小川則明(TAC 情報処理講座)
2005/1/14
■テクニカルエンジニア(システム管理)
午後I試験は、システム管理の基礎を問う比較的易しい問題が多かった。平成16年の問題テーマは、
問1 システム評価 |
が出題された。システム管理の基本的な知識を持つ受験者は、90分ですべての解答欄を埋めることができたと思う。なぜなら、ほとんどの問題で解答ポイントが一意に定まる設問だったので、悩むことなく解答できたはずである。全体的に見ると、システム性能の測定や評価についての問題が多かった。そのため、計算問題が例年より多めである。その一方で、障害管理やセキュリティ管理に関する問題がまったく出題されなかった。
午後II試験は、3問のテーマから1問を選択して、120分で2400字以上の小論文を論述する。平成16年は現在のシステム管理技術者に必須の知識や技術がストレートに問われており、論述範囲が広い問題になっている。
問1 情報システムにおけるサービスレベルについて |
問1はサービスレベルの維持、問2は運用業務のアウトソーシングがテーマであり、現在のシステム管理業務の特徴的な内容である。問3は障害管理であり、システム管理者にとって最も主要といえる業務がテーマになっている。
■テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)
午後I試験は問1、問2が必須問題で、問3、問4が選択問題である。合計3問を90分で解答する記述式試験である。図や表を含む事例を読み、問いごとにある3設問に答える。
ハードウェア寄りの問題とソフトウェア寄りの問題が2問ずつ出題される。両方をバランス良く得点する必要がある。平成16年の問題は、
問1 ICタグを使った回転寿司料金計算システムの設計 |
が出題された。
設問は「コントローラと端末間のメッセージやパラメータの設計」「発生した不具合の原因」「必要機能の特定」「排他制御の状況」とさまざまであった。
午後II試験は2問中1問を選び、120分で解答する事例解析試験である。図や表を含む事例を読み、問いごとの3設問に答える。平成16年の問題は
問1 データプロジェクタのハードウェア構成 |
である。問1は、無線LANのデータ伝送性能、冷却ファンの制御、MPUの処理能力に関する問題である。問題と設問を合わせて11ページと長く、時間内で内容を把握し、全設問に解答するのは難しい。問2はRTOSのシステムコール一覧や割込みの仕組みやタスク間のシーケンス図を読み取って設問に解答する。午後の問題は記述式であり、題意に沿って答えを作成する必要がある。設問を正しく理解し、問われていることに適切に記述することが求められる。
■情報セキュリティアドミニストレータ
午後I試験の「JIS X 5080の管理策」を念頭に置いた出題内容が多い傾向は、前回試験から継続した。さらに平成16年の試験では、不正競争防止法、知的財産権関連法、不正アクセス禁止法などのセキュリティ関連の法規に基づく問題が多かった。基準や法規に基づくセキュリティマネジメントの知識だけでなく、ネットワークセキュリティ技術や施設・設備関連の技術に関してかなり実務的な知識が要求される問題もある。
午後I試験は素直な問題が多く、全体的には易しい印象を受ける。空欄埋め込み問題には、前回と同様に、解答選択肢が用意されたものが出題されている(4問中3問に解答、90分)。
平成16年の問題は、
問1 情報セキュリティポリシの教育 |
が出題された。
午後II試験は、2問中1問を選び、90分で解答する事例解析試験である。図や表を含む事例を読んで問いごとの3〜4設問に答える。平成16年の問題は、
問1 個人情報の漏えい対策 |
である。
個人情報漏えい対策や事業継続計画策定など、セキュリティマネジメントに関する出題が柱となるものであった。午後II試験の出題テーマの分野は、これまでの3回の試験でほぼカバーされており、内容的には過去問題で目にしたものといえる。全体的には標準的な難易度の出題といえるが、午後II試験は総合問題でもあり、システム運用管理など基盤となる幅広い知識が要求されている。
■上級システムアドミニストレータ
午後I試験の3問は業務改善や業務改革をテーマとした問題である(4問中3問に解答、90分)。業務事例を読んで改善案を問う解答導出タイプの問題が多く、問題文から解答を探すタイプの問題は少ない。問題文がどれも3ページ以内に収まる短いものであり、その中から改善案の解答のヒントを見つけるのは非常に難しく、ヒントが埋め込まれていない設問もある。
