第7回 「イヤな仕事」を「素晴らしい仕事」に切り替える
樋口研究室
飯田佳子
2010/4/16
■ ルータに付加価値を付ける
わたしも悩んだ。だが、冷静に考えてみると、あることが頭に浮かんできた。
顧客と開発部、それぞれの意見を同時に聞ける機会なんて、そうあるものではない。特に、エンジニアであればなおさらだ。
それに、ルータといっても、ただデータを素通しするだけではない。受け取ったデータから必要なデータをより分けたり、セキュリティの観点から不必要なデータを捨てたり、ある地点から別の地点に必要なデータを伝えたり、という重要な役目を担っている。
Aさんの力で、顧客と開発部をスムーズにつなげることができないだろうか。Aさんがルータなら、そのルータの機能をもっと向上させればいいのではないか。
そこでわたしはAさんにアドバイスをした。「できない」というなら、「できる」理由は作れないのか。「やれ」というなら、「やってもらえる」理由は作れないのか。うまくデータが流れる経路(ルート)がないか、考えながら仕事をしてみてはどうか、と。
Aさんはこのとき、アドバイスを聞いても、何をしたらいいのか分からなかったそうだ。だが、とにかく、そう考えながら動いてみることにした。
■ 右も左も喜ぶデータの渡し方
数日後のこと。Aさんのレポートから、少し面白いことが分かってきた。
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Aさんによると、本社(海外)の開発プランはすべてCEO(最高経営責任者)が決めているそうだ。CEOの即決で計画プランが決まるし、CEOのひとことで見直しが決まるという。
CEOのひとことで決まるなら、CEOの心を動かせば願いはかないやすい。しかし、AさんがいきなりCEOに直談判するのも無理な話だ。
だが、わたしはこの話を聞いて、顧客(通販業者)の社長も、Aさんの会社のCEOも、どちらも喜ぶような方法があれば、きっと話(データ)はうまく流れていくのではないか、と感じた。
そこでわたしはAさんに、次のような依頼をしてみた。
- 顧客はネット通販で有名になれば喜ぶはず
- Aさんの会社はサービス課金が伸びれば喜ぶはず
このロジックでうまくアプローチができないか。Aさんはしばらく考えてから、チームを組んでいる営業担当に相談してみると約束してくれた。
正直なところ、このやり方は嫌だろうな、とわたしは心配だった。顧客や開発部以外に、営業にも経路をつなぐ必要があるからだ。だが、意外にもAさんの顔は徐々に明るくなっていった。
■ 顧客社長からCEOへのメール
それからさらに数日が経過した。Aさんのレポートによると、相談を持ち掛けた営業担当は、顧客と2つの約束を取り付けてきたという。
1つはAさんの会社(サービスプロバイダ)の事例広告に、顧客に登場してもらうことだった。これは顧客にとっても、Aさんの会社にとっても、ネット通販の成功事例として広まるので、都合がいい。
もう1つは、顧客の社長からAさんの会社のCEOにメールをすること。決裁機能を追加してくれれば、自社の通販の購買者が増える。そうすれば、それに付随してサービス課金料金も増えますよ、という内容だった。
Aさんはこのことを海の向こうの開発ディレクターに伝えた。それから間もなくCEOが動いた。瞬く間に機能追加が開発プランに盛り込まれたのだ。そのスピードには、さすがにAさんもわたしも驚いた。
それから、Aさんの技術サポートの仕事は一気に忙しくなった。「なんだか、橋渡しをしている実感がわいてきた」とAさんはいう。
Aさんの目標は、日本と海外との橋渡しをすることだった。今回のように「使う人(顧客)」と「作る人(開発部)」との橋渡しする(経路を見つける)仕事、それがAさんの目指していた役割だったのかもしれない。
■ 素早くルート(経路)を切り替えよう
自分のあるべき姿と仕事の内容が違う、というケースはよくあることだ。だが、それだけでモチベーションを下げてしまうのはもったいない。自分の考え方にビューチェンジをかけて、現在の仕事を少しずつ「あるべき姿」に近づけていこう、と考えた方が楽しいし、モチベーションアップにつながる。このときに使えるのが「ルート(経路)切り替えビューチェンジ」だ。
図 ルート(経路)切り替えビューチェンジ |
1. ルートを探すビュー
いま歩いているルート(経路)に行き詰まったら、早いうちに発想を変えて、目的地にたどり着けそうなほかのルート(手段や方法)を探す。
2. ルートを固めるビュー
ルートが決まったら、確実に目的地までたどり着けるよう、プランを固めてそのルートを歩く。
3. ルートを記憶するビュー
一度通ったルートは、その状況をしっかりと記憶しておく。似たようなルートで行き詰まったときに、いち早く脱出するためのヒントになる
仕事や生活で壁にぶつかったときは、素早くルートを切り替えて、たどり着くべき「目標」への新しいルートを見つけ出そう。
筆者プロフィール |
飯田佳子●樋口研究室の認定ITコーチ。「仕事と生活のバランスが取れて初めて、人間の品質もアップする」を基本方針に、常に効果的なビューチェンジの方法を考えている。 |
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