TOEICのスコアアップに必要なのは読解力だ

加山恵美
2007/10/17

「エンジニアは技術が命」ではあるが、現実には英語力も求められている。近年ではTOEICスコアを重視する企業も多い。エンジニアとTOEICの関係、有効な試験対策、リニューアルでTOEICはどう変化したか。その点を探る。

キャリアアップにTOEICは不可欠

 英語によるコミュニケーション能力の評価基準としてTOEICテスト(以下、TOEICとする)がある。テストはリスニング(聞き取り)とリーディング(読解)の2パートに分かれ、結果は10点から990点まで5点刻みのスコアで示される。1979年の開始以来、受験者数は年々増加し、2006年度の総受験者数は150万人を超えた。特に「IPテスト」と呼ばれる企業や学校で実施する団体受験において、受験者数が伸びている。

図1 TOEIC受験者数推移(出典:財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEICテスト DATA&ANALYSIS 2006」)

リアル・イングリッシュ・ブロードバンド 法人営業部 部長 菅井英樹氏

 内定式や入社式でTOEICテストを実施する企業もある。また「経営幹部候補は800点」「課長昇格条件は600点」など昇進の条件の1つにTOEICスコアを掲げている企業もある。キャリアアップとTOEICは実に密接な関係にあるといえる。

 「そうはいっても、エンジニアなら技術の方が重要だから英語力がなくてもなんとかなるのでは」と思う人もいるかもしれない。しかしエンジニアも英語を求められる職種のうちに入るのだ。インターネットを利用したオンライン英語教育「reallyenglish」を提供しているリアル・イングリッシュ・ブロードバンド 法人営業部 部長 菅井英樹氏はこう話す。

 「エンジニアも英語力が必要とされる職種の1つです。ITのシステムエンジニアとは少し違うかもしれませんが、電機の分野ではエンジニアにも英語力が求められます。電機製品はグローバルに取引されているため、海外とのやりとりが欠かせないからです。またソニーならフィリップスというように、海外の企業と提携関係にある場合も同じです」

図1 職種別受験者数(出典:財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会「TOEICテスト DATA&ANALYSIS 2006」)

 海外との競争や協調がある企業や職種では「英語力は必要」ということだ。純粋に日本国内向けのシステムを構築するだけならまだ英語に触れる機会は少ないかもしれないが、ソフトウェアの資料には英語のものも多い。またシステムエンジニアが組み込みの仕事をする機会も増えてきている。そうなれば電機製品のエンジニアにより近くなる。油断してはならない。

新人研修でいきなりネイティブと会話

 外資系の企業でなく純粋な日本企業であっても、海外に自社製品を販売している企業なら冒頭に述べたように入社前の社員にTOEICの試験を実施するところがある。中には「入社までにTOEIC XXX点を目標にしよう」などと、スコアを目標に掲げる企業もあるそうだ。企業によっては志願者の英語教材を全額負担する、または一部負担するなどの教育支援制度を持つ企業もある。

 こうした入社前の英語教育は業務知識やスキルに関係なくできるし、一般論として「若いうちから始めた方が有利」という考えがあるのかもしれない。菅井氏によると、ある日本企業ではTOEICを軸にした英語教育に熱心だという。菅井氏はこう話す。

 「ある会社では新人の集合研修で丸1日英語漬けにします。いきなり午前から新人をネイティブ(英語が母語)の外国人と会話させます。するとほとんどの人は会話が成り立たず、社員は落ち込みます。これはいわばショック療法ですね。この後、午後に日本人講師が英語の勉強方法について一通り解説します。この勉強方法の解説はとっかかりをつかむためです」

 丸1日英語漬けにしたところで、英会話力はそう簡単に上達しない。企業もそれを重々承知している。唐突にネイティブと会話させるのは英語力を向上させるためというよりは自分の英語力のなさを痛感させ、「やらなくては」という危機感を持たせるためだ。その後の英語の勉強方法についての理論は英語力をどう養うかに着眼しており、どんな勉強方法があるか、それぞれどういう特徴があるかを把握してもらうためだという。

 「いざ『英語を勉強しよう』と思っても、『どこから始めたらいいか分からない』とならないようにするためです。最初の一歩を踏み出せるようにすることです。会社が新人に1日でできることは限られていますから」と菅井氏。

 

今回のインデックス
 企業におけるキャリアアップとTOEICの関係(1ページ)
 リニューアル後のTOEIC、その対策とは? (2ページ)
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