。システムの品質や成果物資料の品質を向上させるために、例えば同僚のテスト計画書をレビューしたりしました。はじめは「細かすぎる」と文句をいわれましたが、私が挙げたテストケースでエラーが見つかったりすると「西岡すごいよ!」と手のひらを返したように感謝されたり、「このプロジェクトで品質管理の重要性を勉強した」と中国人メンバーからいわれたりと、ある程度の価値は出せたと思います。
優秀な中国人であるほど、一緒に働いている日本人メンバーあるいは日本人上司が、しっかりと価値を出しているかどうかを見る目が厳しいです。うわべだけの関係にならず中国人メンバーに100%以上の力を発揮してもらうためには、まず自分自身が中国という環境でしっかりと価値を出すことが大切だと思います。
■現場責任者として(1年半前、プロジェクトリーダーになってから)
最初の中国でのプロジェクトも無事に稼働し、私の役割も1メンバーから現場責任者へと変わっていきました。プロジェクトメンバー数も3人から15人へと、規模も経験を重ねるごとに増えています。
役割が変わったいま、私がやっている仕事は主に3つ(クライアントマネジメント、メンバーマネジメント、成果物マネジメント)です。
私たちの仕事には、さまざまな人がかかわります。その中で、コンサルタントは板挟みのような状態になってしまうこともあります。日系企業の中国現地法人へのシステム導入をした際のことです。プロジェクトの主導は日本の本社、実際のシステム導入先は中国現地法人。双方の思いが一致しないことは多々ありました。本社の部長さん、現地法人の総経理、そして現地法人の中国人従業員に挟まれながらクライアント間の妥協点を見いだしていくことはいまでも難しく感じます。
メンバーマネジメントについて、「中国人をまとめていくのは大変ではないか?」と思われている方が多いかもしれませんが、そんなことはありません。大切なことは、国籍を考えないこと。中国人メンバーにも日本人メンバーにもプロジェクトゴールを明確に示し彼らの成長を考慮して、頑張っている人にはチャレンジできる機会を提供していくことが重要です。
最後に成果物マネジメント。品質担保だけでなく、視的感覚でのスケジュール管理を用いることが、多国籍プロジェクトメンバー間での認識の違いを少なくするポイントです。
■若輩者ながら……
中国で自分が何ができるのかという不安感でいっぱいだった私ですが、気付けば周りの人たちをリードしていく立場になりました。まだまだ未熟者ですが、私が経験の中で得たものをいくつか紹介しましょう。
◆ いかに「協力してあげたい!」と思わせるか
外国で仕事をする際、言葉というのは一番大きな問題です。英語でやりとりをする、通訳を介す……。コミュニケーションを取る方法はさまざまあります。
しかし、特に中国人と接する際「相手の母国語で会話をする」というのは一番有効な方法だと思います。外国人である相手が、自分の母国語である中国語で話してくれている。それだけで彼らの協力の度合いが確実に変わってきます。実際に、「あなたが中国語で一生懸命話してくれるから、協力したい気になったよ!」とメンバーからもクライアントからもいわれたことがあります。もちろん、そのためには自分の意思を確実に相手に伝えるだけの語学力が必要となってきます。そこは努力でカバー!!
◆ 仕事以外でもアピール
業務上以外のコミュニケーションが重要なことはいうまでもありませんが、親しみを持ってもらうために自分の特技(?)を披露するのも1つの方法です。私の場合は、手品! かなりのインパクトのようで、相手との距離がぐっと縮まります。知り合いのコンサルタントは、新年会などで得意のギターを披露しているようです。
◆ 適度のプレッシャーを
以前、プロジェクトの終盤になって、クライアントが当初と異なる要件をいい始めたことがありました。それ以降、要件の最終確認をする際には、必ずクライアントからサインをもらうようにしています。サインを要求することで、「いった/いわない」のトラブルを避けられるだけでなく、相手の姿勢も変わってきます。クライアントに適度のプレッシャーを与えることも、期間内に最良の成果を挙げるためには必要なことですよね。
◆ 大切なのは意志と行動
中国で仕事がしたい! クライアントを助けたい、力になりたい! もっと充実した人生を! 強い意志を持って自分ができることを精いっぱいし、周りにアピールしていけば、必ず環境を変えることができます。中国で働くことは難しいなどといわれていますが、どこにいてもやることは、周囲の方々がHappyになるような結果を出していくことです。信念を持って楽しい人生を謳歌し、社会に遺産を残したいものですよね。
次回は、私を中国に導いたマネージャが、台湾よりお伝えする予定です。
筆者プロフィール |
西岡昌平 (アビームコンサルティング シニアコンサルタント) 2002年アビームコンサルティングの前身であるデロイト・トーマツ・コンサルティングに入社。以後、ERP導入を中心としてクライアントに対するシステム導入プロジェクトに携わる。最近はJ-SOXプロジェクトに従事。高知県出身。 |
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