テンアートニ 越川剛臣
2006/4/18
プロの技術者として、問題解決の方法を身に付けよう
プログラミングに当たっては、問題解決のための情報の収集方法を身に付けることも必要です。
プログラミングにつまずいたとき、皆さんはどのようにして解決を図りますか。書籍やインターネットで調べる、周囲の詳しい人に聞く、あきらめる(?)などなど、さまざまな対処方法がありますね。
ただ、皆さんはいくら新人であるにしろ、この業界で給料をもらう以上はプロの技術者です。プロの技術者であれば、基本的には自分で調べて解決することが必要です。
先輩や同僚に尋ねれば問題はすぐに解決できるかもしれません。しかしその人の作業を中断させることになってしまいます。ほかの人の作業を中断させることは、その分余計なコストを発生させ、チームとしての進ちょくに影響を与えることにもなりかねません。これは注意すべき点です。
では問題に直面したとき、どのようにして必要な情報を集めればよいのでしょうか。
■文系の皆さんへ:エラーが出たときは、こんな調べ方も
文系の皆さんは、初めのうちは目の前のプログラムに悪戦苦闘で「何が分からないのかが分からない」という状況が続くかもしれません。エラーが出てどうしても先に進めなくなったときは、こんな方法を試してみてください。エラーメッセージをそのままインターネットで検索するのです。
世の中にはたくさんのITエンジニアがいて、皆さんと同じようなことで悩んでいます。エラーメッセージをそのまま検索するだけで、かなりの情報が探せるはずです。中には解決方法そのものを示す情報もあるでしょう。
そうして調べていくうちに、有益な情報が載っているWebサイト(例えば@IT)も見つかり、少しずつ自分なりの調べ方ができてくるはずです。
文系の皆さんの中には、語学が得意という人も多いのではないでしょうか。業務では最新の技術を適用する場面も出てきます。その場合、情報は英語のみというケースも珍しくありません。得意分野が生かせるかもしれませんよ。
■理系の皆さんへ:調べ方を身に付けたら、推測を働かせて
理系出身の皆さんはどうでしょう。学生のころからプログラムに慣れ親しんでいるのであれば、自分なりの調べ方も身に付いていることでしょう。また周囲の人からも自然と情報を得られるのではないでしょうか。
調べ方が身に付いていれば、推測が働くようになります。こうなると初めて直面する問題でも「だいたいこういうことだろう」と推測することができるようになります。ここまでくると今後の業務での大きな武器となることでしょう。
情報の収集には注意すべきこともあります。目的の情報を見つけ、問題を解決する能力は非常に重要なものです。ただし時間は無尽蔵にあるわけではありません。われわれの仕事には常に納期があります。それを無視していつまでも調べ続けることはできません。どうしても自分で解決できそうになく、スケジュールに影響を与えそうな場合は、上司や先輩に相談することも大切です。
■先輩に質問するときは?
ちなみに、質問するときには「あのぅ……。動かないんですけど……」ではダメですよ。筆者はこのように切り出した新人が「お前はお客さんか!『動かない』といえるのはお客さんだけなんだよ。原因を調べなさい」と先輩に突っ込まれているのを見掛けたことがあります。
「○○というエラーが出たので、原因は××だと思い、△△を調べたのですがどうしても解決できません。調べ方を教えていただけないでしょうか」のように、質問の仕方にも工夫が必要です。
文系・理系を問わず重要なこと
ここまで読んで「何だ、結局理系出身者が有利か!」と思った人もいるのではないでしょうか。確かに、初めのうちはそういう状況も見受けられます。
しかし前述のとおり、業務で作成するプログラムには業務固有の知識が必要です。「プログラミングは理系有利」が通用するのは最初だけです。それ以降は、それぞれのやる気と努力次第でどうとでもなるものです。
それにも増して重要なことは、われわれの仕事はプログラミングだけではないということです。プログラマであったとしても、全体の作業におけるプログラミングの割合は半分にも満たないのではないでしょうか。
プログラミング以外でまず心掛けておくべき事項として、例えば以下のようなものがあります。
- ドキュメントの作成
- 対人(コミュニケーション)能力
これらの事柄は、一般的には文系出身者の方が得意な分野であるといわれています(あくまでも一般的な意見ですよ)。この2点についての心構えにも言及しておきます。
