第8回 これは相手が仕掛けたゲームだ! いつもイラつく会話の正体
ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2010/12/21
■なぜゲームをやめられないのか
ゲームは、仕掛けた側も仕掛けられた側も、嫌な気分を味わって終わります。なぜ、人はゲームをやめられないのでしょうか。
ゲームを仕掛けた人は、ゲームを始めたら相手の注意を引くことができるため、“分かっていてもやめられない”のです。ゲームを仕掛けた場合、本人も最終的には後味の悪い感情を味わいます。ですが、この感情は子どものころに得た、不愉快だけどおなじみの感情なのです。
子どもは、たとえネガティブなことであっても、周囲の人が自分に無関心であるよりは関心を引きたいと願います。例えば「自分は愛されるに値しない」という信念を知らず知らずのうちに得てしまっていると、その信念を無意識に確認するコミュニケーションを行います。そうすることで、自分なりの信念を反復確認できるからです。
誰かと時間を過ごすときに、何もしないでいるのはしんどいものです。もちろん、愛情ある交流ができるに越したことはないのですが、それができない場合はゲームをやって、不愉快でも感情の交流があることを無意識に望んでしまいます。
■ゲームに巻き込まれないために
ゲームを仕掛ける側は、本当は“愛情”や“承認”が欲しいのです。ですから、ゲームを仕掛けられた場合、プラスのストローク(ポジティブな声掛け)を心掛けることが重要です。ゲームで味わった嫌な感情とは対極の感情を、表現して返すのです。
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冒頭の例では、Kマネージャが、ゲームを仕掛けてきたNさんに対して、「もっと効果的な方法を模索しているんだね」「どうにかいい結果を出したいと思っているんだね」など、肯定的に受け止めていることを伝えてみたとしましょう。Nさんは、無意識に自分の立場を守ろうとしているので、逆に立場を肯定されてしまうとやりにくくなるのではないでしょうか? Kマネージャは、嫌な気分を避け、ゲームに巻き込まれずに済んだことでしょう。
「嫌な感情を持っている相手に対して、そんなに肯定的な態度を示すだなんて、悔しい!」と思う人は、まだゲームの途中かもしれませんね?
■自分もゲームを仕掛けているかもしれない
もし、「あれ? 自分もゲームをやっているかも……」と思ったら、そこで抱く感情に注目してみてください。いつもやりとりの最後に得る感情は、いま起きたことによる感情でしょうか? それとも、たまたま何かの刺激によって引き起こされた“過去の古い感情”でしょうか?
「部長と話をしていると、反発心が起こるし、何となくコントロールされている感じがしてしまう」という場合、ずっと昔にそんな気持ちになったことはなかったでしょうか?
思い当たったら、自分に「あのときこんな気持ちだったよなあ」と心の中でつぶやいてみましょう。
そして、「いまの大人の自分」から、「そのときの自分」に掛けてあげたい言葉を伝えてみてください。
「大丈夫」
「よく頑張ったよ」
「乗り越えてくれてありがとう」
など、いろいろ浮かんでくるかと思います。 あなたがゲームで欲しかったのは、これらの言葉なのです。
ゲームで、これらの言葉を遠回しに手に入れようとして苦しまなくてもいいのです。もっとほかの方法はないか探してみましょう。ゲームに気付いたときから、新しい道は開けます。
■参考文献
- 菅原裕子『聞く技術・伝える技術』オーエス出版社、2001年。
- 中央労働災害防止協会編集・発行『心理相談専門研修テキスト』、1997年。
- エリック・バーン(著)、南博(訳)『人生ゲーム入門 改訂版 人間関係の心理学』河出書房新社、1989年。
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