TOEICのスコアアップに必要なのは読解力だ

加山恵美
2007/10/17

リニューアル後は「より実際的な」能力測定へ

 TOEICのリニューアルに話題を移そう。TOEICは2006年5月実施の公開テストからリニューアルした。何が変わったかというと、ひと言でいえば「More Authentic(より実際的な)」である。もちろん、これまでも「実際的」と掲げていたはずである。とはいえTOEICは開始から約25年が過ぎている。

 「リニューアルで変わったのは『理念』です。より本格的に、より実践的にということです。試験の評価基準は従来と変わらないのですが、最近の事情、特に近年のグローバルな英語コミュニケーションの事情を踏まえてリニューアルがなされたと理解していいでしょう」と菅井氏。

 具体的にはどう違うのか。リニューアルに伴い、問題内容に若干の変更が加えられた。リスニングセクションでは、写真描写問題が減り、発音にバリエーションをもたせた。試験では米国・英国・カナダ・オーストラリア(ニュージーランドを含む)の各発音が25%ずつ出題されることになった。一方、リーディングセクションでは誤文訂正問題がなくなり、文章を読んで単語を補充する穴埋め問題が登場し、読解問題では問題文が長くなった。

 このように変更した背景は、実際の英語コミュニケーションの現場を想像してみれば理解できる。英会話学校は別として実際に仕事で会話している最中で「いまの"gone"じゃなくて"went"だよね」などと細かい文法的な突っ込みをする人がいるだろうか。時制の違いで話の意味が変わるならともかく、普通はしないだろう。また実際には同じ英語といっても国により発音にはバリエーションがある。こうしたリアルな英会話の諸事情をテストに盛り込んだということだ。

読解力や情報処理能力が高スコアへの道

 さらに菅井氏は「日本人は『リスニングが苦手』というイメージが強いですが、実は強化すべきなのはリーディング力です。多くの専門家も指摘していますが、リニューアル後のTOEICでは特にリーディング力が必要になっています。このリーディングとは速読・多読という意味での読解力です」と指摘する。この読解力とは単にリーディングセクションに限られる話ではない。リスニングとリーディング、両方のセクションに関係がある。

 TOEICの受験勉強をしたことがある人なら「アクティブ・リスニング」という言葉を聞いたことがあるだろう。TOEICテスト試験対策でいうと、これは「先回り(予測)しながら聞く」ということだ。高得点を狙うには先に試験問題にある解答の選択肢に目を通し、あらかじめ設問を予想しながら聞くとより効率がいい。一言一句すべてを聞き取り、すべてを記憶できる能力があればいいが、それは難しい。しかし、読解力があれば、より効率的に試験に臨むことができるのだ。

 単に受け身で流して聞くのでは高得点は狙えない。TOEICはコミュニケーション能力を測定するものであるが、リスニングやスピーキングなど会話で意思疎通ができればいいというわけではない。その点について菅井氏はこう話す。

 「TOEICはネイティブであろうとも高得点が狙えるとは限りません。TOEICは(英語を使う環境における)人間の情報処理能力を測るものだからです」

 現実を考えてみよう。英語圏では日常のあらゆるところに英語があふれている。耳には雑談から重要なアナウンスが絶え間なく入り、目には標識から広告まで入ってくる。すべての英語を聞き取り、読み取ろうとするのは無理である。

 日本にいる日本人でも周囲のすべての日本語の会話と日本語の文字情報を把握することはないだろう。重要なものだけに注意を向けているのだ。リニューアル後のTOEICでもそうしたメリハリのある集中力が必要とされている。つまり重要な情報を効率よく察知するのが重要だ。いかに英語の世界で「切れ者」であるかを測るのがTOEICといえよう。

大事なのは継続できる勉強方法を選ぶこと

 最後に、エンジニアに向いた勉強方法はあるだろうか。菅井氏は「昔なら英語を勉強するなら本を読むか英会話学校に通うことが一般的でした。しかし近年では選択肢は増えてきました。eラーニングもその1つで、エンジニアには好評です。ほかにも最近では英語を勉強できる携帯ゲーム機のソフトもありますし、ポッドキャスティングもいいでしょう」という。

 なるほど、エンジニアならパソコンはお手のものである。eラーニングを始めるにあたり、パソコン操作が障壁になることはまずないだろう。またポッドキャスティングも同様で定期的に配信される音声データをポータブル音楽プレーヤーに移し、通勤途中に聞くというのも手軽でいい。またゲーム機に慣れ親しんでいるエンジニアなら、ゲーム機を所有していれば英語ソフトの1本くらい購入してみるのもいいだろう。

 「大事なのは継続することです」と菅井氏はいう。英語力はスポーツのようなもので、継続することで上達する。だが一時的に能力を飛躍させることができても、継続がなければ次第に衰えてしまう。だから継続できる方法を選ぶことが大事だ。

 これに自分の目標や資金も考慮することになるだろう。目標設定次第ではどのくらい努力が必要か変わってくる。資金次第では効果の高いと見込める教材を購入することもできるだろう。いろいろと試し、自分に合った勉強方法を見つけるといいだろう。

 目標設定は本人の気持ちや必要とされる業務次第だ。企業などでは入社時や昇格の条件として基準点を設けているところもあるようだ。 

 その基準として、菅井氏は「TOEICの600点とは、1人で海外出張して業務をこなせるレベルです」と説明する。1人で海外を移動し、通訳を介さず英語で会議や交渉をこなせる最低限のレベルだそうだ。だから「英語でビジネスをするなら最低限のレベル」と菅井氏はいう。

 技術中心のエンジニアでもグローバルな舞台で技術を使うなら英語は欠かせず、キャリアとTOEICスコアは密接な関係にある。英語力向上やTOEICスコアアップを狙うなら、自分に合った継続可能な勉強方法を開拓するのが大事だ。

 

今回のインデックス
 企業におけるキャリアアップとTOEICの関係(1ページ)
 リニューアル後のTOEIC、その対策とは? (2ページ)

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