■ドキュメントの作成
ドキュメントの作成は、ITエンジニアの重要な仕事の1つです。作成するドキュメントの種類も、仕様書・製品マニュアル・報告書などさまざまです。
理系の皆さんの中には、プログラムに比べ、ドキュメントに苦手意識を持つ人もいるのではないでしょうか。新人のうちはどうしてもプログラムに気を取られてしまいがちです。そのためかドキュメントを軽視する人を時々見掛けるときがあります。ドキュメントはおろそかにしないよう注意しましょう。
文系の皆さんの中には、プログラムにはアレルギーがあるけれど、文書の作成は得意という人もいることと思います。種類は変わりますが、作成の基本はいままで皆さんが書いてきた文書と変わりありません。うそを書かない、簡潔な内容で書く、といった当たり前のことを心掛けていればよいでしょう。
とはいっても、技術文書特有の書き方や用語といったものも存在します。初めのうちは先輩が書いた内容を参考にするのもよいと思います。また、レビューをお願いして内容をチェックしてもらうよう心掛けましょう。
話は少しそれますが、有名な某ワープロソフトや表計算ソフトは非常に高機能なソフトウェアです。「普通に使っているよ」と思っていても、実はすべての機能のほんの一部分を使っているにすぎません。プログラミングツールだけでなく、これらも使いこなせるようになれば、作成するドキュメントもほかとは一線を画したものになるかもしれませんよ。
■コミュニケーション能力
われわれは単独で仕事を行うことはあまりありません。システム開発であれば、プロジェクトという単位でメンバーで行動しますし、当然ながらお客さまと接する機会も出てきます。
対人関係を良好に保ち、円滑なコミュニケーションを図ることも、仕事を行ううえで非常に重要なことなのです。
ひと口にコミュニケーション能力といっても、お客さまと折衝して要件を確定させる、チーム内での意思の疎通を図るなど、その能力が生かされる場面はさまざまです。
新人である皆さんの場合は、直接お客さまとやりとりをすることはまだ少ないと思います。現段階では、コミュニケーションとは団体行動に支障が出ないよう意思の疎通を図ることと理解しておけばよいでしょう。
そういった意味で、「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)を意識することが重要です。いうまでもなく、このことにおいて文系・理系の違いはありません。
「ホウレンソウ」を研修で学んだという方も多いのではないでしょうか。報告・連絡・相談は、チーム活動をするうえでの大原則です。もう一度この「ホウレンソウ」を思い出し、報告・連絡・相談の重要性を認識するよう心掛けましょう。
実務に入れば、文系・理系の差はほとんどない
以上、IT業界に入ってきた新人の皆さんが初めに抱くであろう不安を考え、社会人としてどのような心構えを持っておくべきかをまとめました。切り口として文系出身・理系出身の違いに注目してみました。
もちろん「文系出身者はここが良くて(ダメで)、理系出身者はここがダメだ(良い)」と断定することはできませんし、記事もそれを意図するものではありません。
ちなみに、文系・理系の違いによる新人のときの技術的な差も、入社して数年後には意識しない程度になるという傾向があるそうです。私見でも、実務で文系・理系の違いを意識させられる場面はほとんどないと思っています。
この記事を読んで、不安が少しでも和らげば幸いです。皆さんの今後のご活躍を願っております。
今回のインデックス |
新人エンジニアに贈る、プロとしての心構え (1ページ) |
新人エンジニアに贈る、プロとしての心構え (2ページ) |
筆者プロフィール |
テンアートニ プロダクト&SIビジネスユニット テクニカルソリューション コンサルティンググループ 越川剛臣●1972年東京都生まれ。1996年青山学院大学 法学部卒業後、ソフトウェア会社勤務を経て、2003年5月テンアートニ入社。トレーニング講師・技術コンサルティング案件などを担当。現在は教育事業(コース開発および講師・教育コンサルティング業務)に従事。『DBマガジン』(翔泳社刊)、『日経ソフトウエア』(日経BP社刊)への記事寄稿がある。 |
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