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ストレスと上手に付き合うために
ITエンジニアにも重要な心の健康

第12回 災害と心の健康との関係

ピースマインド
カウンセラー 谷地森久美子
2004/11/18

エンジニアにとっても人ごとではないのが心の健康だ。ピースマインドのカウンセラーが、毎回関連した話題を分かりやすくお届けする。危険信号を見逃さず、常に心の健康を維持していこう。

 少し早いが2004年を振り返ると、新潟中越地震をはじめ、災害続きの年だった。災害は一瞬のうちに多くのものを巻き込み、その影響は普段の生活からは想像もできないものである。新聞・テレビを注意深く見てみると、毎日のように日本国内、さらに世界のどこかで災害は起きている。にもかかわらず、私たちはあたかも自分の身には降りかからないに違いない、そうであってほしいという思いで生活している。しかし、災害は誰にでも起こり得る可能性を持つものである。

災害から思い浮かべるもの

 「災害」という言葉から、@ITの読者の皆さんは何を思い浮かべるだろうか。

 まず、ぱっと出てくるのは、新潟県の中越地震や、今年何度も日本に上陸した台風による災害かもしれない。時間をさかのぼれば阪神・淡路大震災、オウムサリン事件、カレー毒物混入事件などなど……。災害は『広辞苑』では、「異常な自然現象や人為的原因によって、社会生活や人命の受ける被害」と定義されており、大まかに2つの災害に分けることができる。具体的には自然災害として地震、台風、火山噴火、洪水など、人的災害として交通事故、性的被害、誘拐、殺人、テロ、戦争などが該当する。

 今回は、災害のうち、自然災害に的を絞って「心の健康」への影響と対策を考えたい。

 自然災害により、心の状態はどのようになるか。

(1)心的外傷体験

 心的外傷によるストレスは自然災害に限らず、強制収容所、戦争・紛争、人質、性的被害など個人の心的耐性にかかわらず共通に見られるものである。死やそれに近い危機的極限状況に遭遇し恐怖心、無力感に陥る。このような状況に遭遇した人ならば誰でもが示す自然な心の反応である。

(2)喪失体験

 何十年もの年月を過ごしてきた住まい、それを取り囲む生活環境、そして大事な家族、あるいはペット、家族からの形見、思い出など、本人にとって愛着のある存在や物を失うことを精神医学では「喪失体験」という。災害は私たちの生活を根底から揺さぶり、上記のような、私たちにとってかけがえのないものを奪ってしまうのである。

(3)災害後の日常生活の大きな変化・混乱

 被害に遭遇したそのときときから、個人の中と外とで相互に関係しながら、めまぐるしい変化が生じ、その後の避難所生活や新しい生活環境が2次的ストレスとなることが予想される。水道、電気、交通機関などのライフラインの機能停止は生活に支障をきたし、そこから健康問題に発展することも多い。事実、今回の新潟県中越地震においても、震災後の避難所や車中生活で命を落とす方が時間の経過とともに増えている状況である。

専門家への相談

 多くの場合、被災者にとって災害は人生の中で大きく影を落とす衝撃的な体験となる。その分、自分の中の不調を不調としてとらえることができなかったり、たとえ気が付いてもそれを自分だけの異常であると考え、周囲に知られまいとする心理が働くものである。

 さらには当事者だけではなく、それを支える者が心的外傷の知識が十分でないと被災者の心の傷や負担を軽減できないままとなる。放置が続くと、問題の長期化・重篤化へと進む恐れがある。援助を求めることに対して、本人は抵抗を感じることもあるだろう。しかし、援助が必要であることと、性格の弱さは関係しないことをここで強調したい。

 以下では大澤智子氏の研究(1999年)を参考に筆者が読者用にアレンジしたチェックリストを紹介する(ここで参考にさせていただいた文献は本文の最後に掲載した)。

●災害前後やこれまでの状況として、当てはまる項目はありますか。
(1) 災害が起こる1年以内に、家族の一員が亡くなったり家族内に大きな変化があったり、本人が大病やけがで入院したことがある。
(2) 災害後、避難所の生活が2週間以上続いている。
(3) 家族が、亡くなったり大けがをしたりなど、健康が脅かされている。

●災害後3週間以上にわたり、災害前には見られなかった以下の事項が自覚症状としてありますか。
(4) 悪夢にうなされる。
(5) 注意力低下・散漫。
(6) ささいなことにいらいらし、すぐに怒る。
(7) どもり、チックなど。
(8) 何かに執拗(しつよう)にこだわる。過度な不安・恐怖。
(9) 頑固・強情。
(10) 強迫的行動や儀式。
(11) 不眠傾向(寝付きが悪い、途中で目が覚める。早朝に目が覚めて、その後寝付けないなど)。
(12) 継続的な身体症状(頭痛、腹痛・胃痛などの胃腸障害、めまい、微熱・発熱など)。
(13) 気分が落ち込むことが多い、常に落ち込んでいる。情緒不安定。
(14) フラッシュバックがある(災害時の状況をふと思い出して、感情のコントロールが効かなくなる)

  上記項目の中で7つ以上当てはまる場合は、専門家に相談に行くことを勧める。また、7つない場合でも、「特定の状態・症状が強い」「頻繁に死について考える」「今後への不安が大きい」などの場合は、専門家の援助を得る必要がある。

参考文献
(1)『こころの科学vol65――大震災とこころのケア』(日本評論社)
(2)大澤智子氏の論文は『子どものトラウマと心のケア』(藤森和美編、誠信書房)に収められている

筆者プロフィール●ピースマインド 谷地森久美子(やちもりくみこ)
東京学芸大学大学院修了後、区立教育センター(教育相談部)勤務。その後、国立精神神経センター精神保健研究所、某私立大学学生相談室、大手企業の専属カウンセラーを経て、現在はピースマインドにて、主に“働く人”の「こころ」の問題に日々取り組む。「カウンセリングとは、時に癒(いや)しとなり得るが、根底に流れるものは格闘技に通じる」と考えているそうだ。地域の猫たちに遊んでもらうことが毎日の楽しみだという。なお、ピースマインドが提供する「ストレスCheck」を@IT自分戦略研究所で試してみることもできる。

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