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第8回
起業を目指し、修業を続けるエンジニア

遠竹智寿子
2002/4/26

■再就職先の条件と試練

 再就職に当たって、大きな会社に就職しようという気持ちはなかった。村中氏は「将来起業したいといったことを認めてくれる会社が前提でした。それから、ほかの仕事を持つことを許してくれるとか。そのため、大企業などのメジャー企業ではなく、ジャンルは気にせず、マニアックなところばかり受けていましたよ。同じ流通システムをやることになったのは、本当は偶然なのです」という。

 ラクーンの社長と面接後、とんとん拍子で話が決まり、泊まる当てもないまま上京したという。そのため、アパートが決まるまでの数日は、会社に泊まり込んだという。それが現在のラクーンでの仕事始めだった。

 社長の小方功氏のアイデアである「オンライン激安問屋」のビジネス手法は、現在ではさまざまなメディアでも取り上げられるほど成功を収めている。しかし、当時のラクーンは、これから急成長しようとする直前の時期だった。

ラクーンに初めて出社したときは、「大変なところに来たな」と思ったという

 当時の社員数は20名前後。「すでに優秀な人材がいるし、ほかにも声を掛けている……」という社長の言葉を信じ続け、気が付くと村中氏自身がシステム部門の責任者になっていた。「いまだからいえますが、出社して初めて当社のWebシステムを見たときは、正直本当に驚きました。システムらしいシステムは存在していなかったし、コンテンツの作成からアップデート作業まで、何もかもが手作業状態で、あぜんとしました」と、村中氏は笑いながらそのころのことを話してくれた。その当時、毎月Webサイトをリニューアルしていたそうだ。「正直、大変なところに来ちゃったなと思いました(笑)。でも、そんなことをいう暇もなく、とにかくシステムを止めずに可能なところから手を付けていかなければなりませんでした。これまでの経験は、いまでこそ貴重な体験だったと思うようになりましたが、もう一度同じことをやれといわれても難しいですね」と、続ける。前職と比べて、1年が3カ月、3年が1年ぐらいに感じた作業内容とスピードだったという。

 手付かずなのは何もWebシステムだけではなかったという。Webシステムとは別に、販売管理システムも手掛けたという。「常に動きが見られる社内の業務形態では、システムでこれがいいという判断はまだできない状態でした」という村中氏。彼が入社したのは2000年5月だったが、その年の暮れまでに数百以上にも及ぶシステム改善を行った。一方、営業部門をはじめとする全スタッフの努力の結果、2000年初頭には750件ほどだった「オンライン激安問屋」の登録会員数も急激に増加していた。ベンチャーキャピタルや個人投資家の注目を集め始めたのも、まさにこのころだった。

 2000年の暮れ、技術戦略部スタッフを喜ばせるニュースが飛び込んだ。それは、「日経インターネットアワード2000」の受賞だった。こうして、マスコミにも多く取り上げられるようになるとますますサイトへのアクセスが増加し始め、当時利用していたホスティングサービスのサーバシステムを、早急に見直す必要が出てきた。

 その結果、自社内にサーバを置いて大々的なシステム導入を決断し、10台以上に及ぶサーバでシステムを再構築することになった。社内開発を重要視してきた同社技術戦略部では、「オンライン激安問屋」のWebサイト運営、Webベースによる社内システム、データベースの管理、企業とのデータ連動に至るすべてのシステム開発から運営・管理までを行ったという。

 前の会社のシステム会社時代には得ることのなかったさまざまな経験を重ねてきた村中氏にラクーン社と前社との違いについて尋ねた。「一般の企業だと歯車の一部をこなすだけといった感じがあるのですが、ベンチャーだと大変オープンな環境で、自分が行っている業務が全体のどの部分に反映するのかが実感できる。特にエンジニアとしてそれを感じます」と、答えが返ってきた。実際、村中氏への取材で訪れたラクーン社では、好奇心にあふれる20歳代のスタッフが、オープンスペースのワンフロアに全員がデスクを並べて仕事をしていた。そこには、技術戦略部、営業部のしきりは一切ないのだ。社内の様子を自然に把握できるからこそ、ニーズに応じたシステムの開発が自社で行えるのだろう。

