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第1回 パン屋さんの貸借対照表を作ってみよう

日本公認会計士協会準会員
小澤文子
2008/4/15

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2.決算書とは何か

(1)決算書の体系

 ここからは、企業の会計の2領域のうち、財務会計に絞って話を進めるわね。

 財務会計の方が、簿記と関係が深いからですか?

 するどい! その関係はそのうち明かすとして、まずは財務会計で報告される様式にはどのようなものがあるか見てみましょうか。いくつかの様式をまとめて財務諸表と呼ぶのだけれど、一般的には決算書と呼ばれることが多いので、ここでも決算書という言葉を使っていきましょう。

【キーワード】決算書

様式名 何が分かるか?
貸借対照表 一時点の企業の財産と、それに対する裏付け
損益計算書 一定期間に企業がどれだけ儲けたか
キャッシュ・フロー計算書 一定期間にどれだけお金の出入りがあったか
株主資本等変動計算書 一定期間に貸借対照表の純資産の部がどのように変化したか

 4種類の決算書のうち特に押さえておきたいのが、貸借対照表損益計算書よ。

 タイシャクタイショーヒョー?! ソンエキケイサンショ?!

 そんなにたどたどしくいわなくても大丈夫(笑)。貸借対照表は英語ではBalance Sheetなので頭文字を取って「B/S(ビーエス)」、損益計算書はProfit and Loss Statementなので同様に「P/L(ピーエル)」と呼ぶのが一般的なのよ。

 ビーエス、ピーエル。これならいいやすい!

 決算書はいわば、企業の健康診断書のようなものね。これを読めば、企業の健康状態や体力を知ることができるし、企業に巣食う病気を見抜くことだってできるようになるわ。

 すごい! それなら僕は医者になったつもりで決算書を読むことにしよう。さっそく見方を教えてください! ……って、どこに行けば決算書を見られるんだろう?

 1番お手軽な方法としては、まずは企業のWebページにアクセスしてみて。多くの場合、「IR(Investor Relations)情報」といって企業が自主的に投資家に向けて広報活動しているところが見つかるはずよ。

 アイティメディアのWebページを見てみよう……あ、ありました! 有価証券報告書

 有価証券報告書のどれかを開くと、経理の状況というところに載っているの。この会社は上場(誰でもこの会社の株を買うことができる)しているから、金融庁が提供しているEDINET(エディネット)という電子開示専用サイトで見ることもできるわ。

 そんなサービスがあるんですね。便利だなあ。

(2)貸借対照表(B/S)の仕組み

 ここからは、決算書のうち貸借対照表の仕組みについて説明しましょう。まずは、具体的にイメージしやすいように、架空の会社を設立するところから始めてみましょうか。なんの会社にする?

 じゃ、僕の実家のパン屋を会社にしてしまおう! 設立は2007年4月1日、名前は「株式会社青りんごの樹」でお願いします。

 了解、ではパンを製造・販売する会社に決定! で、会社を始めるには何が必要? 金額は適当な感じでよしとしましょう。

 パンを作るための材料を20万円分買ってこなくちゃ!

 確かに、まず材料を調達しないとね。でもちょっと待って! そのためのお金はどうするの? 会社の活動としては、最初にお金を集めることから始めないと。

 あ、そうか。なら、僕が株主になって、貯金10万円を会社に出そう!

 うーん、キミの貯金だけでは材料が買えない……。もう少し、資金を調達しておきたいわね。ここは銀行からも90万円借りておきましょう。

 これで、材料を20万円分買っても、手元に80万円残りますね。

 あと、パンを作るための機械50万円も必要だし、従業員も雇わないと。

 従業員は、僕の学生時代の友人にしよう!

 ようやく体制が整ったわね。ここで、現時点での貸借対照表を作ってみましょうか。

貸借対照表(勘定式イメージ)

2007年4月1日現在
     
単位:万円
 ――――――――――――――――――――
現金
30
借入金
90
材料
20
資本金
10
機械
50
 
  

 少し難しくなってきたぞ……。さっきIR情報やEDINETで見たのと形が違うし……。左と右に分けて書くのはどうしてですか?

 貸借対照表の表示方法には勘定式報告式の2種類あって、IR情報やEDINETで見たのは報告式の方。ここでは、左の列と右の列の金額合計が必ず同じになっていて分かりやすいので、勘定式を使って説明するわね。

 ホントだ! 左も右も、合計は100で一致していますね。

 そうそう、このポイントはいつも頭の片隅に置いておいてね。ちなみに報告式の場合は、この勘定式の左上から左下、右上から右下の順番で、上から下に1列に並んでいるだけだから、表示形式が変わるだけで実質的な内容は同じなの。 

貸借対照表(報告式イメージ)

2007年4月1日現在
 

単位:万円

―――――――――

現金
30
材料
20
機械
50
 
 
借入金
90
資本金
10

 で、勘定式の貸借対照表の左と右の意味は……?

 前に、貸借対照表は、一時点の企業の財産とそれに対する裏付けが分かるものだと説明したわよね。

 あ、左は現時点で企業にあるもの、右は左のものを得るために調達したお金になっています! 右には、僕が貯金を10万円出したものが資本金、銀行から借り入れた90万円が借入金。左には、僕が買ってきた材料20万円と機械50万円、現金は最初100万円集めたうち、材料と機械を買った残りの30万円だ! ……あれ、でも雇った従業員のことはどこにも載っていないぞ……?

 最初に企業の会計の話をしたときのことを思い出してみて。企業の活動のうち、お金で表すことのできるものだけが決算書に載ってくるの。従業員を雇っても、従業員自体を換金することはできないから貸借対照表には載らない、と考えてみたら?

 貸借対照表の仕組みは分かってきました! 早く損益計算書も作りましょうよ!

 それはまだ無理。だって損益計算書は、一定期間に企業がどれだけ儲けたかを表すものでしょ?

 そうか、いまはまだ2007年4月1日、僕の会社はまだ営業を開始していなかった!

 損益計算書(P/L)の仕組みはこうなっている

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