第1回 プログラムは「どう書くか」の前に「何を書くか」
前田卓雄
2008/9/12
ソフトウェアを創造するエンジニア。しかし、その仕事は本当に「創造的」だろうか。仕事を創造的なものに変え、価値を生むための発想法を紹介する。 |
■いまの仕事に限界を感じていないか?
@IT自分戦略研究所カンファレンス 上級ITプロフェッショナルのスキルとキャリア 開催 |
日時:2008年9月27日(土) 11:00〜18:00(受付開始 10:30〜) 場所:秋葉原UDX 6F RoomA+B 詳しくは開催概要をご覧ください。 |
ソフトウェアは「人」が創造するものだ。「自分」が創造したソフトウェアを、システム製品や業務システムとしてお客さまに提供できる。そんな期待を抱いて、この世界の技術者になった人は多い。
現実はどうか。創造性を十分に発揮できているだろうか。職場環境は3K(きつい、帰れない、給料が安いなど)といわれている。
プロジェクトが一段落したとき。友人や同僚が著名なソフトウェア企業を後にしたとき。最新のITやソフトウェア工学を駆使してプロジェクトに貢献したと思っていたのに評価が低かったとき。周囲に尊敬できる上司がおらず、ひたすらデスマーチを続けるプロジェクトに属しているとき。トップの意識の低さを感じたとき。自社の業績が悪化しリストラに直面したとき。これらの場面で、いまの仕事に限界を感じたとしてもやむを得ないことだろう。
自分自身がこうした場面に出くわしたらどうするだろうか。伸びるはずの自分を伸ばせないまま押しとどめている障壁に直面したらどうすればよいか(われわれはこの障壁を「限界」と感じる)。この限界を克服する新しい視点を探そう。
■何が限界を感じさせるのか
創造力の高いソフトウェア技術者ですら、自分1人がもがいてもどうしようもない場合がある。例えば、急病や事故、勤務先の突然の倒産など、自分の努力を超えた、不運としかいいようがない事態である。このような事態に直面したとき、ふと限界を感じることがある。
しかし、多くはこのようなときではない。むしろ、次のようなときである。
- 自分の能力や適性を生かした仕事ができていない
- 自分の実力が低く評価されている
- 報酬が期待ほどではない
- 組織に製品開発力や技術力がない
- 上司やリーダークラスから学ぶべきものが感じられない
このような場合、どうして限界を感じてしまうのか。それは、「伸びたい」という自分と対極する現実、そうさせないで押しとどめている環境がそこにあるからである。つまり、限界を感じることは、現実に立脚した成長の兆しであり、良くも悪くもどう成長するかの岐路に立っていることを意味する。良くいえば、眠っているチャンスに出くわしている。
ソフトウェアは「人」が作るもの。だとすれば、「人」を成長させてこそ、その本領を発揮する。「人」を育てることに無為な組織や学びのシステムに目を向けるべきかもしれない。
気付きのない組織で無為に過ごすのは時間の無駄である。将来に向かって生かせるエネルギーには限りがある。自分の本音に素直になって未来を形成しなければ、大切だと思っていたことを何一つ創造することなく、時間とともにエネルギーはなくなってしまう。
図1を見てほしい。限界をどこで感じるかによって対応が異なる。
図1 自分の成長の限界とどう向き合うか |
自分の中に限界を感じる(例えば、知識やスキルが客観的に足りない)のであれば、それを補い、強化するしかない(A)。自分の中に限界を感じながらも、克服する意志がないのであれば、現状を受け入れるしかないだろう(B)。
他方、限界が自分の外にある場合はどうか。例えば、属する組織のソフトウェア開発力やプロジェクト推進力が力不足であったり、公平な能力評価ができなかったりするなど、成長にとっての障壁があるケースだ。この場合、環境を自ら変えるか、あるいは現状を受け入れるかの選択を迫られることになる。多くの技術者は、現状に順応することによって自分を納得させるように動く(D)。(C)は、転職などによって環境を変える、あるいは自社の環境を自ら変革することである。(C)は、組織の抵抗があり、ほかの方法に比べてリスクが高い。強い意志やリスクへの対抗策がなければ、逡巡しがちである。
しかし、(A)と(C)では、技術者自身に限界を克服したいという意志があるため、可能性が生まれている。(B)と(D)では、限界を感じたとしても克服の意志がないため、自分の置かれている環境を受け入れ、事態の好転を願うしかないだろう。
そのまま放置してよいか |
@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。
現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。
これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。