第4回 「わたしも君もOK」! 行動しない部下に指示を出すコツ
ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2010/9/2
■「会議に反論はつきもの」と思えば心も軽くなる
「わたしは自分の意見を伝えていく。あなたもそうしてください」という考えで会議に臨むと、「反論や否定意見はつきもの」と考えることができます。むしろ、「話は反論や否定意見からスタートする」と腹をくくってみましょう。この覚悟が、聞き手には話し手の自信として映り、聞き手はその自信に納得します。
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カウンセリングの場では、カウンセラーは「どんな否定的な感情もあっていい」ということを言葉や態度でもって全身で伝えます。そうすることで、相談者は自分の感情と向き合えるようになります。
■×「あなたはこうすべき」 ○「わたしはこうしてほしい」
では、具体的にどのようにして指示を伝えればよいでしょうか。
まず、自分の気持ちや考えを伝えるときに、主語を“I”「わたし」にしてみます。なぜなら、“You”「あなた」を主語にすると、相手を非難した表現になりがちだからです。
例「わたしはあなたがこうしてくれるとうれしい」←→「なんであなたはこうしないんだ!?」
「わたし」を主語にする表現は、「自分の感情は自分が責任を持つ」という前提を持つことが肝心です。
プロジェクトでは往々にして「争いを避ける」「いいたいことをいわずに我慢する」ことが起こりがちですが、これはあまりおすすめできません。いわずにため込んだ感情は、別の発散場所を求めてさまよいます。「ため込んだ感情が思いがけない場面で爆発してしまった」という経験を持つ人はそれなりにいるでしょう。いうべきことは、適切な場で適切に表現すべきなのです。
■部下への伝え方に迷ったときに役立つ「DESC法」
とはいえ、会議や指示を出すときに実際にどう表現したらいいのか……と不安になるかと思います。次に挙げるDESC法によって、話すときのポイントを整理できます。
○DESC法
- D=Describe(描写する):状況や対応する相手の言動を客観的に描写する
- E=Express(表現する):状況に対して自分が感じていることを表現する
- S=Specify(提案する):相手、または自分の特定の言動の変化について提案する
- C=Consequences(結果・成り行き):提案した言動が実行されたとき、あるいは実行されないときの結果について述べる
○使用例
- D(描写):「仕事の締め切りにいつも遅れるじゃないか」→「A社のレポート、先週までに見せてくれる予定だったけどまだ出してないね」
- E(表現):「やる気あるの?」→「次の打ち合わせに間に合わなくなるんじゃないかと不安なんだ」
- S(提案):「先方から催促がくる前に作成しなきゃ駄目じゃないか」→「遅くなりそうなときは前日までに報告してくれないか」
- C(結果):「今度、期日に間に合わなかったらほかの人にやってもらう」→「こういうことが続くとせっかくいいレポートができても生きないよ」
○ポイント
D(描写):事実を具体的に述べる。話し手の解釈や思い込みにならないようにする E(表現):こちらの気持ちを伝える場合も、具体的な事実についての感情を伝える S(提案):これまでの事実に基づき、どのような行動をしてもらいたいかを提案する C(結果):提案した行動が実行されたときの良い結末を描く、または君にとってこういう否定的な結末があると示唆する |
もし、チーム内の情報伝達に悩んでいるなら、少しずつ「アサーション」で伝えてみてください。最初はうまくいかないかもしれませんが、続けるうちに「わたしは伝えたいことを伝える」ことは「自分を大切にすること」だと気付くでしょう。同時に、「あなたも伝えたいことを伝えてください」という態度は「自分が大切であればいい、というわけでもない」ことを示しています。
そもそも、社会で生きているわたしたちにとって、「自律した人間であること」と「他者と結び付くこと」の統合はなかなか困難です。困難であるからこそ、その目標に向かって歩むことそのものが重要なのだと思います。
■参考文献
- 伊藤守『コーチング・マネジメント――人と組織のハイパフォーマンスをつくる』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2002年。
- 畔柳修『気持ちが伝わる! 意見が通る! アサーティブ仕事術』PHP研究所、2008年。
- 中谷彰宏『なぜあの人の話に納得してしまうのか 説得力を磨く52のヒント』ダイヤモンド社、1999年。
筆者プロフィール | ||
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