自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |


いま、必要とされる人材とは?
必要とされるエンジニアの条件

内田靖
2001/7/13

I 崩壊する日本型人事システム

 2000年の総務庁の統計によると、最近の転職市場では就業者6446万人、転職希望者643万人、求職活動者257万人で前年度(1999年度)と比べて転職希望者が20万人、求職活動者が11万人増加した。就業者に占める転職希望者の割合は約10%で、今後転職希望者は年間3.5%の割合で増加するとの予測がある。さらに転職希望者のうち転職系Webサイトを利用して転職活動をしているのは、約30万〜40万人といわれている。特にIT業界では、今後3年間で就業者の40%が転職の際に転職系Webサイトを利用するだろうと予測されている。

 現在、多くの転職雑誌や転職系Webサイトが存在する。そこで取り上げられる記事には、「あなたの値段はいくら?」や「キャリアアップ方法」「ヘッドハンティングされる人材」など、いますぐ転職をしなければいけないのでは、と感じるようなものばかりが目立つ。果たして、これらの内容を信じてすぐに転職した方がいいのだろうか?

 本記事では、現在転職で企業がどんな人材を必要としているのか、また、どうすれば必要とされる人材になれるのかに焦点を当て、そこから自分自身を見つめ直してもらい、自分なりの“自分戦略”をつかみ、各自の考えるキャリアアップを図ってほしい。しかし、企業にとって必要な人材だからといって、決して企業におもねる人材になれというわけではない。

終身雇用と年功序列

 いわゆる高度成長時代には、入社すると会社に忠誠を誓い、自分の人生を会社に捧げることが普通であった。全社員で協力して仕事をこなし、同じ給与テーブルでお互いが満足し、勤続年数が長ければ給与アップと昇進があり、そして定年まで雇用を保証してくれる終身雇用制度と年功序列制度があった。一時は日本の経済を支える日本独自の制度とまだいわれたことがあった。

 終身雇用制度は、たとえ結果が出なくても、経験が役に立たなくても、その人の雇用を保証してくれる。終身雇用制度は労働者の生涯賃金政策とも結び付いている。これは、若いころに低賃金で働いた分を、ある年齢になったときの賃金に上乗せするようなシステムであり、高年齢になったときの生活不安を取り除く意味もあった。年功序列制度は、基本的に賃金は毎年上昇することを前提にしていたため、人生設計がたてやすかった(例えば住宅ローンなど)。

 つまり、終身雇用と年功序列の最大の特徴は、将来に向けての安心と安全が会社によって保証されることにあった。ここに大きなマジックがあり、将来は安全・安心であると見せて、その代償として会社は社員に暗黙的にどのような命令にも服従するように求めていたのである。これが多くの日本企業が行ってきた人事マネジメントの実態であった。

 社員は終身雇用制度と年功序列制度を受け入れる代わりに、会社側による自分へのキャリア支配と人生に対する支配を受け入れた。終身雇用と年功序列という将来にわたる安心感と引き換えに、嫌な仕事でも受け入れ、転勤は家族を犠牲にすることもあるが、出世するためには仕方がないものだと考えた。さらに会社で生き残るためには、会社の都合を優先し、その命令に従ったほうがよかった。しかし、その代償として自分のキャリアがダメ(頭打ち)になっても、会社が面倒を見てくれることになっていた。

 しかし、終身雇用制度と年功序列制度によって、労働者の将来が本当に安全で、保証されたわけではない。会社がどんな企業競争にも勝ち、毎年必ず発展し、永続するという幻想が前提にあっただけだ。こうしたほころびが現れたのは、バブル経済の崩壊後だ。多くの企業の業績は悪化し、これまでの日本企業の前提であった終身雇用と年功序列、つまり企業が労働者に対して将来に渡る安心感を与えることができなくなった。そして次々と明るみに出た東証一部上場企業や日本を代表する金融機関の破たんなどによって、それは明確になった。

 つまり、すべてを企業にゆだね、キャリアも会社が設計してくれるような他人任せの時代は終わったと認識すべきだ。企業だけでなく労働者も、本当に実力のある会社、実力のある人材しか生き残れない時代に入ったと見るべきだろう。

 そのため、自分自身のキャリアをどうすればいいのか、どういうキャリアを作っていけばいいのか、どんなキャリアを積めば必要とされる人材になれるのか、転職を成功させるにはどうしたらいいかということが、突如大きな問題となったのだ。その問題の前提として考えなければならないことが、「何のために仕事をするのか」(=動機)という基本的なことである。

 現在の多くのキャリアアップや転職に欠けているのは、仕事への情熱ではないだろうか。例えば、自動車、飛行機を開発した人々は、これらを利用すれば物資の輸送ができ、さまざまな形で社会貢献ができると思って取り組み、社会を豊かにしたい情熱(=動機)があったはずだ。その情熱が何よりも大切で、その次がスキルやキャリアなのではないだろうか。それだからこそ、“キャリアップするための転職”の流行に乗らないように注意することだ。無価値な転職はしないこと。いま勤めている会社でもキャリアアップは十分にでき、必要とされる人材になれるからだ(確かにひどい会社も存在するだろうが、ここでは例外と考える)。優れた人材であれば、勤めている会社が倒産しようが、転職先を簡単に見つけることができるだろう。そこで、企業から必要とされる人材に共通な部分を紹介しよう。

 
1/2
II 自分でつくり上げるキャリアプラン

Index
これから必要とされる人材とは
I  崩壊する日本型人事システム
  II 自分でつくり上げるキャリアプラン
自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。