配属先や担当 主な業務
技術戦略部:部長  BtoBサイト「オンライン激安問屋」「SuperDelivery」のシステム、社内業務(販売管理、物流管理、商流管理、FAQ管理)システム、メール配信システムの管理、運営。ハードウェア選定からすべてを自社で開発
村中氏のラクーンでの主な業務

■いつしか部下を持つ立場に

気付くと後輩を教育する立場になっていたという村中氏

 この2年弱の間に自分自身も多くのものを吸収し成長してきた村中氏だが、気が付くと後輩を教育する立場となっていた。「変わった人材が多い」と村中氏が評価するユニークなスタッフたちとどうコミュニケーションを取っているのかについて質問した。「特に考えたことはありませんが、経営や人間関係の書籍を手にすることはありますね。ただ、個人をコントロールするといった気持ちは持っていません。他人に迷惑を掛けないといった最低限のルールを基に仕事をこなしてもらえばいいわけです」と語る村中氏だが、それなりに苦労も経験してきたようだ。「どうやって説明したらいいか分からないことがありました。分かってくれるかどうかが分からない。そうした問題を回避するにはある程度技術的な知識と経験を持ったスタッフを集めなければならないと考えるようにはなりました」という。

 現在、取締役技術戦略部部長のポジションにあり、10名のスタッフを率いる村中氏にラクーン社で求められるエンジニアについて聞いた。「まず、指示されたことだけをこなすタイプの人では、やっていけないでしょうね。また、同時にさまざまな思考が働く人に向いているかもしれません。メールチェックしながら電話に手が伸び、営業が話している会話にも聞き耳が立てられるような。これは何も難しい話ではなく、パソコンに向かいながらテレビを見てカップラーメンを食べられる人であれば可能だと思います

 技術戦略部は社内のヘルプデスク役も兼ねているので、臨機応変に対応できること、契約社員であろうがアルバイトであろうが任された仕事に対する責任感も重要、とのことだ。ラクーンの場合は、社内システムを構築するうえで各担当者の要望を直接聞くことにもなるのだが、そのすべてを聞き入れることはできないため、その優先順位の付け方、管理能力も必要となるという。

■欲しい人材、いらない人材

村中氏と技術部の現役学生スタッフ。左がORACLE MASTER Platinum保持者の酒井氏、右がGold保持者の羽山氏。2人とも現役の大学生

 現在、ラクーンではさらなる戦略技術部員の増員を募集している。先述の要素を満たし、技術的なベースを持つ人間であればラクーンでの技術修業は、かなり大きな収穫が得られそうだ。すべての分野にいや応なくかかわらなければならないラクーンの環境にいれば、一般企業で5〜6年かけて付ける技術やスキルが1年で身に付くというのが村中氏の見解だ。ただし、現スタッフは皆、忙しくていますぐにでも助けてほしいのが現実。単なる「勉強させてください」「手取り足取り」のスタンスを望まれると厳しいと村中氏。

 スタッフには、現役の専門学校生や大学生も数名含まれているのだが、彼らの中にはすでにORACLE MASTERのGoldやPlatinum、また高度情報処理技術者試験のネットワークスペシャリストに合格した者もいる。会社として特別な支援を試みているわけではないが、個人の目指すゴールには協力を惜しまないという村中氏の気質が感じられる。

 ところが村中氏自身は、昔から資格にはいっさい興味を持たず、試験を受けたこともないという。それでは、起業を目指し上京した村中氏の次のゴールはいったい何なのだろう。「もうしばらくは、ラクーンで将来の起業に向けての経験を積み重ねたいと思っています。この2月には、新製品専用の新サイト『SuperDelivery』の運営をスタートさせたばかりですし、『オンライン激安問屋』と併せてこれらのシステム運営をさらに良くしていきたいですね。前の会社で携わったEDIシステムの経験を違った形で生かせることになったのも何かの縁ですしね」というのが、村中氏の答えだった。


Index
最前線で必要なスキルとキャリアを知る! 第8回
  起業を目指し、修業を続けるエンジニア(1/3)
  起業を目指し、修業を続けるエンジニア(2/3)
起業を目指し、修業を続けるエンジニア(3/3)

「連載 最前線で必要なスキルとキャリアを知る!」
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