平成16年の問題は、
問1 情報の共有・活用の促進 |
が出題された。
午後II試験の各テーマは、受験者の業務経験に左右されるが、まさに上級システムアドミニストレータの視点からの問題といえる比較的論述しやすい問題である(3問中1問に解答、120分)。平成16年の問題は、
問1 システム化要件の定義における利用部門の改善について |
である。問1は業務要件の抽出やモデル化のために用いた方法について論述する。問2は顧客情報の集約と有効活用について、情報技術と関連させて論述する。問3は商品やサービスの開発について情報技術の活用と関連させて論述する。
■初級システムアドミニストレータ
午後試験は、7問の必須問題を150分で解答する。限られた時間内で7問を解答するためには時間配分が重要である。「業務関連」の問題では要求されている知識は深くはないが、解答を得るために手間を要する難易度の高い問題が増えている。
午後試験の重要テーマは、「表計算」「データベース」「情報セキュリティ」「業務関連」である。「表計算」では関数の使い方、「データベース」では、SQLの対策が重要である。「情報セキュリティ」では、暗号化技術と認証方法について、確実な知識を習得する必要がある。「業務関連」の分野はなるべく多くの問題を解いて慣れておくことが必要である。
平成16年秋の午後問題は、次のような内容が出題された。
問1 英会話学校の受講予約:決定表による行動の整理、画面遷移図の表現が出題 |
■システム監査技術者
午後I試験は、システム監査技術者の試験問題としてはやや意外な問題構成であった。情報セキュリティ分野からの出題が2問もあり、その内容も情報セキュリティの専門知識がないと解きづらい問題であった。ほかの2問はオーソドックスなシステム監査の問題であり、パッケージの監査、アプリケーションコントロールの監査など、比較的取り組みやすい内容の問題であった(4問中3問に解答、90分)。
平成16年の問題は、
問1 ERPパッケージ導入によるシステム開発 |
が出題された。全体的には、情報セキュリティ分野の専門知識の必要性や問題文を読み解くのに時間がかかる問題が多いので、難易度はやや高めの出題であった。
午後II試験は利害関係者への開示、情報システムの統合、IT投資計画など、扱いが難しいものばかりであった。テーマをかなり絞り込んだ問題が出題されることは最近の出題傾向を踏襲している(3問中1問に解答、120分)。
平成16年の問題は、
問1 取引先などの利害関係者への開示を目的としたシステム監査 |
が出題された。これまでも出題されていた監査業務の基本を題材にした問題も含まれるが、監査報告書の利害関係者へ開示、ほかの内部監査人の利用など、ある程度の経験や専門知識がないと難しいものであった。情報システム統合の問題についてもかなり具体的な設定のもとに論述が求められている。
■基本情報技術者
午後試験では、13問の出題から7問を選択して150分で解答する。「プログラム設計」「アルゴリズム」「プログラム言語」が重要テーマである。特に「アルゴリズム」「プログラム言語」でいかに得点を取るかが合否の鍵を握るといえる。「プログラム言語」を解くためにも「アルゴリズム」の力を付けることは重要である。「データベース(SQL文)」「文字列の操作」なども出題頻度が高いテーマである。「プログラム言語」は2問を選択して解答するが、合否に影響する重要テーマである。C、Java、COBOL、CASLIIの4つの言語から、自分に合った言語を選択することが重要である。
平成16年秋期の午後問題(必須問題)は次のような内容が出題された。
問1 ファイル管理システム:ディレクトリ構造を扱うファイル管理の問題 |
筆者プロフィール |
電子機器メーカーの情報システム部門SE、情報サービス企業のSE、専門学校のITインストラクターを経て、TACの情報処理講座専任講師となる。情報処理講座講師室室長として情報技術教育、情報リテラシー教育、情報処理技術者試験の受験指導、試験対策教材の企画を担当している。 |
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