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ストレスと上手に付き合うために
ITエンジニアにも重要な心の健康

第9回 家族や同僚、部下が「心の不調」になったら

ピースマインド
カウンセラー 谷地森久美子
2004/7/22

エンジニアにとっても人ごとではないのが心の健康だ。ピースマインドのカウンセラーが、毎回関連した話題を分かりやすくお届けする。危険信号を見逃さず、常に心の健康を維持していこう。

「様子を見る」という気持ちが大事を招くことも

 通常、誰かが、心の不調を感じて悩んでいるとき、その兆候や変化に気付くのは、多くの場合、その人と生活を共にしている家族か、職場の人たちでしょう。仮に家族が気付いた際は、本人との距離が近すぎるために“悪影響を及ぼす”ことがあります。現代は、まだまだ心の病気に関する理解が十分ではないため、それに伴う誤解や偏見が生じることが少なくありません。

 「うちの家系から心の病を患うものが出るはずがない」「世間体が悪い」などの理由から、専門機関でも手に負えないほど症状が悪化するまで放置されてしまう事態もまれではないようです。

 心の不調や病気と呼ばれるものは、一般的に初期に適切なケアを行えば、比較的スムーズに社会生活が営める程度の健康状態を取り戻すことができます。しかし“様子を見る”という気持ちから、何もせずにそのまま時間だけが経過していくと、結果的に不調を長引かせることになり、回復に時間を要することになります。これは非常に残念なことです。

 心の病気は、決して特別なものではありません。ストレス性の胃炎や不眠傾向は、多くの方が体験していることではないでしょうか。また、「うつ病は一生のうちに5人に1人はかかる可能性がある」という統計もあります。

 まずは、わたしたち1人1人が、先に述べた残念な事態に陥らないように、病気に対しての理解を深め、認識を新たにしていくことが「鍵」となるでしょう。

まずは「本人とのコミュニケーション」

 以下に身近な人が不調になった際の声の掛け方、かかわり方を説明します。

(1)小さな変化に関しては、まず本人と話す(本人の状況理解)

 「最近、何となく元気がなさそうだけど疲れている? 何か、あったの?」「よかったら、話を聞かせて……」など、まずは率直に本人に声を掛けてみましょう。

 そのタイミングは、本人もあなた自身も“精神的・物理的に余裕がある”とき、または“気持ちに余裕を持って”話し合いの機会を設定できるときがいいでしょう。なぜなら、忙しいときに大事なことを話し合うのは、逆効果となることが多いからです(しかし先延ばしをするとタイミングをのがすこともありますのでご注意を……)。

(2)本人の大まかな状況をつかみ、専門家のアドバイスを参考に

 「病気なのか、そのうち治るのか、判断がつかない」――という話はよく耳にすることです。そういうときは、あなたが“気にかけている姿勢”を伝えることが大事です。そして、あなたの地域にある精神保健福祉センターに電話してみましょう。

 そこは、精神衛生相談の専門機関の1つであり、さまざまな事例に対応できる医師やケースワーカー、カウンセラーなどの専門家がそろっています。

 「自分の気にしすぎかもしれない」「相談に取り合ってくれなかったら、どうしよう……」と、もやもやして前に進めない状態から、ほんの少し勇気を出して、まずは電話してみるといいでしょう。

気軽な気持ちで一緒に病院に行く

(3)専門機関の治療が必要な場合の誘い方

 (2)によって、病院に連れていく方がよさそうだと感じた場合の対処の仕方を説明します。再度、本人に「元気がなさそうだから、もしできたら、心当たりを聴かせて……」と、あくまで“こちらがとても心配している”という気持ちを伝えることです。その際は、相手を病院に連れていくというよりも、一緒に行ってほしいという姿勢を示しましょう。

 また、会社の同僚や部下が不調の際には、心とともに体の調子が悪いことが多いため、“体の不調”をきっかけにして社内の健康管理スタッフ(産業医・保健士など)と連携が取れるような働き掛けをしていくとよいでしょう。その際も、上記の病院に誘う際も、事前に紹介先の方に連絡を入れて、どのように本人に声を掛ければいいのかを、一緒に考えてもらいましょう。

(4)なかなか受診に結び付かない状況での心構え

 症状に回復の兆しがなく、むしろ進行していると感じるような場合は、特に病院や上記の精神保健福祉センターにあらかじめ本人自身が受診できない旨を伝えたうえで、あなたが相談に出掛ける方法があります。

具体的な対応策

 現在の状態の理解や今後の対応について、専門家に会い、相談するということは、新たなヒントや知恵を得るだけでなく、対応に気苦労の多いあなた自身にとっても、よいエネルギー補給になることでしょう。

 状況がなかなか進展しない際に、よく「見守る」という言葉が使われますが、「なすすべもなく、取りあえず何もしない(そうするしかない)こと」と、「直接行動しているように見えないけれど、本人の中で気持ちの変化が起こった“瞬間”に速やかに行動が取れるよう、いまから準備をしておくこと」とでは、後々の状況が大きく異なってくるものです。

 事前準備としては、「本人の日々の状態を把握しておく」「病気について勉強する」「あなた自身が家族(もしくは身近な人)が病気になったこと、あるいはその意味についてカウンセリングを受けてみる」「病気の家族を持った人のための家族会(病気によって、いろいろとあります)に参加してみる」などの方法があります。

筆者プロフィール●ピースマインド 谷地森久美子(やちもりくみこ)
東京学芸大学大学院修了後、区立教育センター(教育相談部)勤務。その後、国立精神神経センター精神保健研究所、某私立大学学生相談室、大手企業の専属カウンセラーを経て、現在はピースマインドにて、主に“働く人”の「こころ」の問題に日々取り組む。「カウンセリングとは、時に癒(いや)しとなり得るが、根底に流れるものは格闘技に通じる」と考えているそうだ。地域の猫たちに遊んでもらうことが毎日の楽しみだという。なお、ピースマインドが提供する「ストレスCheck」を@IT自分戦略研究所で試してみることもできる。

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